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ライバル??は、突然に1

間があいてしまいました。

よろしくお願いします。

 

 新学期が始まった。

 ミヤは夏休みの間も研究室への所属先を保留にしたままであったが、結局、横川に引きずり込まれるような形で配属先を決め、新たな環境へと歩みを進むこととなった。


「とまあ、こんな所かなぁ?」

 配属した研究室の準教授が、研究棟にて生徒が利用する場所を自ら案内してくれていた。


 昨年、某有名大からか世間的に名の通った教授と共に引き抜かれてきた准教授で、学生だよね!?と間違えてしまうような見た目だが、もうすぐ四十なのだと驚きの声が上がるような先生だ。

 それに話す時にオドオドし、人に対し優しすぎる性格のようで、一回り年の離れた生徒たちにまで低姿勢である。

 うちの大学の濃い教授たちに囲まれて、彼はやっていけるのかと心配になる。


「それじゃあ、あとは、さっき紹介した院生の彼らに君達を任せます。横川君と若宮君、君達は院生の霧島君に教わってね。霧島君、この前話した通りにお願い。」

 准教授が霧島という先輩に自分達を押し付ける。


「あっ、はい。基本操作とサンプル採取からでしたね。了解すぅ。」

 霧島という院生の先輩がそう助教授へ返した。


「俺は院生二年の霧島学だ。俺の担当は土壌の細菌収集。あらゆる土壌を採取し、新種の菌を見つけるのさ。ハッ、やっべーぞ。とりあえず今日は、今度採取にしに行く場所の相談だ。あとは、歓迎会だ!!ジャジャーン、ようこそ、平戸研究室へ!!」

 霧島がいきなりポケットからクラッカーを取り出して、鳴らした。

 パンッと破裂音が室内に響き渡る。


 他の院生から今後の説明を受けていた他の生徒たちが、何事かとこちらを見る。


 そこには頭の上にクラッカーから出てきた紙ごみを乗せたまま、何が起きたのか分からず脳が混乱し、固まっているミヤと横川がいた。

 霧島の奇抜な行動に慣れている様子の院生たちが、続きを話しますよーと言って、冷静に対処する。

 生徒たちも慌てて体の向きを変え、聞く姿勢へと戻っていった。


 ミヤたちも目の前にいる先輩は、少しばかり付き合いづらいタイプの人かもしれないと頭にインプットしつつ、気持ちを切り替える。


 だが、次の瞬間には、霧島は椅子から腰を浮かせ立ち上がっていた。

 少し歩いた後に振り返り、掌をクイ、クイっと内側に曲げ、ついて来いと言うジェスチャーをするので、2人は彼の後をついて行く。


 実験室を出て、廊下を少し歩くと、観葉植物に仕切られたスペースへと入っていく。

 そこには、丸テーブルと椅子がいくつか置かれ、奥に何台か自販機が設置されていた。


「ここは、生徒が使用していいフリースペースだ。実験室で騒ぐのは良くないからな。実験の合間にここに来て食っちゃべったりしている。あと、学生は論文への理解や和訳の宿題が出されるから、そのときは同期たちで助け合うスペースにもなる。出来る者達から許可が下りれば、コピペ大会が行われるのだ。」

 そう説明終えると、座れと霧島の前の席を顎で促され2人は席に着く。


「へぇ~」

 俺が先程の霧島の話への気の抜けた返事をしながら、椅子に腰かける。


 それと同時に、

「写しオッケーなの!?ヤッター!!」」

 と、隣で横川が歓喜の声を上げていた。


 横川の言動とミヤの横川に贈る呆れた眼差しをセットで見て、お前ら面白いなと口にして、霧島はケラケラと笑っていた。


 その後、今回は霧島が新歓の幹事を任されていると話だした。

 だが、霧島は予約、リサーチ、気遣いと言ったことが大変苦手らしいという話をしたと思っていたら、いつの間にやら、ミヤと横川が迎え入れられる立場にも関わらず、霧島に代わり幹事の仕事を自分たちがやることになっていた。


