2.5
「間違えてるわ」
「すみません」
また、朝食に使う食器を置く順番を間違えてしまった。
侍女になりたくて母さんに頼み込んだのは私なので文句は言えないし、先輩は厳しいけど的確な事しか言わないので反論もできない。
もう、やめようかな。
そもそもの話、貴族はこんなにたくさんの食器を一度の食事に使うなんて頭がおかしいと思う。
私なんて多くても皿二枚にスプーン一つで事足りるのに、何が楽しくてこんなに食器を使うのだろうか?
食器が減れば洗い物も減るし、保管する場所も少なくて済む。
なにより、私が仕事を間違えなくて、いい!
「考え事は後にしなさい」
小さな声で注意を受ける。
気づくと食堂の入り口にみんな視線を向けていた。
誰か入ってくるのだ。
「「「おはようございます」」」
扉が開くと同時に全員で頭を下げ、挨拶をする。
私も合わせて頭を下げるけど、まだ体が小さい私は先輩たちの背中で誰が入ってきたか分からなかった。
旦那様だろうか?
「みんな、おはよう」
この声は。
「バルトン様」
「しっ」
思わず出た言葉に先輩の叱責が飛んでくる。
忘れていた。
平民が貴族様に声をかけてはいけないのだ。
「レイミか」
私の声が聞こえてしまったようだ。
私を見てくれた嬉しさ半分、怒られるのではと怖さが半分の感情が私の中で!
「ひゃ、ひゃい!」
「もしかして、侍女として働いてるのか?」
「えっと、ま、まだ、見習でして。働くという段階では」
「そうか。まだ、最初の頃だ。色々と大変だろうが、頑張って」
「はい!」
バルトン様、すき。
使用人の子供である私にこんなにやさしくて、私よりも五つも年下なのにずっと年上に見えるほどの余裕や風格もあって、最高。
顔も綺麗だし、あの赤い髪や瞳もすごく神秘的で、同じヒューマンとは思えない。
貴族だから?
でも、こんなに気さくな貴族の子供は他にはいないと先輩たちが言っていたのを思い出す。
普通はわがままですぐ怒るし、すぐ親に泣きつくのだとか。
普通にガキじゃん。
私子供っぽいの嫌いなのよね。
それとは違い、バルトン様はどうしてこんなにバルトン様なのかしら。
皆が口をそろえて神童というだけはあると思うの。
「レイミ?」
「え? あ、はい」
バルトン様に声をかけられてまた、空想の世界にいたことに気づく。
でも、バルトン様が素敵すぎるのだから仕方ないよね。
「ボクだからよかったけど、他の貴族には気を付けてね」
「はい」
バルトン様に怒られてしまった!
恥ずかしい!
もう、穴に入りたい。
くすっ
誰かが私を笑う声が聞こえた。
視線を向けるとフェリアだった。
彼女はバルトン様が初めての誕生日に旦那様がハーレムとか頭の可笑しいプレゼントに連れてきた女だ。
フェリアも私とおんなじ平民のはずなのに、少し変わった髪の色や、かわいい顔だからってバルトン様の隣にずっといるなんて。
ズルい!!
私も母さんに似てそこそこかわいいはずなのに、この女がいなければ今頃あそこの位置に私が。
「大丈夫、疲れてないかい?」
「大丈夫です。すみません」
ああ、バルトン様に心配されるの嬉しい。
もしかして、体調悪いふりをすればもっと構ってもらえるかも。
「ねえ、彼女顔色悪いと思うの。そこのあなた、医務室に連れて行ってあげて」
「はい」
フェリアの言葉に先輩が私の手を握って食堂から出て行く。
待って、まだバルトン様と。
「本当に大丈夫なのです」
「分かってるわ」
「へ?」
じゃあ何で、先輩は私を?
「感情駄々洩れ。フェリア様に敵意を向けるのは止めなさい」
「う、うぐ」
先輩の言葉に思わずぐうの音も出なくなる。
確かに、気持ちを切り替えないと。
「あんなのに負けたくない気持ちは分かるわ」
「え?」
「いい? バルトン様はまだ幼いの。だから、女性に対する性欲が無い。でも、性欲の目覚めが訪れたらどうなると思う?」
「どう、なるのですか?」
「女性らしい女に興味を持つはずよ。でも、フェリア様はまだ幼いからその時はまだ体の成長は乏しい」
「それで?」
「察しが悪いわね」
先輩が言いたいことが分からない。
「フェリア様より私たちの方が大人になるのが早いの! その時になれば綺麗な人がお手付きになるはず。だから今は自分を磨くのよ」
「な、なるほど」
「そうすれば、玉の輿! しかも、あんなハイスペックのご主人様と!」
先輩の話はよく分からない。
でも、ライバルはフェリア以外にもいるのはよく分かった。
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