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私の食事が終わる前に「すまない」と言葉を残して父様は仕事に戻られてしまった。
こちらも魔法の授業だ。
「ご主人様、私はこれで失礼します」
「フェリアも頑張ってね」
フェリアはまだ魔法の素質があるか分からないため、魔法の授業は受けられない。
その時間は淑女教育を受けているのだ。
内容はマナーの授業に似ているが女性と男性ではマナーも違う部分が多く、また女性の方が細かいことが多いとの事。
前世の記憶がある私はその生きていた分の時間が仇となり、所々で失敗が多いのでマナーは苦手なのだ。
苦手だからやらない、という理論は成立しないので頑張りはするが、フェリアは私の倍近くの時間をこれに費やすのを考えると彼女の努力には頭が上がらなくなる。
「やっときたか」
父様が作ってくれた訓練場に行くとエルフ先生がすでに待っていた。
すぐに練習用の剣を持ち、先生に向けて構えた。
「先生、今日もよろしくお願いします」
「いくぞ」
的に魔法を当てていただけの頃が懐かしい。
本来はある程度の威力の魔法がそこそこのコントロールで撃てるようになるまで的当てが基本練習になる。
だが、コントロールはそこそこだが、威力という面では練習は不要という事で魔力制御を中心に鍛えるメニューを組まれている。
のだが。
「わきが甘い!」
何回か走り回る先生に魔法を撃った後、その言葉と共に蹴りが入る。
先生の生足と喜びたいところだが、まともに食らえば脇腹の肋骨が何本か逝ってしまう。
間一髪剣で受け止める。
「クソッ」
だが、衝撃が殺しきれず飛ばされてしまう。
走り回るエルフ先生を狙って魔法を打つ練習になったのだが、先生も反撃してくるのだ。
その攻撃手段は魔法から格闘、弓矢などの武器と多様だ。
「ほら、止まっていたら恰好の的だぞ」
常に私自身も動き続けなければ、先生の攻撃が放たれる。
今度は弓矢か。
だが。
「【二ヴルヘイム】!」
瞬間、冷気が放たれ空気すらも凍てつく。
先生の矢も私に到達する前に凍り付き、触れるとともに粉々に砕けたのだった。
大丈夫、この数年練習し続けたんだ。
最初は最小出力で出せるように練習し、今では自分の周りに展開し小一時間は発動し続けれる程度には魔力制御できるようになった。
後はこのスキルを理解し、操るだけ。
「へえ」
「随分と余裕ですね」
私は水魔法で先生を攻撃するが、やはり当たらない。
だが、直撃しないだけだ。
「うそ!?」
先生も驚く。
避けたはずなのに先生の右手が凍傷になっていたのだ。
だが、特に驚くほどの事ではない。
水の攻撃は周りに水しぶきを放ちながら敵に向かう。
そして、【二ヴルヘイム】は敵を凍らせるだけでなく、発動者の攻撃に氷属性を付与する効果もあるのだ。
正直GRWの頃には氷属性の付与も凍らせるのも微妙な効果だと思っていたが、GRW以上に効果が高いし、水しぶきなどGRWになかった要素と組むとここまで化けるとは思っていなかった。
必要魔力が高いのと魔力操作に集中力のほとんどが持っていかれてしまうのは玉に瑕だが。
「今度はこちらから行きます!」
水魔法で攻撃を仕掛ける。
集中力がかけている水魔法は直撃はしないものの跳ねる水しぶきで先生を凍らせていき、動きが鈍くなっていく。
先生は留まって大魔法を詠唱するタイプではなく、動き回って小さま魔法を効率よく当てていく魔法師だ。
動きを止められれば、先生の戦闘力はかなり削げるはずだ。
「今日こそ」
思わず剣を握る力が強くなり、私は先生の方へ走り出す。
長かった、本当に長かった。
「婚約してもらいます!」
この練習を始めた頃、エルフ先生を倒すことができれば婚約してくれると言質をとったのだ。
今日こそ、今日こそ!!
「エルフ先生、好きです!!」
先生が私の領域に入り更に体が凍り始める。
あれ?
このまま突っ込んだら、先生死ぬんじゃないか?
思わず足を止めてしまう。
それが悪かった。
先生の鞭が地面をたたくと凍っていた地面が割れ、そのかけらが私の目に入る。
一瞬怯み、次の瞬間強い衝撃が私を襲った。
「あれ?」
目を覚ますと訓練所の地面に倒れていた。
何があったんだ?
「大丈夫か?」
「あ、はい」
先生に差し伸べられる手を取り起き上がる。
「最後の最後で手を抜いたな」
「え、あ、はい」
「なぜだ?」
「なぜって、あのままだと先生が凍り付いてしまうので」
先生は「そうか」と悔しそうに呟いた。
もしかして!
「先生に一撃を!」
「当ててない」
そうか。
今日もダメだったか。
「次こそ、婚約を」
「なあ、まだそんなこと言ってるのか?」
「え?」
呆れたように先生はため息をつく。
「あのな、お前の周りには魅力的な女の子がいるだろ。フェリアとかレイミとか」
「そうですね」
確かにみんな魅力的で、かわいい。
「なら」
「でも、エルフ先生も負けないくらい魅力的です」
「お前の母親よりずっと年上だぞ」
「でもです」
先生は何か考えた後、項垂れる。
「はあ~~~~~~~~~~~~~~」
深いため息をついた。
「リシェナウラ」
「へ?」
「他人がいるときは今まで通り、エルフか先生で呼べ」
私は急な出来事に、頭が追い付かなかった。
でも、これってそういう事だよな。
「ほら、稽古の続きを売るぞ!」
「は、はい」
リシェナウラの言葉に剣を構えなおすが、その日稽古はおろか他の習い事にも身が入らなかったのは言うまでもない。
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