 その後、少しのこれからの話と他愛もない雑談を終えると、今日はやることがこれ以上ないから解散だと霧島に言われ、ミヤと横川は実験棟を後にした。


 准教授の建物の三階にある研究室に寄って帰宅する有無を伝える。

「お疲れさま。これからよろしくね。またあした。」

 と、ニコニコと笑いながら手を小さく振り、准教授が労いの言葉を掛けた。


「「お先に失礼しまーす。」」

 とミヤと横川は揃って挨拶し、エレベーターを使って一階に下りて行く。


 一階は広いロビーになっている。

 奥に学生課のカウンターがあり、生徒が事務手続きなどをする場所となっている。

 そのロビーの端で、見覚えのある人を見つけた。


 横川に先に行っているようにと声を掛け、その人の方へ向かう。

 学生用掲示板の前の棚に乱雑に置かれたチラシを整理していた彼に話し掛ける。


「こんにちは、伊佐さん!その節はありがとうございました。」

 近くまで来ると、ミヤは止まって声を掛けた。


「あっ、宮若くん!!いやはや、その節は本当にすまなかったね~スマホの代金、半額は出すって言っておきながら、三分の一にしてもらっちゃって、その上お菓子まで頂いてしまった。こちらこそ、ありがとうだよ。」

 伊佐が後頭部を掻きながら、ミヤに気を許した優しい眼差しを向けている。


「アレは、俺の不注意でしたし、伊佐さんはただ台車を押していただけなのにあんなことに巻き込んでしまって。滑り込んできたスマホを回避するのは無理でしたから。やっぱりお金を出させてしまったことが申し訳なくて。俺の気持ちの落しどころの菓子です。押しつけがましくしてしまって、すみません。」

 ミヤは自分の呪いの事があるので、お金を払わせてしまった事に、かなり申し訳なく感じていた。


 あれから2人に再度交渉したのだが、やはり彼らは引き下がらず、三人で折半という話でまとまったのだが、それでも罪悪感はあるので、イトに聞いて、最近人気の高級チョコのお店に行き、心付けを用意したのであった。


「本当に君は良い子だよね。うん、何か困ったことがあったら僕を頼ってくれよな!力になるから。あっ、そうだった!?頼まれてたんだ!彼女、君の携帯代金を折半したもう一人の女子生徒の阿久根幸子あくねさちこさん。支払いの報告の際に君から頼まれた例の菓子をあの子にも渡したよ。そうしたら直接お礼が言いたいと言い出して。でもね、僕もうっかりしていたのだが君へ直接連絡の取れる番号を知らなかったんだ。君のスマホが壊れていたから、君の連絡先は自宅の番号しか聞いていなかった。あとは君が頻繁にここに来てくれていたから何も不便に感じなくて、失念していた。彼女が僕に知らないかと尋ねてきて、そう言えばと思ったよ。彼女、君と話をしたがっていて、キャンパス内を探し回ったと話していたよ。それで、君に会ったら、これを渡してほしいと頼まれた。」

