修二さんが憑いているよ2
前半の続きです。
「もしかして、健太郎も修二さんが見えているのか?憑かれているから、それで何か知りたくて来たのか?」
そう信次郎さんに聞かれた。
えっ、俺に修二さんが憑いている!?
今、そう言ったよね?
んん?幽霊女じゃなくて、修二さん??
え、どういうこと???
「違うのか?見えていたのではないのか?てっきり見える人種なのかと思ったのだが、君は違うのか。」
混乱しているミヤに、信次郎さんが残念そうに呟く。
「あの、信次郎さんは幽霊が見えるのですか?」
ミヤは前のめりになり質問をする。
「ああ見える。儂は昔から霊感が強い。健太郎は本当に見えていないのか?」
「はい、俺はそう言うのはサッパリで…」
そう言いかけて、もう一度ミヤは考える。
幽霊の見えるこの人ならば、呪いも信じてくれるに違いない。
言ってみよう…。
「あの、実は俺、呪われているんですよ…」
ミヤは信次郎にこれまでの事を打ち明けた。
信次郎は時折質問をしながら、話を聞いてくれた。
ミヤの話が終わると、信次郎は真剣な眼差しで床を見つめて考え込む。
やっぱり、可笑しな話だよな…信じるはずがない…。
そう、諦めかけていた時に、信次郎が口を開く。
「健太郎、おそらく、その幽霊女、儂も見たことがあるぞ。」
目は真剣であった。
「といっても、片指で数えられる程度だけだがな。」
信次郎さんの話だと、修二は昔、謎の幽霊に纏わり憑かれていたと言う。
信次郎がこの家に来たのは、年が14歳の時だ。
当時、何も分からずにこの家の門を潜った信次郎は、修二の後ろにずっと佇む女を見たのだそうだ。
その女は髪が乱れ、赤い着物を羽織っており、自分の事をずっと睨んでいたそうだ。
女が人間ではないと本能的に感じた信次郎は、その場に居ることが恐ろしくて、ガタガタと体が震え、動けなくなったそうだ。
その事があり、家を継ぐのは別の子にと、話が白紙に戻りかけたのだが、信次郎の父親の強い意向で、彼が18歳になったら、この家に入ると言う事で、話がまとまる。
その間に、この家には離れが作られた。
18歳になると、信次郎はこの家にやって来た。
あの恐ろしい記憶があるので、恐怖に脅え、気が進まないままここへ来た。
やはり、あの女は修二に憑いていたが、信次郎が幽霊を見えると教えられた修二はきちんと策を練ってくれていた。
自身が離れに住み、信次郎に出来るだけ接触しないようにしてくれたのであった。
修二は、幽霊に取りつかれていたことを、自分で知っていたのだった。
「実は、修二さんの奥さまの千代さんは儂と同じで、幽霊の見える人だったのだ。儂が見えていることをいち早く気づいてくれて、養子も止めさせようと話してくれたのだとか。そうとは知らないうちの親父が、息子の事を気に入らないからそんなことを言うのだと暴言を吐いて、千代さんを困らせた。結局、儂の父親の強欲な考えからの主張で、儂は養子に迎え入れられることが決まってしまったから、儂の為にと対策を考えてくれて、幽霊に関わらせないように力を尽くしてくれた。」
昔を思い出したのか、言葉を飲み、黙り込んでしまう。
「千代さんは、儂がここに来て5年後に亡くなった…」
ポツリと零す。
「冬の寒い日だった。儂はまだ学生であったし、裕福な家庭の子となり、儂は若い頃は女性にモテてな。その日も女友達と遊ぶ約束をしていたから出かけた。儂が帰宅した時は、すでに千代さんは死んでいた。遺体を見つけたのは、修二さんだった。病院から帰宅後、いつも帰宅時間には離れの部屋まで顔を出す千代さんが来なかったことが不思議であったが、その時は甥の世話で忙しいのかと思っていたそうだ。しかし、いつもの就寝時間近くになっても、離れに顔を出さないので、本宅へ様子を伺いに行ったら、亡くなっていたという。持病からくる心臓発作を起こしたようだった。」
もう何十年も前の出来事であろう、それでも当時を思い出して悔しそうに唇を噛み、目に涙を浮かべる。
余程、悔しかったのだろう。
千代さんは、素敵な人だったのだなと、伝わる。
「千代さんのお葬式にも一瞬だが来ていたよ。あの幽霊…笑っていんだ…凄く、もの凄く悔しかった。あの幽霊の仕業だったのかもしれない。呪い殺されたのかも…でも、それからパッタリ見なくなった。修二さんも後妻は取らないと、宣言していたからかもしれないけど、宣言通り、独身を貫いたし。」
「そんなことが…」
ミヤは信次郎の話に驚き、掛ける言葉が見付からなかった。
だんだん、呪い殺されたというワードが脳裏に浮かびあがり、恐怖を感じ震える。
このままだと、イトが危ない目に遭うかもしれない。
俺は諦めるべきなのか?
でも、そんなことしたら、俺は一生結婚できない。
いや、彼女も作ることが出来ないと言うことではないのか?
そんなことは、絶対に嫌だーーーーーーー!!!!!!!
