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system ― ギルドストレージがいっぱいになりました。
魔法の先生が来ると聞かされて、もうすぐ一ヶ月が経つ頃転生の時に感じた何かが頭の中に響いたのだった。
本来転生時にアイテムもすべて失ってしまうのだが、ギルドやフレンドがいる場合そのストレージに自身のアイテムを置いてもらい転生することで、最初から最強装備を持つことができるのだ。
GRWはこの方法を推奨されていて、転生時の設定にアイテムをギルドストレージに自動的に入れてくれるシステムもあったくらいだった。
まさか、ギルドストレージが残っているとは。
「まて、ストレージがいっぱい?」
ということは、誰かがギルドストレージを使ってる。
他に転生者がいる!?
そういえば、私が転生する時に他のメンバーが転生メールが来たと言っていた。
その可能性があるとは。
「やった!」
「どうされました?」
側で仕えていたシェミが私の声に反応したようだ。
私は「なんでもない」と言って次の憂鬱になりそうな歴史の授業の準備をするのだった。
でも、少し心が躍っていた。
なんてったって、私がGRWで集めてきた万能道具があるのだから。
ギルドストレージを意識すると、頭の中にストレージ内のリストが流れてくる。
その中には私のアイテムがあった。
あったが。
「他が岩?」
私のロックのかかっているアイテム以外がすべて岩だったのだ。
ロック以外岩。
「ぷっ」
おっと、親父ギャグは自重せねば。
それよりこの状況だ。
本来、ギルドストレージは誰もがいざという時に使えるポーションや装備の強化素材が入っているのだが、それがすべてなくなり代わりに岩が入っていたのだ。
しかも、ストレージがいっぱいになるほど。
「自分のアイテムは回収しておいた方がいいか」
でも、【アイテムボックス】のスキルは持っていない。
いきなり、伝説級や神話級の大量に出てきたらシェミが腰を抜かしてしまう。
なにか、いい案が無いものか。
「バールトン! パパだ、ぞ!」
「お疲れ様です、パパ」
「パパは疲れてないぞ」
「でも、騎士団に仕事の合間に会いに来てくれてるのでしょ?」
パパンは見た目通り騎士で団長なのだそうだ。
本来は忙しい身でありながら私に会いに来てくれているのだ。
前世では一度も授業参観にも来てくれない父親だった。
このパパンは大好きだ。
たぶん、パパンはもっと私の事が好きなのだろうが。
丁度いい、ダメもとで頼んでみるか。
「パパ、欲しいものがあるの」
「バルトンが、欲しい物。やっと、欲しいものを言ってくれた!」
「そ、そう?」
魔法の先生や本等、そこそこ言っている気がするが。
それに、パパンが来るたびにお土産を置いていくのでお菓子とかおもちゃはお腹いっぱいなのだ。
「子供なのだからもっと欲を出しなさい」
「甘やかしてばかりだとわがままになっちゃいますよ」
「お前はわがままくらいでいい」
そうなのかな?
なら、言ってみるか。
「魔法の鞄が欲しい」
「いいよ」
やった。
言ってみるものだな。
「……」
シェミが目を大きくして言葉を失っている。
もしかして。
「魔法の鞄て、どれくらいの値段がするの?」
「うん? 大金貨で五十枚くらいかな」
大金貨は金貨の百枚の価値があり、金貨は銀貨の百枚の価値がある。
一般騎士の給料が銀貨三十枚くらいなので。
「買えないでしょ」
「大丈夫。ダンジョンで見つけたのが余ってるから」
ダンジョンで魔法の鞄が手に入る確率は最高難易度のSSS級でも一パーセント無かったはず。
もしかして、パパンって運が上がるスキル持ちではないのだろうか。
そして。
「パパは爵位騎士ですか」
「そうだぞ」
爵位騎士とは国に金を払って買った爵位なのだ。
冒険者や商売で成功した人がパーティや店に箔をつけるために買ったりするらしい。
この爵位は払ったお金によって爵位が上がっていくのだが、次の子供に爵位を継げるのは伯爵級騎士以上だったはずだ。
「お金持ち?」
「超お金持ち」
その後、すぐにパパンは魔法の鞄を持ってきてくれた。
ギルドストレージにあった私のアイテムを魔法の鞄に入れたのだが、一度出して入れなくてはいけないので大変だった。
それ以上に、私でも肩掛けできるほど小さなこの鞄に三十年かけて集めたアイテムがすべて入って、まだゆとりがある。
「いくらするんだこの鞄」
system ― ギルドストレージがいっぱいになりました。
うん?
遅くなりました。
よろしくお願いします。