第10話:赤い果実
「あの、お二人は一体どこで私を見つけたんですか?
それになんで私の事を女神だと思ったのですか?」
ラウルは彼女が先程目覚めた事を思い出した。
彼女はあの時気を失っていたのだ。
ラウルは彼女に女神祭のこと
王侯貴族が再生の泉を前にして儀式を行うこと
そしてその最中にかのえが
まるで泉から女神のように出現したことを説明してやる。
「それって私がまるで女神みたいじゃないですか」
かのえは目を丸くして言った。
大きな黒い瞳は驚きを隠せない。
「ええ、まさに女神の奇跡としか
言い様の無い光景でした。」
イレスの静かな口調が追い討ちをかける。
「私、、そんなぁ
女神って思われても
なんの力も持ってないのに・・・」
困り果てた表情でかのえはつぶやいた。
右も左も分からない
なにが常識か非常識かも分からない
そんな異世界に突然女神の様に現れてしまった。
「私はただの女子高生なんだけどな。」
一体全体どういう訳なんだろうか
「そうだ、私が現れた時に
着ていた服はどうしたんですか?
何か手がかりがあるかもしれない。」
はっと思い出してかのえは二人に問いかけた。
ラウルとイレスは顔を見合わせた 。
イレスが恐る恐る口を開く。
「かのえ様は、その・・・
何もまとってはいらっしゃいませんでした。
しかしすぐにラウル王弟殿下が外套で
かのえ様の体を覆われたので・・・。」
「・・・私 裸だったってコト?」
かのえは持っていたスプーンが
手から落ちたのも気付ない。
「そ、そうでございます。」
一瞬の間
そして彼女は激昂した。
「この変態!覗き魔!」
ラウルに向かって大声をあげると
手当たり次第にものを投げつけた。
真っ赤なトマトがラウル顔に命中する。
真っ赤になったかのえを前に
ラウルは慌てて御前を辞した 。
「嫁入り前なのにっ!」
かのえはイレスに縋り付いて
しばらく嘆きつづけた。