召喚、そして女神と親友に。
光り輝く教室。中心には白い魔法陣。
ラノベをよく読むような人ならわかるだろう。それはまさに召喚の前兆!
確かに普通のクラスとはちょっとばかし違っていたかもしれない。だからってこんなベタベタでいいんだろうか?
そんなことを俺は、よくわからない非常階段で考えていた。
教室?もちろん逃げてきましたがなにか?
俺は将来、早めに退職して貯めたお金でスローライフをすると中学の時に心に誓ったのだ。その野望をこんなところで途切れさせていいわけがない。
最初にほのかに光り始めた時点で、俺は教室後方の黒板に向かっていた。
その黒板は、この学校の初代理事長様が遊び心で作ったらしい非常階段へ続く扉。高二に進学した初日にあることに謎の鍵穴のある黒板に気づき、学校の昇降口の鍵などを作成した近所の鍵屋のところへ行った。すると、
「え?黒板の謎の鍵穴?あ~、あれか?なんか初代理事長さんが作ったらしいね。絶対使われてないけど。なんなら黒板の鍵、いる?」
とのことで鍵をゲットした。まさか使う機会があるとは思わなかったが……
ちなみにだが、入ったはいいもののここ、出口がないらしい。そう、出口がないんだ……
となると、他の皆さんが恐らく異世界?に渡ったあとに戻って、素知らぬ顔でトイレにでもこもれば問題ない。
勝ったな……と心の中で思ったせいか、何故か光はこっちに侵入してきてしまった。えぇぇぇぇ……
そして定番の白い部屋。最悪だなこれは。たぶん異世界ルート確定だ。
すると、一人の女性が歩いてくる。よく見えないが、体つきからして女性だろう。立派な膨らみをお持ちだ。
「ふぅ~、一仕事終わりましたね……って新客がいるぅ!?」
驚かれた。逃げたのに謎部屋に送り込まれたこっちの方が驚きだよ!
「そんなこと言われても……てか、なんで逃げちゃうんですかぁ!?」
あれ?心を読まれているようだ。さすがは神様(?)だ。あと謎の光が沸いたら普通逃げるだろ。
「普通は膠着硬直して逃げられないんですよぉ!あぁまた面倒くさいことに……あと(?)つかないで普通に神様ですぅ!」
恐らく、それは俺のスローライフを目指す願望が頭より先に体を動かしただけだろう。もしかしたら発達しすぎた日本の異世界知識が体を動かしたのかも?それならとりあえず日本に責任を取らせてほしい。俺は悪くない。そしてハイテンションな上語尾伸ばすのウザいな……
「え、あ、それはすみません癖みたいなものでして……それで、とりあえず説明を」
どうせ魔王が人間襲おうとしてるからこっちから人送り込んでなんとかしろとかいうのだろう。
「え、さっきの一部の人もそうですがなんでそんなに順応性高いんですか……」
ふむ、これは日々オタクがラノベや漫画を読むからだろう。なんならオタクじゃなくても読むしな。やっぱり日本の文化が悪いから俺は悪くないと思いました。
「聞いてて頭が痛くなる……ていうかこれでまた上司に怒られるし、てかそもそも私仕事押しつけられてるし……」
神様が文句を言い始めてしまった。ブツブツと愚痴をこぼしているので、話を聞いてあげると、どうやらこの神様の上司が勝手に俺らの召喚を決め、その上それら一連をこの神様に任せたらしい。任せたと言えば聞こえはいいが、実際は押しつけただけのようだ。
そして……見事にその上司の神様に関する不満で俺と神様は盛り上がった。
「そもそも召喚するならちゃんと人と時代選べって話ですよぉ!順応性高いと楽なこともあるけど要求がひたすら高いんです!なんですか無限の魔力だのスキル作るスキルだの!んな最強スキルとかねぇよバーカバーカ!」
「全くもって勝手なことだ!俺の日本における理想のスローライフを無駄にするなんて普通に間違ってる!何を考えてるんだこの神様の上司!」
あーだこーだと愚痴を言いまくった。その結果……
「私が間違ってましたよ。貴方はいい人です。」
「こちらこそ、神様(?)なんて馬鹿にして悪かった。何もあんたは悪くないんだな。」
そう言って固く握手した。もはや高校の誰より中がよくなった。親友だこの神。
「さて、それはさておき、いって貰わないと困るんです。親友である貴方をいかせるのは申し訳ないですが、そうしないとあのクソ上司が文句を言うんですぅ。」
「わかってる……親友に迷惑をかけるわけにはいかないからな。よく考えたら異世界でもスローライフは目指せるし?なんなら日本より難易度落ちたかもしれん。」
「うぅ、なんてありがたい……称号やスキルは私が勝手に決めることはできませんが、せめて特典アイテムは素晴らしいものにしておくのでよろしくです。」
「あぁ、それだけで十分だ!」
そう言って手を振り合いながら、俺は意気揚々と異世界へ向かっていった。
それにしても不思議な日だった。
異世界召喚回避できたと思ったら回避してなくて、話し合った結果神様が親友になったんだから。……うん、ナニコレ?