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学園祭はトラブル続き1

いつもありがとうございます。



 斯くして、その日は訪れた。

 学園祭当日は、朝から試練であった。


 テニスサークルの方でも、食品を販売する為に、テントが張られ、その中で各々割り当てられた作業をしていたのだが、そこに、阿久根幸子が現れたのだ。


 あの日から、忙しいの1点張りで、のらりくらりと阿久根との会話を流してきたミヤであったが、学園祭に一緒に回りたいと言う彼女の要望も、同じ理由で断り続けてきたのだ。

 業を煮やしたらしい阿久根が、当日に乗り込んできたのである。


 実際にミヤは、嘘はついてない。

 本当に忙しかったのだ。


 だが、自分に対する体よい断り文句であると決めつけた阿久根は力技でミヤをどうにかねじ伏せようと、直接足を運び自身の主張を繰り返す。

 この後、すぐに野外ステージで始まるミスコンに自分が出るので、それだけでも見に来て欲しいのだと腕を強く掴んで懇願し続けていた。

 周りもどうしたものかと、困惑の目を向けてくる。


 話を聞きつけ、別の場所で作業をしていたヤヒコが駆け付け、説得に参加してくれたのだが、それでも阿久根は引かなかった。


 その時、ミヤの腕にしがみ付いていた腕がグイっと引っ張られ、手が外れた。

 何が起きたのかと、その方向を見ると、出水が眉間に皺を寄せ、阿久根の腕を強く掴み、自らの方へと腕を引っ張っていた。


「出水?」

 思わず、ミヤが名を呼ぶ。


「ミヤ先輩、すみません!!こいつ、俺の従兄妹です。」

 そう言うのだ。


 はあ~世間は狭いものだな~。


 出水はお掛けしすみませんと言い残し、彼女を引きずりながら、どこかへと消えて行った。


 暫くしたのち、出水がテントに帰ってきた。

 ミヤたちも準備が整い、あとはお客が来るのを待つだけとなっている。


 いつの間にか戻ってきていた出水が近付いて再度、謝ってきた。

「実は、少し前に夏合宿の写真をアイツに見られて、そこに写っていたミヤ先輩を見て気に入ってしまったらしく、どんな人かとか色々と聞かれて少し話してしまいまして。そうしたら先程の事態に…俺の所為です。嫌な思いをさせてしまい、すみませんでした。」


 出水は自分が情報を流した所為で彼女が押しかけてきたと考えたようだ。

 だから、そうではないのだと、ミヤは説明する。


 彼女とは半年ほど前から面識があり出水が謝ることはないということや、彼女は積極的なところがあり少しばかり困っていたのだが、とある事情からそのことを直接本人へ伝えられないのだということを、呪いの部分を誤魔化して話した。


「俺もハッキリ言えないから、彼女にも誠実な態度を示せなくてこんな事態となっていて、申し訳なく想っているんだ。」

 と、ミヤは苦しそうに話した。


 自分はイトが好き、それはハッキリしている。

 だから自分に好意を向けてくる彼女には申し訳なくて、拒絶しようと何度か試みたのだが、なぜか、呪いと同じような現象が起きてしまい、それが叶わなかった。

 このままではなにも示すことは出来い、彼女に対してとても失礼であった。

 やるせなさだけが溜まってく一方である。


「あいつの家の女性陣は、好いた男に執着するんです。御先祖の中には、死んだと思っていた初恋の男が生きていて、再会したのちに気持ちが蘇り、その男が結婚しているにも関わらず、追いかけ回した強者も居るほどです…先輩、俺も力貸しますから。幸子を傷つけずに、どうにしましょう。」


