俺の特典が明らかにおかしいのだが?(いい意味ではない)
よく考えたら意気揚々と行くべきではなかった。なんとなく親友ムーブに流されて来てしまったが……
えー、まわりに見えるのは、砂、砂、砂!
何をどう見ても砂漠です!初期位置おかしくない?
そこまで思考が届いたところで、俺は身に覚えのない袋を手にしていることに気付く。ナニコレ?
中を見てみると……暗闇だ。え、こわ……
とりあえず手を突っ込んで見ると、紙の感触がしたので取り出す。どうやら手紙のようだ。それも、あの親友……いちいち親友呼び面倒だな。女神とでも呼べばいいや。
というわけで、女神からの手紙を読むと、だいたいの事情は把握できた。
ここは間違いなく異世界で、謎の袋はアイテム袋……ようするになんでも入る鞄みたいなものだ。ゲームでよく見かけるやつ。
そしてアイテム袋には、普通の人は特典アイテムとステータスがわかるステータスプレートだけらしいが、親友としてサービスしてくれたらしい。マジで親友になっておいてよかった。
入っているのは、服一式、保存食一ヶ月分、他にも生活に役立つ小物、あとは皆持ってる特典アイテムらしい。
あと、俺だけ別の場所から飛んだせいでどこになるかわからないが、皆はどっかの森にいるらしい。別に興味ないな……
小物類は必要になったら取り出すとして……特典アイテム、ステータスプレートが非常に気になる。まずはステータスプレートでステータスを見ないことには異世界は始まらないと誰か……近所のおばちゃんか誰かが言ったはずだ。
というわけで、近所のおばちゃんの指示に従う。俺のステータスは……
〈名前:八雲 悠希 Lv.1 職業:自宅警備員
HP:10/10 MP:10/10
AT:10 DF:10 MA:10 MD:10
スキル:「危機察知Lv1」「直感Lv1」「防衛Lv1」「回避Lv1」「精神攻撃耐性Lv1」「記憶Lv1」「弁論Lv1」「効率Lv1」「重量の女神の加護」〉
……なんだこれは。
まず、職業が自宅警備員だって?要するにニートじゃないか。確かにスローライフ目指してたけど……ニートは目指しちゃいねぇよ!?
だってニートだぞ?世間様に白い目で見られるニートだぞ?さすがにそこまで行ったらアウトだ!もの申す!
スキルは地味に使えそうなスキルが揃っているのがムカつく。確かに自宅警備員が社会に刃向かうためのスキルが多い。
そして明らかにおかしい、「重量の女神の加護」これは自宅警備員が持ってるわけないだろう。てかマジで何?これ。
思い当たるのは親友の女神だが……え、アイツ重量の女神だったの?なんとなく幻想が打ち砕かれた気がする。
問題は戦闘が全くできなさそうなことだ。明らかに逃げに走ってる。戦闘は無理だな。そういや称号どこ行った?別の世界のお話をしてしまったのだろうか。
ちょっと落胆しながらも、今度は特典アイテムを取り出す。するとあら不思議、明らかにこのサイズの袋に入らない……家が出てきたぁ!?
……は?マシで家なんだが。意味わからんよマジで……
それにしても……でかいな。3階くらいまでありそうだ。そうか、俺はこの家を守るために自宅警備員に選ばれたんだ……自宅警備員ってマジの意味なの?それにしてはスキルが明らかにおかしいことになっているが。
気にしていても仕方ないな。
一番重要なのは、この素晴らしきお家ならスローライフができるであろうということだ!女神が特典アイテム凄くしとくって言ったのは本当だったらしい。ありがとう。
問題は内装だな。これが日本のお家のような冷暖房完備で、なおかつキッチンとかも初期でついていれば完全勝利だ。
ぐるっと回って外装を見たが、なかなかに素晴らしい。この家ならスローライフはできるだろう。むしろ今になって思えば道のりが短縮されたのだから、異世界にも感謝すべきかもしれない。
ところでこの家って今砂漠の上に立った訳だが……まぁ、アイテム袋に戻すことはできるだろう。それはいいんだが、異世界、建築とくれば間違いなく立ちはだかる問題がある。
それは……魔物の襲撃だ。建築中、または建設後に魔物が襲ってきて家が破壊されるなんてよく聞く話だ。聞くか?
そう……今最も必要なのは、「防犯設備」!しかも異世界の危険性に耐えられるレベルのだ。
日本の匠では、無理だろう。強盗の撃退はできても、魔物の撃退なんて考えているはずもない。当然だけど。
とりあえず家に入る前に、ポストを確認する。ポストいる?いらなくね?
中にはまたしても手紙が……たぶん女神だな。ほぼ確だ。
それを読むと、どんなアイテムやスキルを貰ったのかはわからないが、アイテムには漏れなく魔物や虫、野生動物が近寄らない効果と、害意あるものの攻撃の無効化効果、一定期間で元の状態に戻る効果、さらには俺以外の所持不可能という効果があるらしい。女神の評価がうなぎ登りだ。
スキルで終わったと思いかけた異世界生活だが、どうやら幸先よさそうだ。やったぜ。