3新生活
大学生活が終わる時、極端に自分の時間が減ったことを嘆いたものだがその時間が再び出来た今はただただ暇なだけだった。
やることが無い。
普段時間が出来たらこれをやろうと思っていることはあった。
旅行に行ったり近場で遊んだり、のんびり本を読んだり。
だが、ざっとネットを見た限り交通機関はどこも逼迫していて空きがなく長期休業している店が大半だ。
窓から見える商店街もここ最近はどの店もシャッターが下りたままだ。
自分の会社と考えることは同じなのだろう。
金を稼いだところで先はない。なのになぜ働く必要があるんだと。
普段夜八時には閉まる近場のスーパーも最近は24時間電気が付けっぱなしで無人のレジに金が無造作に積み上がっていた。商品の供給もされている様子はなく買えるものもグッと減っている。
廃墟。
そんな言葉が相応しい程たった一ヶ月の間に町は死んだ。
田舎に帰って行ったのか人の姿もグッと減っている。
所詮都心へは仕事のために来ていた人が多いのだ。仕事もない今、わざわざここに来ることも無い。
ネットに飽き、暇つぶしにスマホの写真フォルダを開く。
もう随分写真なんか撮っていなかったから1番上にある写真の日付は5年前だった。
それもただ何となく撮った空の写真。
遡っていくと自分の交友関係の狭さを改めて見せつけられているかのような気分になった。
フォルダを占めるのはネットから引っ張ってきた画像や自然の写真ばかり。
その中で唯一3次元の人が写った写真は中学の時のものだった。
中学の卒業式の時最後にクラスで撮った集合写真。
その中で俺は隅っこで仏頂面のまま写っていた。
この時は写真写り悪いから、なんて思ってたけどマジでなんでこんな機嫌悪そうなの?
自分の顔はサッと横に流して他のかつてのクラスメイトを見やる。
懐かしい。
誰だっけ、こいつ。
そんな感想で横に流し見してスマホを閉じた。
スマホを見るのも飽きてきた。
疲れた目をギュッと瞑ると次第に眠気が押し寄せる。
時刻は午前十一時。
中途半端な時間に二度寝も悪くない。
※
ポケットに手を突っ込んで大きく欠伸をしながら歩く。
腹が減ったと外に出たはいいもののかれこれ一駅分歩いてもなかなか空いてる店が見つからない。
もう何度鳴ったか分からない腹の音が一際大きく鳴る。
それに普段歩かないからか足も疲れた。
泣け無しの体力も削られクタクタだ。
「おっ」
どうしたもんかと思っているとちょうど目先に公園を見つける。
「休憩、してくか」
※
「よっ...と」
ベンチに座りようやく体を休めることが出来た。
人気のない公園で、平日から、腹ぺこで、体力もなく途中で力尽きる。
こんなことになると誰が想像しただろうか。
もう何度吐いたか分からないため息が出る。
ベンチの背もたれに身を預けそのまま空に顔を向けた。
ふらふら、ふわふわと穢れなど知らんというように雲が呑気に漂う。
太陽の光も、空の青さも眩しくて目を瞑った。
どこまでも1人。
ずっと、それは寂しくなかったはずなのに今はやけに孤独感を感じた。
「え...?」
そんな時だった。
「さい、ばらくん...?」
俺の名前が呼ばれたのは。