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水族館はスリル満点2

水族館の続きです。


 イトたちが行動を模索している頃、大水槽前では、犯人による要求が職員と来客たちに伝えられていた。


「いいか、大人しく我々の指示に従っていれば、お前達には何も危害を加えない。だが、少しでも反抗するようなものは殺す!いいな!!」

 シルバーの布で口元を覆ったリーダーらしき男が発言する。


「では、ここに居る者達は、入り口のホールへと移動してもらう。あそこの通路を真っすぐに進めば到着する。ホールに着いたら腰を下ろし、大人しく座っていろ。俺達の仕事が終われば、お前達は解放されるだろう。さあ、行け!!」

 リーダーの横に居た男が怒鳴る。


 緊張状態の客たちがぞろぞろとホールへ向かう通路へと向かいだす。

 列を成し、誰一人声を出さない異常な光景だ。


「おい、お前ら全員、携帯をこのフロアへ投げ捨てろ!!従わずにいる奴は、殺すからな。」

 リーダーの男が叫ぶ。


 それにより、客たちはポケットや鞄を探り、自分の携帯を大水槽前の床に次々に落とし、ホールへと続く通路の方へ進んでいった。


 通路入り口を通り抜けようとした男の背中に背負っているバックの中から、ピコンと言う電子音がした。


 静かな中でなった音は、響く。

 ホールへ続く通路の入り口脇に立っていた一味の男がすぐさま駆け寄り、男のバックの中から携帯を見つけ出すと、男の頭を勢いよく叩きつける。


 ナイフの柄の先を使って殴った様だ。

 携帯を隠していた男はよろめいて膝をつく。

 頭から血が流れた。


 それを見ていた者達が急いで携帯を床に投げ落とす。


「それでいい。」

 そう殴った男が言い放つと、通路入り口脇の壁へと戻って行った。

 怪我をした男の恋人だと思われる女が震えながら支え、通路の方へ連れて行く。



「やべ~な。」

「ああ…どうすっか。」

 遠目から、大水槽前を覗いていたミヤとヤヒコはその殺伐とした雰囲気に飲まれていた。


 10分後には大水槽前に居た客はほぼ移動し終えた。

 大水槽の空間にいた犯人たちが一か所に固まって話し始める。


「おい、あれ。」

 ヤヒコが見つめる先に、身なりの良い女性と小学2年生のくらいの少女が、犯人の一人に捉まれ、連れられてきた。


「あれ、あの人、元女優の…確か国会議員の奥さんになった人じゃないか?」

「そうだな、それであれは娘だな。顔が母親にそっくりだ。」


 彼らの狙いは、あの親子であったようだ。

 ミヤたちの位置からでは声は聞きとれない。


「おい、いいから早く旦那に電話しろ!!」

 犯人の一人が女性へと怒鳴った。


 女性が震えながら電話をしている。

 その横で大声に驚き、少女が泣き出す。

 犯人の一人が少女の頬を儂掴み、何かを言い聞かせている。

 少女の表情が恐怖に歪み、青ざめ、歯を食いしばり泣くのを辞めた。

 犯人が手を離し突き飛ばす、少女は尻もちをついた。


「クソッ。」

 ヤヒコの拳に力が入っている。


「なあ、この状況をさっき連絡した警察の人に知らせた方がいいかな?」

 ミヤが切り出す。


「そうだな。」

「よし。」

 次の瞬間、ミヤは体を乗り出して遠くを見つめ、数えだす。


「おい、気づかれるぞ。何やっている?」

 ヤヒコが尋ねる。

「あっ、ほら、犯人は全部で何人かな?って、報告するから。」

「ああ、中央に3人、女性と子供の横に一人、さっき入り口ホールへ客たちを誘導していった奴らが2人だから、6人じゃないか?」

 そうヤヒコがミヤに言った瞬間、


「残念、8人だ。」

 2人の後方から声が聞こえた。