 そう言うと、ポケットから取り出したスマホケースに挟んであった小さな紙を引き抜くと、ミヤへと寄こした。

 手紙には、宮若さんへと始まり、会って話がしたいとの内容の文、電話番号、メアド、コミュニケーションアプリIDが書かれており、最後に名前と学部で締めくくられていた。


 いつ会えるか分からないからと随時持ち歩いてくれていたのだという。

 伊佐さん、本当に良い人だ。


 紙を受け取り、伊佐さんとお別れをして、横川の待つコーヒーショップへと急いだ。

 研究室を出る際に准教授に課題を渡されていたので、分担してやろうと手を組んだのだ。


 ***


 翌日、食堂にて。

「よっ!」

「ああ、来たか。」

 待ち合わせ場所で本を読むヤヒコに俺は声を掛ける。


「イトは?まだ来てないのか?」

「ああ、そう言えばまだ来ていないな。」


 いつも集合を掛けると、イトは一番に集合場所に来て、席を確保してくれている。

 そんなイトが今日はまだ来ていないらしい。


「何かあったのかな?連絡いれてみるか。」

 そうミヤが言った後すぐに、声がした。


「遅くなってごめん!!!」

 走って来たようで、息を切らしながら、いつもより大きな声で言った。


「あ、いや、ちっとも遅れていないよ。ほら、時間ピッタリ。いいや、一分前だ。走ってきたのか?大丈夫か?飲み物いるか?」

 食堂内にある自販機に飲み物を買いにミヤは急いで腰を上げる。


 椅子の背に手を当て、立ち上がった瞬間、イトがあっと声を上げ、彼の手を押さえようとしたのだが、すでに彼の体は椅子から離れた位置まで遠ざかっていた。


「お茶持ってきているのに…。」

 イトが呟いた時には食堂奥の自販機売り場まで到達していた。


「いいじゃないか、おごってもらえば。」

 親友の恋を応援するヤヒコは柔らかい口調で可笑しそうにそう言った。


 そうこうしているうちに数本の飲み物を抱えて、ミヤが返ってきた。


「はい!どれにする?」

 イトへと差し出す。


 イトがヤヒコを見ると、顎でクィッと貰えと合図するので、スポーツドリンクを手に取って、ミヤにお礼を言った。


 そして、ミヤの隣の席に座り、鞄からペットボトルを取り出して、グイグイと勢いよくお茶を飲んだ。

 よく見ると、随分と汗を掻いている。


 その飲みっぷりに、あのヤヒコも驚いた表情となっている。

 イトは多くの人の目がある場所では、冷静で慎重、乱す様子を見せることは滅多にない。

 これは高校時代の部活の影響であるのだが…ここではその説明は省く。


 飲み終わると、はあ~とイトが息を吐く。


「何かあったのか?」

 イトが落ち着たのを見計らい、買ってきて余っている中のムトウのコーヒー缶をヤヒコに手渡しながら、ミヤは言葉を掛ける。


 ミヤのその問いに、最初、イトは困ったという表情を浮かべた。

 そしてすぐに、憎しみを込めた目をして奥歯を噛みしめ、歯をギリッと鳴らす。

 話をしようか迷っているようで目線を斜め上へと向け天を仰いでいる。

 その悩む様子をミヤは大人しく見守る。


 ミヤがサイダーの缶を開け、飲み干すまでの数分の間だった。

 その後、大きく溜息をイトが吐く。


 決心がついた様で、ミヤの問い掛けに答える。

「実は、サークルの先輩に頼まれて、学園祭実行委員の手伝いをすることになったのだけれど…副委員長がずっと追いかけてくるの。ほとほと困っておりまして…。」

 肩を落として、こめかみに指を押し当てグリグリしながら、イトが話す。

 あれはストレスが溜まっている時にイトがよくやる仕草だ。


「追いかけてくるって、そいつに何かしてしまったのか?」

 心配そうにミヤは聞く。


「私もどうしてなのか、よく分かっていなくて…でも、恨まれるきっかけは無しにしもって感じで、やってしまった?というか、言ってしまった…が合っているのかな。(ゆい)、あっ、小倉唯ちゃん分かる?同じサークルの私と同じ学部の髪がショートの人、あの子も一緒に実行委員を頼まれて参加していて、唯が言うには、これは、“面白れぇ女案件”だ!!って言って、笑っていたのよ。私にはよくわからなくて。私が生意気に注意しちゃったから、コイツは変なやつ=面白い?と感じて話し掛けてくるのかな?私、面白くないのに。」


 いや、俺は妹の会話から知っている…“面白れぇ女”とは、少女漫画やドラマでよくある俺様と呼ばれる高慢な態度の男が、気に入った女の子をロックオンした時に発するセリフなのだと。


