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6


もう認めるしかないだろう。

この世界はGRWに似ている世界だが、ゲームだったあの世界とは大きく違う。

まず、あのゲームも現実味のある部分が多かったが、それでもゲームだ。

モンスター討伐の後はドロップという形で自身で解体をすることは無かった。

それに、この世界では動けば疲れるし、お腹もすけば、怪我をすると痛い。

GRWはそのどれもが遮断されていた。


「この世界で私は」


生きて行かなくてはいけないのだ。

その為にも、モンスターを倒さなくてはいけない。

それは爵位騎士の義務でもある。

父様はたぶん冒険者出の爵位騎士なので慣れたものなのだろう。

そして、この家の爵位騎士を継ぐのであれば私もモンスターを倒さないと。


うっぷ


昨日のあの感覚がフラッシュバックしすっぱいものが上ってくる。

こんなに私は弱かったのか。


「心を強くするにはどうすれば」


「そんなもので悩んでいるのか?」


私の呟きに返したのは先生だった。

今は、会いたくなかったのに。


「今日も好きです」


「軽いな」


クソッ

いつもの様に気持ちが乗らない。

こんなでは先生の気持ちがいつかは離れてしまう。


「悩んでるなら話を聞くぞ」


「でも」


好きな女性に弱みを見せるってどうなんだ?

頼りがいが無い、かっこ悪いと思われないだろうか。


「まだお前は未熟者なのだ。先駆者に教えを乞うのは当たり前のことだぞ」


「そう、ですね」


「それに、何度も言うが赤ん坊に手を出すほど私も落ちてはいない。今の状況でかっこつけ等意味ないぞ」


「分かりました」


将来かっこよくなってもう一度プロポーズするとして、今は一生徒として先生に質問してみよう。


「どうしたら、心が強くなりますか?」


「こ、こころ?」


「はい。昨日初めてモンスターを殺しました。本や授業ではモンスターは生きとし生けるものに害成すもの、殺すことは正義であり、仕方ないことだと。私は理解しているはずでした」


「はあ」


「でも、いざ心臓に剣を突き立てた時の感触が、今も消えないのです。それを思い出すたびに吐き気が」


先生も父様の部下ならモンスターを殺す機会は多いはずだ。

そんな彼女はどのように殺生に向き合っているのか、教えてほしかったのだ。

だが、先生はなかなか答えを出せずに首をひねり何かを考える。


「悪いが、モンスター相手にそんな事を考えたことが無かった」


「え?」


「少し暗い話になるが」と前置きをすると、昔の事を語り始めたのだった。


ある所にエルフの里があり、そこにエルフの少女が住んでいた。

彼女はエルフが得意とする精霊術が苦手でしたが魔法が得意でした。

そんな彼女は少し異端児扱いされてはいたが、両親と共に楽しく暮らしていました。

しかし、平和な日常は長くは続きませんでした。

魔物の群れが村を襲ったのです。

村はモンスターの備えをしていましたが、想定を超えるモンスターを前に逃げる事しかできませんでした。

その最中、彼女を守ろうとして彼女の両親は死んでしまいました。

彼女はモンスターに復習をするために強くなり続けました。


「そして、強くなったエルフの少女はモンスターを殺す力を得ましたが、婚期と女子力を失ってしまいました」


「え? あ、はい」


もしかして、重すぎる話を少しでも明るくするジョークだったのだろうか。

でも、なんて返せばいいのか分からないのでスルーする。


「早い話が、私がモンスターを殺す理由は私怨が大部分を占めているって事。モンスターを同じ生き物として見たこともないし、私が殺さないモンスターはテイムされてモンスターを殺す兵器になったものだけ」


「なるほど」


そうやって、この人は強くなってきたのか。

好きな人の過去を知れてうれしい反面その悲しい内容に胸が痛くなった。


「言っておくけど、両親が亡くなったことに対してもう思うことは無いの。だって、私という娘を守れたのだから本望だと思うし、これからもずっと大好きだって気持ちは変わらないから。だから、変に心配しなくていいわ」


この人は強いな。

どこまで走ればこの人に追いつけるのだろうか?


「でも一つだけ言っておくけど」


「はい」


「モンスターは殺せ。生き物に似ているのは私たちの判断を鈍らせるための罠だ」


「……はい」


まだ、この人の中でモンスターへの恨みは根強いようだ。

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