3
私は努力度を上げるのを止めて、本を読んでいた。
転生を諦めたわけではない。
理由は簡単で、レベル上げができないのだ。
GRWではレベルを上げるに二つの方法があった。
一つは生物を倒すという方法でこれが一番手っ取り早い。
その中でもプレイヤーキルが効率が良かった。
レベルが高い魔物を倒すよりもずっと経験値がもらえたのだ。
でも、この世界でやったら殺人罪で捕まってしまう。
もちろん、ゲーム時代でも賊のように手当たり次第に殺すのではない。
たまにあるギルド戦というギルド間で戦争があったのだが、それで沢山のプレイヤーを殺すことができた。
おかげで数十回と転生ができるほどの経験値を稼ぐことができた。
でもこの方法は無理だ。
何故かって?
私がベイビーだからさ。
仕方ないのでもう一つの方法でレベル上げをしなくてはいけないのだ。
その方法がミッションをクリアすることだ。
ゲーム時代にはデイリー、ウィークリー、グランドの三つのミッションがあった。
その名の通り、日、週、一生をかけてクリアするミッションなのだが、これは経験値を上げる為というよりは同時に配布されるポーションやコインの方が重要だった。
前者の方と比べるとこちらの方が百倍レベル上げには向いていなかった。
だが、この方法はもっと無理だ。
ミッションが分からないからだ。
以上の事よりレベル上げができない。
よって、努力度上げも無意味なのだ。
「また本を読んでいるのですか?」
シェミが不思議そうに近づいてくる。
「本当にお勉強が好きですね」
さて、転生ものでは主人公が赤ちゃんの頃より本が好きだったり、勉強が好きだったりする場面がよくある。
私もその一人だが、予め言っておきたいことがある、
私は勉強が嫌いだ。
大嫌いだ!
ではなぜ本を読んでいるのか?
その理由はいたって簡単で暇なのだ。
ゲームも無い、マンガも無い、テレビも無い。
どないせいっちゅうねん。
おっと、関西弁が。
生まれも育ちも関西ではないがな!
自分で自分にノリツッコミしてしまうほどにイカレテしまうほど暇だったのだ。
そこで、この状態を打開する方法として誰かとのコミュニケーション所望したいところなのだが、残念ながら【言語理解】は聞いている分には理解できるのだが、話すのはそこそこ練習が必要なのだ。
しかも、赤ん坊で舌足らず。
上手く話せない。
「バルトン! パパが来たぞ!」
それでも簡単な言葉は話せるようになった。
それでは私の努力の成果をご覧あれ!
「ぱ、ぱ」
「え」
歩く爆音機みたいなパパンが急に固まってしまう。
シェミを見ると目を大きく見開いて私を見ている。
仕方ない、もう一度。
「パパ!」
「お」
お?
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
パパンの大声で思わず鼓膜が破れるかと思った。
まだ、耳がキーンとする。
「バルトンが喋った! 今私を見て、パパって!」
「はい、おめでとうございます」
褒められて悪い気はしないが、中身が四十代のおっさんなので複雑な気がする。
「うちの子は天才だ!」
それは言い過ぎだ。
パパンは嬉しさのあまり私を抱き上げくるくると回す。
意外と面白い。
もっとだもっと。
「ぱぱ、ぱぱ」
「すごいぞ!」
あ、あれ。
なんか視界が回って。
「旦那様!」
シェミの慌てた声と共に、私の意識は遠のいていくのだった。
早速沢山の人に読んでいただきありがとうございます。
次は明日の朝頃の更新を予定しています。
また、感想や評価、ブックマークもしていただけると嬉しいです。