ミヤの魂の叫びである。
ふと、考える。
自分は修二の血縁で匂いが似ているからと呪われたが、修二はこの女にどうして憑かれていたのか?
そこに何かの取っ掛かりが隠れているかもしれないと考える。
「あの、信次郎さんは、修二さんに赤い着物の幽霊について、何か聞いていませんか?憑かれた理由とか…」
ミヤは聞いてもよいものかと考えながら、言葉を選び質問したので、可笑しな文章となる。
信次郎が少し唸って記憶をたどり思い出そうとしてくれたのちに、答えた。
「儂が聞いた限りだと、幽霊は昔の知り合いなのだと修二さんは言っていた。それと…悲しい女性だと、だから無下にすることは出来ないのだと、千代さんがポツリと零していたのを聞いたことがある。」
「悲しい女性、無下に出来ない??」
サッパリ分からない。
結局、信次郎さんは幽霊女について詳しく聞かされていないとのこと。
修二さんの伝言から、自分が亡くなったら、生前に頼んでおいた力のある祓い人に周囲を念入りに払ってもらい、離れを取り潰し、共に女も供養して貰ったのっで、十分だと考えていたらしい。
「つまり、それしか分からなかったと…」
話を聞き終わり、呆れた声をヤヒコが出す。
「ああ、そうだよ。」
ヤヒコの家の冷凍庫に常備されている高級アイスをスプーンですくい口に運びながら、ミヤはムッとしながら返事をする。
「…分かったのは、幽霊は修二さんの昔の知り合いで、可哀そうな女と言うことだけか…進まんな。」
ヤヒコは肩を落とした。
「ああそうだよ!!ソースだよ!!」
今度は苛立ちを露わにして言い返した。
大きく溜息をつくヤヒコ。
「俺だって、もう少し何か分かるかもと思ったよ、でも分からなかったんだから仕方がないじゃないか!!それにあの幽霊は修二さんにも憑いていたようだから修二さんの知人をこれから調べるから何か分かるかもしれないし。この前は忘れていたけれど、信次郎さんが何か思いだすかもしれない。何かわかったり、思い出したらすぐに連絡をくれると言ってくれているから…兎に角、何か分かったら連絡くれることになっているから、少しは進展しているよ。」
怒りながら、そう弁明するミヤに対して、さらに大きく溜息をつくヤヒコ。
その態度にミヤは更にイラつきを覚えたが、ここでヤヒコに怒っても仕方がないと、気持ちをグッと抑える。
そして、自分のとっておきの情報をヤヒコに話す。
「俺、あの後、家に帰ってから、少し思い出したことがあって、祖父ちゃんに聞いてみたんだ。俺が小さい時にあの家に行った際に、あの芝生の上で、ボール遊びをしたことがあったよなって…薄っすら思い出したんだ。離れから自分に向かって歩いてきた人が居て、一緒にボール遊びをしたんだ。表情とか外見とかは全く記憶にないけれど、祖父ちゃんの話だと、その人が修二さんだったと言っていた。声は落ち着いていて、凄く優しかった。」
「お前、修二さんに会った事があったのか?」
「そうだったみたい。」
それを聞いたヤヒコが黙りこむ。
「どうした?」
ミヤが聞くと、ヤヒコが口を開く。
「お前の祖父ちゃんと親戚は、仲が不仲と言う訳でもないし、家もそれほど離れていないよな?それならば、なんでお前はその家と親戚付き合いを全くしていないんだ?正月とか、お盆とか、本家があるなら、挨拶に言ったりするだろう?」
ヤヒコの言う通りだ。
確かに、親戚付き合いをしていい間柄なのだ。
だが、俺の家族は、昔から親戚への挨拶に行く時に俺を誘うことはない。
俺は最初から連れて行かないような雰囲気で毎回話が進んでいたから気にしたことが無かった。
俺も親戚の家に行きたいと思ったことが無かったし。
親戚に会う有力な理由…お年玉!?
お年玉は、両親が代わりにもらって帰ってきていたから、煩わしい親戚同士の会話もなくお金はもらえると、俺は逆に喜んでいたのだ。
再び、修二さんの家に行くまで全く気にしてこなかった俺を親戚の家に行くのに誘わない理由が少しばかり気になって、昨夜、祖父ちゃんに聞いてみた。
「冬と夏に本家へ挨拶に行くのが通例なんだけど、俺も例外なく、産まれてから連れていかれていて、当主や親せきにも顔を見せていたらしい。でも、俺が3歳の頃、お盆で訪れたあの家で、俺は大泣きしたそうだ。そして、気絶した。それから、俺はあの家に来させない方がいいと、当時の当主、修二さんの助言で、暗黙の了解となったのだと教えてもらった。」
「泣き出して、気絶?幼い子供だから、何か見えていたとか?」
「俺が?そんな能力はないよ。お前も知っているだろう?」
「じゃあ、本能だろうか?」
「本能……なにが?」
「いや、ミヤはそういうのもなさそうだ…」
とりあえず、ヤヒコには報告は終えた。
月一でゆっくりですが、読んでいただいている方が居る限り、がんばって投稿します。
心の広いお方々、本当にありがとうございます。




