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第三話 楽しい誕生日会1


前世の誕生日はいつも母と二人っきりだった。

学校では友達はいたが家を呼べるほどではなかった。

それに、古風と言えば聞こえはいいが昔ながらの日本家屋の家だったので、恥ずかしくて誰も家に呼べなかったのだ。

そんな父は政治家だった。

いつも家にはいなく、家族よりも仕事を優先する人で私の誕生日に家にいたことなんてほとんどなかった。

それでも、母は手作りの料理を作ってくれて幸せだった。


「今日が一歳の誕生日か」


随分長かったように思うが、まだ一年だった。

この世界では私のようなヒューマンの寿命は平均五十年、長寿で百年ほどらしい。

長寿でも平均エルフの半分ほど生きれないヒューマンは短命な種だなと思う。


「久しぶりの誕生日だ」


前世では小学校を卒業する前に事故で母が亡くなった。

その年からゲームにのめり込むようになり、そこで出会ったのがGRWだったのだ。

母が亡くなってから誕生日をしてもらったことが無いから、かれこれ三十年ぶりの誕生日だ。


まだ、昨日の疲れが抜けていないが、起きなくては。

今日は朝から普通に稽古や授業がある。

パパンは私の誕生日だと張り切っていたので、きっと夜からあるのだろう。


「おはようございます」


「おはよう」


小さい体では着替えもまともにできず、シェミに手伝ってもらう。

着替えはできないのに走り込みはできるんだな、とふと疑問に思うが見た目以上にこの体は頑丈なのだろうと一人納得するのだった。

そして、いつもの様に着替えが。


「ねえ、シェミ」


「なんでしょうか?」


「今日の服は派手過ぎない?」


「旦那様の指示です」


「父様の?」


シェミにそう聞き返した時だった。

私の部屋の扉が乱暴に開かれる。

そこにいたのは。


「パパ!?」


「誕生日おめでとう! バ~ルトン!!」


そして、私を抱き上げると盛大に高い高いをしてくれるのだった。

もう、他界に行ってしまうほど速さで。


「旦那様!」


「おっと、今日は気絶なんて絶対にさせてはいけないんだった」


そこは今日だけじゃなくて、いつもにしてくれ。

でも、エルフ先生と一緒に鍛えている。

いつもの私と同じだと思っては困る。


「それでは誕生日第一弾! サーカスを見に行くぞ!」


「え? でも、今日の授業は」


「そんなもの、一ヶ月も前から休みにしてある」


なるほどサプライズだったのね。

パパンは嘘をつくとき顔に出てしまうのでこの日まで隠し通すのにすごく大変だっただろう。

それよりもサーカスだ。

前世も含めて一度見たことが無い。

すごく楽しみだ。


「さあ、庭に出るぞ!」


「にわ?」


庭に出るとそこには大きな広場に様変わりして、多くの人でごった返していた。

ただその人達も一般市民という訳ではないようで、奇抜な装いや美しく着飾るものが多かった。


「それでは、サーカスを始める! 息子が気に入る芸を見せることができたものには、報償とは別途金一封を授ける!! 貴様らの全力を見せろ!!!」


「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」


これって、サーカス?


前世のサーカスはテントで仲間たちと協力しながら大きな驚きを見せる、という概念があったせいか戸惑ってしまったが、内容はサーカスそのものだった。

綺麗な歌声を見せる者や肉体の強さを見せる者、大きな獣を何体も操る者はすごいの一言だった。

特に多かったのが魔法を使う者たちだった。

魔法に大小の違いはあれどそのどれもが繊細で緻密な魔法操作が行われていた。

私自身も魔法操作の練習をしているので、どれだけ難しい技量が積ようなのかが分かる。

その域まで行くのに何年、何十年かかるだろうか。


「すごい」


「よし、お前にも金一封だ」


思わず漏れだす言葉に、褒賞が上がる芸人たち。

パパンのお財布は大丈夫だろうか?


「楽しいか?」


前世での父には一度も聞かれたことのない言葉。

思わずなんて返せばいいのか分からなくなる。

だから、これは気持ちが前に出てしまっただけだ。


「大好きだよ、パパ」


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