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第七話 ベンガルの人喰い虎

 城の食堂で、アヌーシュカがおやつを食べてるところに行きあった。


彼女は旧藩主の娘、世が世であればお姫様なわけだけど。旧体制では、周囲に人がいなか


ったそうで。俺を見ると気軽に話しかけてくる。





 「いいんですかあ? ジータさんがやせちゃっても。


反対してくださるとおもってたのに〜。私は今ぐらいがいいと思うんですけど」



 はあ、天の踊りの件か。


「そりゃそうだけど。当人がやりたいっていうんだから、しょうがねえじゃねえか。


むしろジータの『天の踊り』が見れる日を、俺は楽しみにしてるんだよ」



 「……おにいさんは理解のある、優しい旦那様ですよね。ジータさんが羨ましいです」


この子はすぐ俺をおだててくる。


よーし、おにいさんパパド(豆の粉で作った薄いせんべい)おごっちゃうぞ。





 「まだ旦那様じゃねえよ。結婚はしてねえから」


「え、してないんですか? なんで?」


「せつないこと聞くなよお。ジータが結婚、嫌がるんだよ」


「嫌がるんですか? どうして」


「う〜ん。お前、『ベンガルの人喰い虎』の話、知ってるか?」


「人喰い虎?! どんな話ですか?」





 「ベンガルにはな、人喰い虎がいるんだよ、


昔っからずーーっと。


 以前は、虎が一度人の肉を食うと、その味が忘れられなくて、


人を襲い続けると思われてた。


だから、殺さなきゃいけないと。


でも、違ったんだ。


虎は、一度攻撃されると、人間は自分をいじめてくるもんだと思うらしい。


だから、次に違う人間にであったら、問答無用で喰い殺す。


殺された側は、虎は人間を喰い殺すものだと思って、虎を攻撃する。


その虎は、また違う人間にあって、そいつを喰い殺す。


それが延々と続いてきたんだ」


「……なんだか、意味の深い話ですね。


それで、ジータさんはその人喰い虎であると」


「そうだね、そういうところあると思うよ」





 アヌーシュカはパパドをくわえたまま、頭を右に振り、左に振りしていたが、


「ごめんなさい、わかりません」と言った。


「ははっ、わからなくてもしょうがねえよ。


まあ、ジータはそんな女だから、できれば優しくしてやってくれよな」


「……おにいさんは本当にジータさんを愛しているんですね。


私にもそんな彼氏ができるといいなあ」


よーし、おにいさんチャイ(香辛料がはいったミルクティー)おごっちゃうぞ〜!





 「お前が外に出たらさ、男が列をなしてついてくるよ。


そん中から一番いいのを見つくろえばいいんだよ」


「え〜、私、胸とかないんですけど、大丈夫ですかね?」


「大丈夫。というか惚れたら胸とか関係ないって。


俺なんか人喰い虎にこの身を差し出してるんだから」


「ええっ……おにいさんなんかかっこいいです……私、今感動しました」


そうかそうか。今度はもっといいものをおごってやろうな。


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