 そう出水は言い、協力者となった。


 その彼女はどこへ連れて行ったのかと出水に聞くと、ミスコン会場にいるスタッフに丁寧に頼んできたと言っていた。

 彼女はミスコンに出る予定になっており、もうすぐ始まるという事で逃げ出さないようにと監視が付いたらしい。


「そう言えば、ミスコン会場で糸島先輩を見ましたよ。先輩も参加するんですか?」

 そう出水が何気ない会話として聞いてきたのだが、ミヤは初耳であった。


「えっ、それ、知らないんだけど…」

 と、ミヤは声を震わせる。


 優勝してしまう…求愛する者が増えてしまうではないかとミヤは顔を青くする。


   ***


 そんな会話がミヤと出水の間でなされている数十分前に、ミスコン会場では猛烈な説得が行われた。


「頼む、糸島さん!!もう時間がない。代わりに出られる人は、君しか居ないのだぁぁぁぁあ。頼むよ。」

 ミスコン主債務者に、イトは頭を下げられていた。


 イトは学園祭実行委員として、最終確認の見回りに来ていた。

 どうやら、当日でのドタキャンがミスコンで出てしまったようだ。

 最近、謎の風邪が流行っているとは聞いていたが、今日も3人ほど体調不良での欠席者が参加者に出てしまったらしい。

 昨日までその人たちと打ち合わせをしていたスタッフも何人か体調を崩し休んでいると聞いていたので、人手が足りなくなるかもと心配し、イトは菊池先輩と共に最終確認と委員会からの助太刀要員としてここに来ていた。


 そして、イトにミスコンへ参加を頼み込んだような圧迫的説得がここの主債務者によってつい先ほど菊池先輩へも行われ、代打で参加を渋渋承諾させられたばかりであった。

 そうして、もうあと一人と言った感じで、菊池の隣に居たイトにも、手揉みをしてこの主責任者は頼んできたのだ。


 その助太刀は承諾したくない…。


 人数合わせだからと言われても、ミスコンなどと言う自分には無関係と思っていた大層な舞台に上がるのは気が引ける。

 審査で一発芸を舞台上でして時間を稼いでくれさえすれば、最終的に選ばれることの無いように手を回すからとまで言われ、首を縦に振らないイトを涙目で見つめて土下座をし出した。


 その必死の懇願に、イトも渋渋参加を承諾してしまったのであった。


 ミスコン会場待合室のベンチにて、はあ~と大きな溜息をイトと菊池は並んで吐き出していた。


「なんでこんなことに…」

 菊池がぼやくと、

「同意。」

 と、イトは短く相槌を打つ。


 そして、また、2人そろって大きな溜息を吐く、それを何度も繰り返している。


「出番です!」

 とスタッフから声が掛かり、舞台上へと移動する。

 2人の足取りは鉛を装着され引きずっているかのように重い。


 壇上には、12人の参加者が居た。

 1人1つの特技披露をしなければならない。

 右端から、中央のマイクに歩み寄り、自己紹介と特技披露が始まった。


 バイオリンやギターの弾き語り、某テーマパークの氷姫が歌うあの曲を熱唱したり、激しいダンスや華麗な舞を披露したり、多国語を悠長に話してみせたり、皮膚が柔らかいと顔や腕、太ももの皮を引っ張る者もいて、それぞれが様々なことをしている。


