第一話 転生しましたが、なにか? 1
暗転した世界で何か聞こえる
system ― 転生プログラムに従い、ステータスの継承を開始。
system ― 成功しました。
これは?
system ― 続いてスキルの継承を開始。
system ― 成功しました。
もしかして、転生?
system ― ボーナスとして、好きなスキルを一つ付与することができます。
好きなスキルを貰える、のか?
でも、一つだけとなると悩ましいな。
既存のでなければ転生を選ぶけど。
system ― 【転生】が選ばれました。
あるの転生!?
steam ― 最終フェイズに移行します。
え? ちょっとま―
おぎゃあ。
こうして私はラノベやゲームでよくある転生を果たしたのだった。
どれほどの時間がたったか分からない。
数十回も寝て、泣いて、しょんべんを垂れ流した。
そして、生まれてやっと視界が鮮明になった頃、私は一人で悶絶していたのだった。
「バルトン様、お乳ですよ」
見た目二十代の綺麗な女性が私に母乳を飲ませてくれるのだが、赤ん坊の中身が四十オーバーのおっさんなので、これは。
犯罪じゃないですよね?
だって今、赤ちゃんだし。
歯が生えそろってないから、これ以外ご飯ないし。
呑まなきゃ死んじゃうしね!
誰に言い訳してるんだか。
それにしても、【言語理解】のスキルが継承されていてよかった。
本来はテイマー系の職業の人が、知能の高いモンスターと意思疎通しテイム確率を上げるスキルなのだ。
他にも魔族やボスモンスターとも話せるようになる裏技があるので、特殊なクエストを受けれるようになるので持っていたスキルだ。
だが、本当にこれがあってよかった。
たぶんこの世界の言葉は日本語じゃない。
スキルのおかげで周りの人の言っていることが分かるが、発音的には聞いたことが無い。
言葉を覚えるのが大変そうだ。
「たくさん飲めましたねえ。それじゃあゲップしましょう」
そう言いながらトントンと私の背中を叩く。
そんなことしなくても噯気をしなくてはいけない理由も仕方も分っているのでそんなことしなくても。
ゲプッ
「はい、上手ですね」
こんな事で褒められるのは、恥ずかしいな。
早く首が座るようになればいいのだが。
少し眠気を感じ始めた時だった。
扉が開き、一人の女性が入ってくる。
この女性も若い。
「バルトンは?」
「今授乳が終わりました」
「そう」
たぶん、私の新しいママンなのだが、あまり私に興味がないらしい。
私が生きているのを確認してすぐに出て行ってしまったのだった。
入れ替わりで男性が入ってくる。
こちらも若いが、がっしりリタ肉体の男性だ。
「バルトンは!?」
「授乳は終わりました」
「今日は起きているのか! おう、かわいい。パパだぞ」
新しいパパンはママンとは逆にかわいがり過ぎる。
どちらかというと厳つい系の顔なので、デレっとした少し気持ち悪い。
これが娘だったら気持ちも分かるが、私は息子だぞ。
名前的にも。
だよね?
「抱っこされますか?」
「だ、ダメだ! 力が強すぎて怪我をさせてしまう。本当は抱っこしたいのに!」
「大丈夫だと思いますが」
「やっと生まれた男の子だぞ! もう大事に、大事に、だ~いじにしなくては!」
私は男だぞ。
多少は雑でも大丈夫な気がするが。
「これ以上一緒にいると私を保てなくなる」
「は、はあ」
は、はあ。
「すまない!」
そう言うと、パパンは出て行ってしまったのだった。
ママンは朝のこの時間しか来ないが、パパンは朝昼夕の三回顔を出すのだ。
しかも、授乳後のタイミングで。
今の私は二、三時間一度母乳を飲んでるのでなかなかタイミングが合わないはずなのだが。
深読みは止めておこう。
ふわあ
「おねむですね」
私はベッドに横にされると、眠気に任せて目を閉じるのだった。