 振り返ると、2人の男がミヤとヤヒコの後ろでナイフと銃を向けている。


 ミヤとヤヒコはゆっくりと両手を上げた。


 ***


 犯人たちの前まで連れて来られた2人は、膝をついて座らされていた。

 携帯は取り上げられて、警察に連絡はもちろん出来なかったが、犯人たちと女性との会話がよく聞こえるようになった。

 こんなに近くは、望んでいない。


「おい、先生様は出たのか?」

「いいえ、まだ。」

 強い口調で犯人の横で震えながら、電話をかけ続ける女性。


 やはり、議員と結婚して女優だったあの人だ。

 といことは、旦那はあの国会議員か…。


「あ、あなた!?つっ、繋がった。繋がりました。」

「かせっ。」

 どうやら電話がつながったらしい。


 犯人が電話越しの議員と話す。

「電話に出るのが遅かったじゃないか。お楽しみ中か?…俺か?俺は、水族館の立てこもり犯だ。そろそろニュースで流れている頃合いだからそう言えば分かるだろう。我々の目的はお前の隠し口座の金だ。あれを今から言う口座へ入金しろ。ここにお前の妻と娘がいる。やらなければ、どうなるのか分かっているな。」

 電話口で、怒鳴り散らす声がしていたが、しばらくして静かになり、交渉が成立したようであった。


「いいか、全額だ。30分の間に入金しろ。入金を確認したら、こいつらを解放してやる。」

 そう言うと、犯人は電話を切った。


「おい、今度はテレビ局だ。ここの駐車場にヘリを寄こせと電話を駆けろ。お前なら、できるだろう?」

「わ、分かりました。」

 元女優である彼女は何らかのツテがあるようだ。


 電話口の相手が電話をそのまま繋いでおくようにと奥さんに言っているのが聞こえる。

 しかし、犯人がヘリを至急向かわせるように言わせ、電話を奪い取り、切った。


 奥さんが床へとへたり込む。

 遂に泣き出してしまった。


「たくっ、うぜぇな。娘の方が利口だぞ。」

 そう犯人が横で言い放つ。


 ミヤもヤヒコも奥歯に力が入った。


「よっし!入金きた。」

 そうリーダー核の男がスマホを見て喜んだ。

 ハイタッチし合う犯人たち。


「さあ、次の段階に進むぞ。」

 リーダーの横の男がそう言うと、犯人たちは動き出す。


「ねえ、代わりを連れてくる?」

「いいや、こいつらで十分だろう。」

 犯人たちが、ミヤとヤヒコを見ながら話す。


 ミヤたちの方へ一人の男が来ると、こう言った。

「お前達には重要な役割が与えられる。さあ、上着をこれに着替えろ。」


 自分達が来ている上着を脱ぎ、渡してきた。

 帽子と、サングラスなどのアイテムも。

 黒のアイテムを渡されるたびに、相手はカラフルな色が増えていく。


「俺達に犯人役をやらせる気か!?」

 ヤヒコが叫ぶ。


「ご名答、察しが良いな。」

 リーダーの男が笑いながら言う。


「いいか、お前達は、正面入り口から出て、これから来るヘリの所までこの女どもを連れていけ。いいな。」

「俺達にそれをやらせている間に、お前達は逃げる気なのか!?」

「ああ、そうだ。客に紛れて、逃げる。だから、お前達が犯人だ。代わってくれてありがとな。ハッハハ。」

 犯人たちの妙に高いテンションに、着いていけなくなる。


 その時、電話の着信音が鳴る。

 奥さんが出ると、手首を縛られたままのミヤを犯人が奥さんの元へ引っ張っていく。

 ミヤは紙を渡され、喋るように脅された。


「国会議員の娘を誘拐する者だ。ヘリは用意したか?」

 ミヤは読み上げる。


「はい、水族館の駐車場へ降り立てるよう手配しました。あと20分後には着けるはずです。それよりも2人は、無事ですか?彼女達には何もしないでください。お願いします。」