 被らないようにと願いながら、菊池とイトは自身の順番を待つ。

 2人の順番は、最終とその一歩手前だ。

 先に菊池が前に出る。


 特技は縄跳びらしく、トントンと軽く前跳びをし始める。

 その後、あやとび、交差跳び、二重跳び、ハヤブサ、フィニッシュで三十跳びをやり切った。

 普通に凄かった。

 会場から大きな拍手が湧き起こっている。


 この次は私…と、菊池への大きな拍手に自分の特技は地味だが、大衆に受けてくれるのだろうかと酷いプレッシャーを感じてしまう。

 恐る恐る、一歩前へ足を踏み出し、前へ出る。


「教養学部2年 糸島桜です。けん玉をやります。」

 背中に背負っていたバックから、けん玉を取り出し、バックを背負いなおすと、一点に集中する。

 深く息を吐き、構える。


「ハイ!!」

 と、声を出して、まずは大皿に軽く乗せた。

 その後、日本一周、とめけん、最後に飛行機と決めたかったのだが、あえなく失敗。


 あ~あという落胆の声が会場から漏れたが、もう一度と人差し指を突き出し、無言で再チャレンジを願い出て、もう一度、構える。


 会場はけん玉へと視線が集まる。

 そして、カチンと響く音を鳴らして綺麗に決まった。

 会場内に大きな拍手が起こる。


 ありがとうございましたと丁寧にお辞儀をし、イトは元の位置へと戻っていった。


 司会進行の人が、ミスコン参加者で推したいと思う人の番号を記入用紙に書いて箱に入れるようにと説明を始める。

 そこまできて、やっと任務を終えることが出来たと感じる。

 肩の荷を下ろし、緊張が消えたイトは会場をぐるりと見渡した。

 すると、ミヤとヤヒコがステージを見に来ているのが目に入る。


 ミヤとバチンと目が合う。

 彼を確認し、なんだかホッとし、ミヤに向けてニコッとついつい笑顔になる。


「用紙を全て集計し、午後に発表を行いますので、楽しみにお待ち下さ~い。」

 という言葉が背後で司会者によりアナウンスされ、催しは締めくくられた。


 微笑み合う2人の間にはまだ届いていない。


 ***


「あ、あれはダメだろう…皆にイトの可愛さが知れ渡ってしまったではないか…」

 と、ミヤが小声でブツブツ発している。


 ヤヒコは通常運転だと言った様子で気にしない。

 だが、そんなミヤとイトのアイコンタクトでの微笑ましいやり取りを壇上から見ていた人物が、イトをきつく睨みつけていたのを、ヤヒコは見逃さなかった。


 その人物は、もちろん阿久根だ。

 厄介なことにならなければよいなと、ヤヒコは密かに願うのである。


 ステージが終わり、舞台裏へとイトたちは履けたので、話を聞きに行こうとミヤたちは移動した。

 裏手に回ると、五島(アイツ)が居た。


 五島がイトに何か熱心に話し掛けている。

 手を擦り合わせ、頼んでいる様子だ。


 困った顔をするイトに全速力でミヤは駆け寄った。


「イトが困っているようですが、何かありましたか?」

 ミヤはイトと五島の間に体を入れて立ち、声を掛ける。


 ムッとした顔をして、五島が答える。

「君には関係のない事だ。」


 ミヤを押しのけようとするので、ミヤは足に力を入れ踏ん張りながら、言い返す。

「関係あります。イトが困っているのですから。」


 その答えに五島は眉間に皺を寄せ、粗く言い放つ。

「それだから、君には関係ないって言っているのだろう!!」


 睨み合う2人。

 バチバチと、火花の音が聞こえてきそうだ。


「まあ、2人共、落ち着いて。」

 菊池が間に入ると見る見るうちに気勢が削がれる。


 菊池がちゃんと話をしようとしない五島に代わり、ミヤに説明してくれた。


 午後の部で行われるマジックショーでアシスタントをお願いしていた女性が病欠で本番には来られなくなってしまったそうだ。

 ミスコンに出るはずだったが病欠した娘がその役目を引き受けていたそうだ。

 そこでミスコン同様、ピンチヒッターでイトに出て欲しいと、五島から頼まれていたのだという。


 それを聞いて、ミヤは提案した。


「そのマジックショーならば、俺も出るから一緒に出よう。確か、女性のアシスタントは最後の大型イリュージョンで箱から出てくる役割のはず。俺はその箱を空ける役回りだからイトは安心して任せればいい。」

 軽い気持ちで受けるようにと誘った。


 イトもそういうことならと二つ返事をしてくれた。

 イトと一緒のステージに上がれるとなり、ミヤは安易に嬉しがる。


 五島がミヤに対して不満そうな視線を送るが、すぐさま笑顔をイトに向け、引き受けてくれたお礼を述べていた。


「桜ちゃん、引き受けてくれてありがとう。君は本当に優しいね。女神の様だ。では、この後2人きりで打ち合わせを…」

 と、五島が発すると、ミヤが割って入る。


「この後、イトは俺たちと学園祭を回る予定なので、その時に俺がマジックショーの段取りとかを説明をしておきますよ。任せてください。だから先輩は、他へ行ってください。学園祭実行委員の副委員長ですから、今日は忙しいですよね。」

 もの凄いイイ笑顔でミヤは五島に言った。


 五島は目を大きく開き、拳を握り絞めている。


「それではこれで俺達は失礼します。」

 とミヤは言い、イトの手を引く。

 菊池に横を通る時も声を掛け、軽い会釈をし、そそくさとその場を離れた。


 奴に勝った!!と、ミヤは心の中でガッツポーズをした。



少し長くなってしまったので、4話に分けて投稿いたします。

続きも是非、読んでみてください。

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