第11話:騒然
女神の部屋を転がり出たラウルは
部屋の前に群がる人々に目を丸くした。
人々は頭にトマトを乗せたラウルに目を丸くする。
「かのえ様、女神様は何もお召しになっていないとこ
ろを
見られたことに大変お怒りで…」
と、ラウルが顔を拭いながら事情を説明すると
王侯貴族雁首揃えて顔面蒼白になった。
誰もが先程女神の再来というべき
奇跡を目の当たりにしているのだ。
誰もが彼女を女神であると知っており、
つまり彼女の怒りは神の怒りということ。
「ラウル殿!なんてコトを!貴殿のせいだ」
「おお、一体どうすればいいんだっ」
「もしかしたら天の雷に射られるのか??」
「€$*^^%#<>^:/+*!!!!!!」
「五月蝿いぞ。騒ぐな。」
一同騒然となった時、
低く鋭い声で人々を黙らせたのは
東の大国、アザルドフ帝国のギザ皇帝である。
茶色い髪に金色の瞳。
よく日に焼けた精悍な顔立ちに、引き締まった長身。
帯刀こそしていないが、身動きしやすい軽装の出で立
ちは
王自ら戦場に立つ、戦士たる姿勢が伺える。
歴戦の英雄と言える彼は28歳と若いながらも
卓越した政治手腕でも知られている。
ゆえに他人に妬まれ狙われる存在でもある。
こうして大陸各地の王侯貴族が集まる中で
圧倒的な存在感を持っている。
王者という言葉は、彼にこそ相応しい。
「ゴーヒュン王弟殿、女神は拝謁叶うような状況
か?」
腕組をし、思案げにラウルに尋ねた。
「いえ、しばらくは叶いませんでしょう。
とてもお嘆きの御様子でしたから。」
ラウルは嘆くかのえの姿を思い出した。
聡明な彼女がその時ばかりは
年相応の乙女にしか見えなかった。
「ラウル王弟殿がおっしゃる通り、
今日は拝謁願えないだろう。
明日女神にお目通りいただこうじゃないか。
諸侯ら異存なかろうか?」
静かなそして有無を言わさぬギザ皇帝の発言に
あるものは納得し、あるものは不服そうにしながらも
他に代替案がないので、ざわめきながらも
それぞれに割り当てられた離宮に戻って行った。
ラウルは肩の力が抜けて、
こっそりため息をもらす。
かのえを女神だと疑わず
ざわめく王侯貴族を前にして
彼女が自分で"女神ではない"と言ったら
どうなるだろうか。
ラウルは想像したくなかった。
毎日更新目指していましたが、早々昨日は更新できませんでした。申し訳ないです。