 電話口の相手が酷く狼狽えている。


「フハハハ、ヘリを寄こしてくれてありがとうな。百舌鳥。」

 犯人が電話の主にそう告げると、奥さんが下を向いて険しい顔をし、娘の手を強く握った。


 犯人の一人が、テレビの報道をチェックしている。

F(エフ)、ヘリが到着したよ。」


「さあ、行け!」

 犯人のリーダーの男がミヤとヤヒコに強い口調で命じる。


 ヤヒコとミヤは女優親子を連れて、水族館入り口へと続く通路を歩かされる。

 彼らの後ろには犯人たちが武器をこれ見よがしに見せつけ、恐怖を煽ってくる。


 ミヤは腑に落ちなかった。


「おい、ヤヒコ。お前、いつもならこんな時は、静かにホイホイやらされるような奴じゃないだろう??なんで何もしないんだ??」

「いいから前を向いていろ。いや、話せ!犯人の服装や特徴を俺に向かって話してくれ。」

「え??…分かった。」

 ミヤは詳細を話されたわけではないので隠されていることでもあるのかと、少しフワフワした部分もあるが、ヤヒコに従い犯人について話した。


「リーダーらしき男だけど、脱いだら上は真っ赤なジャージだった。頭は坊主だし、意外。」

「俺に上着を渡してきた背の高い男は、紫のシャツだ。口元を布で隠していたけど、顎髭がある。髪は長かったんだな、後ろで縛って一つにまとめている。」


「止まれ!!」

 リーダーの男が皆の歩みを一度止める。


「お前ら、脱いだか?」

 犯人たちが出来ているとそれぞれ返事をする。

 脱いだものをリーダーが集めて、ミヤへと押し付ける。


「いいか、お前はこれを、客たちに見せびらかすように持て。お前はあそこに集められている奴らにこの服を着るように命じろ。それが出来たら、今度は、正面入り口からこの女どもを連れて外へ行き、ヘリまで向かうんだ。一つでもおかしな動作をして見ろ。ここに居る奴ら全員が人質だ、こいつらを無事に返してほしたかったら言う事を聞け。」

 ナイフを目の前でチラつかせ、脅してくる。


「行け!!」

 そう言われて、女優親子と共に俺達は歩き出した。


「残りのメンバーは、緑チェックに黒縁メガネ、青のTシャツに金髪、白シャツに黒の龍柄の奴は背が小さい、ネイビーのストライプシャツの奴はパーマを当てた茶髪。」

「おい、どうしたんだよ。」

「え?犯人の服装報告だけど?犯人はあと二人いたよな?」

「え?ああ、大水槽前から客たちの見張りで入り口ホールへ2人ついて行っていた。2人共170はありそうだったけど、ここにはもう…この分だと、すでに上着を脱いでいるな。」

「だな、あいつらが着ていた服をそこに集められた黒いズボンを履いた男たちに着させようとしているくらいだし。」

「俺達が、犯人にされてしまうのかな?これじゃあ、見分けがつけられないよ。」

「いいや、大丈夫。犯人たちは、上は脱げても下は履き替えられないでいる。黒のズボンに黒い靴を履いたものが犯人だ。上も下も黒い俺らは、逆に犯人に着せられたということ、区別しやすい。」

「そうなのか?」


 そうこうしているうちに、黒いズボンを履いている男達の所へ到着し、黒の上着やアイテムを渡し、事情を説明する。


「この場も犯人たちが見ています。命令に従わないと、ここに集められた全員が人質だと、脅されています。どうか、従ってください。」

 そう聞いた人たちは、険しい顔つきであったが従った。


「では、俺達は行きます。」

 そうヤヒコが言うと、犯人に仕立て上げられた男達の一人が、

「気を付けろよ。」

 と、声を掛けてくれた。


 四人は、犯人の指示に従い、入り口のカギを開け、外に出る。


 そこには、警察官のバリケードではなくて、一面ブルーシートで覆われていた。

 外から見えないように配慮されている。

 四人が固まって恐る恐る前進して行く。

 その時、その声は聞こえた。


「ミヤ!?」

 名前を呼ばれて、振り向くと、柱の影にイトが居た。

 隣には古賀と数人の警察官。


「イト…イト!!」

 イトが無事であったと、ホッとして名を呼び返した。


 その時、ミヤは思った。

 このまま捕まったら、イトに想いを伝えられないまま、刑務所へ入る事になるかもしれないと。


 アレを伝えなければ!!


「イト、俺ッ。」

 そうアレを言おうとした瞬間、

「突入――――――!!!!!!!」

 と、大きな声が駆け巡った。


 警察官が、開かれた入り口のドアへとなだれ込んでいく。


 数分後、

「確保―――。」

 という声が上がり、事件は幕を閉じた。


 その後、事件についての詳細を警察で話させられて、帰宅したのは夜だった。

 大変な一日となった。


次回は早めに投稿できるよう、頑張ります。


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