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冒険者ギルドへの勧誘は順調、とは言えなかった。
「お話を少しよろしいでしょうか?」
「おや、私に何だい?」
だが、話を聞いてもらえないわけではなかった。
「不躾で申し訳ありませんが、お年は?」
「今年で十五だが」
「では、アカデミーを」
「そうだね。もうすぐ卒業だね」
貴族の子供は七歳になるとアカデミーと呼ばれる機関に入学する義務があるのだ。
魔法学校、貴族学校、軍学校の三つある。
最初の三年は貴族学校で初等教育を受け、その後に審査が通れば貴族学校、魔法の素質があれば魔法学校、軍への士官を希望すれば軍学校に行くことになる。
大体は貴族学校、魔法学校も落ちれば軍学校に行くのが普通である。
申し訳ないが今目の前にいるこの青年はあまり身なりにお金がかかっていない。
この時点で跡取りではないだろうから、貴族学校の生徒ではないだろう。
また、魔法学校の出であれば魔力の痕跡を体中から感じるはずだが、それも無い。
なので、この人は軍学校の出なのだろう。
「卒業後は?」
「軍隊に入隊するつもりだけど」
普通はそうだろう。
仕官するために軍学校に行ったのだから。
でも、それは義務ではないのだ。
「実は、いい仕事がありまして」
「仕事って、君みたいな子供が? あまり馬鹿にしないでくれ」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。バードネル バルトンと申します」
「バードネル? ああ、冒険者の」
「はい。実は冒険者ギルドでの経理等を担当する職員を募集しておりまして。ですが、雇うのであれば能力のある人をと思いまして」
「平民では限界があるな」
「はい」
「でも、危険なことも多いのだろ? モンスターや盗賊退治に駆り出されたら、命がいくつあっても足りない」
「いえいえ。先ほども言いましたが経理や事務仕事をメインになります。もし、なにかギルド内で不測の事態が起きても警備も雇っていますので、本当に危険なことはございません」
「……。それは本当か?」
食いついた!
少し考えればわかる事である。
二つの学校に落ちた人が軍学校に行くのが通例であるが、皆が皆心から軍に入りたくて軍学校に行くわけではない。
本来であれば戦わず、安全に生活をしたいのが普通である。
しかし、貴族の子供はお金の稼ぎ方を知らないのだ。
長男次男や突出した能力がある人であれば問題はないだろうが、そうでない場合体を張るしかお金の稼ぎ方を知らないのだ。
でも、冒険者のようにモンスターなど危険度が高い敵を相手にするよりは、軍に入って一定の給金をもらった方が安全だし、安定しているのだ。
でも、モンスターを相手に出来るのであればそちらの方が圧倒的に稼ぎがいいので、たまに貴族での冒険者もいたりはする。
しかし、この国は現在戦争をしているわけでもなく、隣接する国とも関係は良好。
安全ではあるが、給金が上がる要素が無く、最近はリストラもあると聞く。
すごく安定しているわけではないようだ。
「はい。それと初任給はこれくらいですね」
「これは、本当か? こんなに貰えるのか?」
やはり、軍の給金は大分低いようだな。
「はい。信じられないのであれば、父に話を聞くのもいいですよ。招待状を送ります」
「いや、待ってくれ。これからのことだ。誰かに相談したいし、自分で考えをまとめたい」
「分かりました。では、心が決まりましたら私に手紙を。ただ、席には限りがある事だけ了承いただきたい」
「分かった」
大体みんなこんなやり取りだった。
魅力的だが、旨い話過ぎて裏があるのではないかと疑ってしまうのだ。
しかも、これからの一生に関わる話だ。
簡単には決められないというのが彼らの本心なのだろう。
「少し気長に待つしかないか」
ガササッ
お茶会の端、様々な花を咲かせる生垣の一つが揺れる。
そして、黒ずくめの人たちが出てきたのだ。
何かの余興だろうか?
「なんだお前ら!? うわあ!」
先ほどまで話をしていた男性の腹から何かが伸びる。
それが刃だと気づいた時、人々は我先にと逃げ始めたのだった。
誤字報告ありがとうございます。
私も読み返して探したりするのですが、やはり抜けは出てしまうようです。
これからも気づいた際は報告していただけると幸いです。
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