3月25日(月)
聖女様が崩御されたので新しい聖女の選出が始まった。
お父様の部下の中で一番有能な神官補佐長アライザスが魔方陣で祈りを捧げた結果、『聖女の水鏡』に映し出されたのはあのベルリーナ・スプリングスだったらしい。
あの憎きベルリーナ・スプリングスだ。
私の初恋のキースを奪い取った女狐!
確かに私はあの女の持ち物を壊したり、足をかけて転ばせたりしていたけれど……
当時五歳だった私のお茶目な行為をあの女はキースに告げ口したのだ。
そのせいでキースは絶交宣言をして私の元から去っていった。
聖女は王族との婚姻が義務づけられているから未婚の女性が選ばれる。
ということはキースとは結婚までいかなかったということだ。
ざまぁみなさい。
見た目は良いかもしれないけど性格の根っこが性悪だから別れるのよ。
明日は神官長であるお父様が異世界から聖女候補を召喚する日。
お父様が召喚する者は生活様式も言語も違う世界から召喚してくるため、神官長が衣食住をサポートする決まりになっている。
つまり娘である私にも仕事を割り振られている。
主にこちらでの生活の補佐や精神面についての悩み相談だ。
彼女が使う部屋はとりわけ可愛らしく設えさせた。
暖色系を貴重にした最新の流行を取り入れたハイセンスで可愛らしい家具の数々。
この部屋でときめかない女の子なんていないと思う。
それが例え異世界の住人でも。
お父様が召喚する聖女が年下なら妹として、年上ならお姉様として接するつもり。
明日の召喚式が楽しみだ。
*****
「アニー。そう不機嫌そうな顔をするんじゃない」
「だってお父様…仕方ないでしょう。
お父様が聖女を呼び出すって事は、カイル様かユーリス様はわたくし以外の女性と結婚するって事なんですもの」
「聖女は王族と婚姻を結ぶ事が決まっているからな」
「あーあ! 聖女はカイル様と結婚してくれないかしら。
それなら聖女を支えた補佐官として私がユーリス様に嫁げるかもしれないじゃない」
「アニー…。
私が召喚する者が聖女に選ばれるとは限らないのだよ?」
「許しません」
「えっ」
「許しませんわ、お父様。
絶対聖女に選ばれる女の子を召喚してくださいませ。
とびきり可愛くて!
清らかな心を持って!」
そしてユーリス様を旦那様に選ばない女の子を!!」
「嗚呼…… 私は教育方針を間違ったんだな…」
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