 居間でドラマ視聴中の妹とその親友が、

「出た~!!アツシの面白れぇ女!?」

「はいはい、地味系主人公、御曹司に無事にロックオン。第一ミッションクリアー。」

 と、パチパチパチとテレビの前で拍手をして騒いでいたのを思い出す。


 その後、そっと気が付かれないように居間を通り過ぎようとした俺に冷蔵庫からアイス取って来い!と悪魔たちから命令が下った…は置いといて。



「糸島は面白い奴とは言えないな。」

 と、冷静にヤヒコが述べる。


「だよね~。」

 イトもそれに相槌を打つ。


 自分で認めちゃっているけど、いいのか?


「あ、その時、たまたまそいつのツボだったとかじゃないのか?何を言ったとか?」

 ヤヒコがちょっと気になるようで問う。


「うーん、言ったというか注意したのよ。」

 イトの話では、学園祭実行委員が顔合わせして集まり三回目に、ある男が遅れて登場したと言う。

 その男は、まだ一回も出席したことが無かったのだが、副委員長であった。

 忙しい中、委員を引き受けてくれる人もいるし、手伝いをしに来てくれる人もいるから、参加が初めてだったことや遅れてきたことには怒りは無かった。

 だが、その後の行動にイラついたのだと言う。


 その日、イトは俺達と帰ったら集まりの話し合いをすることになっていたため、実行委員の集まりが早く終わる事を願っていた。


 それなのに、この男が現れたことで、話が脱線し、今まで席にきちんと座って話し合っていた人たちが彼の周りに集まり、好き勝手に話し始め、全く進まなくなった。


 委員長がそのうち嗜めるだろうと希望を持ち20分くらい経過した頃、忙しい合間に参加してくれている副委員長の事をよく知らない人たちが今日はもう進まないようだとヒソヒソと話し始め、そっと帰ろうとしていたので、イトが声を上げた。


「すみません、話が進まないようでしたら、帰ってもイイでしょうか?」

 大きな声で、部屋の隅々まで通った。


「あっ、ほら、君たち、席に着いて。話が出来ないぞ。」

 慌てて、イトの言葉でそう周りに促す男に、ムッときたイトが余計な一言を発した。


「いや、君たちじゃなくて、あなたもでしょうに。」

 その声が聞こえてしまったようで、イトの方を見て、副委員長が目を見開いている。


 この人が来て、余計な話を勝手に初めて、止めることなく話していたのに、自分は悪くないと言う言葉にムカつき、つい口に出てしまった。

 声に出ていたと気づいた後に、これからお世話になる先輩であったと我に返り、すぐさま謝罪した。


「すみません、生意気でした。ごめんなさい。」

 と言って、席に座り直した。


 それから、空気の張り詰めた場を副委員長が自然に治め、話し合いに戻った。

 その日の打ち合わせはスムーズに進み、終わりを迎えたのだが、あの様子から、この後にみんなで飲みに行こうと盛り上がる。


 もちろん、イトはその後にミヤたちとの約束があるので家に帰ろうと、隣にいた唯に先に帰ると伝え、荷物を持って席を立つ。


 その直後、電灯が遮られ、目の前に影を落とした。

 自分よりも背丈の大きな誰かが目の前に立っている。

 顔を上げ確認すると、その人物は副委員長であった。


 やばい、恨みを買ったのか?

 委員をやめるよう言われるかもしれない、仕方がないかと考えていると、こう言われた。


「一緒に飲みに行こうよ。」

 飛び切りの爽やか笑顔であったが、イトは迷いなく断りを入れた。


「すみません。この後、友人たちとの約束がありますのでので、行けません。お先に失礼します。」

 関りにあまりなりたくないと感じ、サッサと副委員長の横を通り過ぎて、駅まで猛ダッシュで帰ったのだと言う。



明日、続きを投稿します。

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