うきうき☆サークル合宿2
いつも読んでくださりありがとうございます。
横川たちと話ながら作業を続けていると、人数が多かったので準備はすぐに終わってしまった。
暇になった男衆は、誰が持ってきたか分からないビーチボールを取り出し、ふざけ始める。
輪になってボールを蹴り、下に落とさないゲームを始めた。
ミヤはサッカーが得意ではないので、必死に食らいつく。
周囲で見ている者達から、必死の様子に笑いが起こることもしばしば。
そんな姿がわんこの様で可愛らしいと揶揄われ、後輩にまで笑われている。
必死な本人は知らぬ存ぜぬ。
そうこうしているうちに、買い出し班が帰ってきた。
「せんぱーい!!守りましたよー!!俺、やりましたー。」
遠くから手を大きく振り、出水が叫んでいる。
おい、イトにバレちゃうだろう!?
俺は聞こえない振りをした。
肩を捕まれた。
振り向くとイトが居る。
「ちょっと、ミヤ!あの男にいったい何を言ったのよ!!ミヤに頼まれたって言って、ずっとSPされたんだけど。意味わかんないの。」
どうやらトイレに行く時でさえも偉い要人の如く、彼は周囲を警戒し、イトを守り続けたらしい。
「彼が背広を着て、サングラスをつけ、手にピストルを持つ幻覚が見えていたわ。」
と、イトが言っていた。
後ろで聞いている横川が笑いを堪えている。
「すまん、イトが変な輩に絡まれないか心配だったから。無事でよかった。」
俺は素直に謝った。
「お父さんかよ!!」
横川のツッコミが入る。
「まったく、私は心配無用よ。それよりも、彼、かなり女子に人気があるようだから、変な見方をされてないか心配なのよ。聞いて、ミヤ。しばらく私と一緒に行動してもらうからね。」
イトが怒りながらそう言うので、俺は
「ああ、うん。」
と嬉しさが滲み出るのを抑えて返した。
表向き、反省の姿勢であるが、内心はトランポリンの上で宙返り技を連発しまくるくらい嬉しくてたまらなかった。
ヤッター!イトから一緒に居ようって言ってくれたぞーー!
と、大いに舞い上がっている。
夕飯のBBQの間もずっと傍に居て、今、男共の泊まるコテージに集合し、食後のどんちゃん騒ぎ、酒盛りタイムへと突入しているのだが、そこでもイトの隣をキープだ。
幸せだな~。
そうひとり想いに浸っていると、イトがお酒の匂いが部屋中に充満して気持ちが悪いので、外の空気を吸いたいと言い出した。
当たり前のように、俺は後をついて行く。
部屋を出て、コテージのウッドデッキの縁へと、2人は腰を下ろす。
背後はワイワイと賑やかなのに対して、今は暗がりに2人きり、空を見上げれば、星が瞬き、2人のロマンチックなムードを演出する。
これは、絶好の告白チャンスなのでは!?
いざ、いざいざ、いざまいる~(歌舞伎風)
「あのさ、今日、ずっと一緒にいてくれてありがとうね。おかげであの一年生と特別な仲じゃないって皆に分かってもらえたみたい。」
告白しようとしたら、イトに先を越されたので、チャンスはお預けだ。
「お、おう。変な誤解をさせちゃったのは俺だから。その、なんだ、ごめんな。俺とじゃなくて、もっと他の女子とも楽しみたかったよな。」
自分の蒔いた種で怪我を負わせので、申し訳なくて自虐的になる。
「そんなことない、私はミヤと楽しめたから、それでよかったよ。」
そのイトの言葉にパッと晴れ渡る顔になってしまう。
もしかして、イトも俺の事を…淡い期待を抱いてしまう。
「あ、ずっと渡そうと思っていたのを忘れてた。昼間の買い出しの時に見つけてミヤに買ったんだ。待ってて。」
イトが室内へ何かを取りに行った。
え、何々!?俺に似合う土産物?
それともテニス合宿だし、キャップ、リストバンド?タオルかな?
あれか?恋愛的なお揃いの何かの小物とか!?そうなら、照れるな~テヘッ。
期待を胸に目を輝かせて待っていると、手元に渡されたのは、長いスティックな菓子パンだった。
「ン⁉」
へんな声が出る。
「え、それじゃなかった?この前、大学で話した時にこれも好きって言ってなかった?」
「ああ、好き―――」
このパンを好きだと言ってしまった俺は後悔した。
例の呪いが発動したのだ。
***
その頃の室内では。
「あれ?ミヤは?」
横川が栗野に聞く。
その後ろを丁度、出水が通りかかり、
「ミヤ先輩なら、糸島先輩とウッドデッキに出て話していますよ。」
と、教える。
「え!?あいつ等2人きりなの!?マジか、何か起きるかもな。用心せな。」
と、身構えた。
その頃、横川の予想は的中していた。
また口を滑らせたミヤに災いがやって来たのだ。
***
ミヤが口を滑らせた瞬間。
「お願い匿って!!」
と発しながら、ステップを使いウッドデッキの上まで登ってきた男達がいた。
その男達は所謂イケメンである。
「え?匿う?」
ミヤが驚いている横で、イトが目を見開き、彼らに指図する。
「そ、そこの窓が開くので、どうぞ中へ…」
男達はありがとうと言って急いで室内に入っていった。
すると、その直後、目の前にカメラを持った者達が息を切らし走ってやって来た。
「はぁはぁはぁ。あの、ここを誰か通りませんでしたか?」
息があがったまま、男の一人がミヤたちに話し掛けてきた。
今の奴らの事だよな??
そうミヤは考えたが、匿ってくれと言って逃げてきた者たちの声を思い出し、黙っていた。
イトが答える。
「誰も通りませんでしたよ。何かあったんですか?」
そのイトの答えに、男達はいいえ、何もないですと言って引き上げていった。
俺は何が何だか分からずいると、イトが興奮しながら話し出す。
「さっき駆け込んできたの、国民的アイドルグループの8サイクロンのメンバーだよ。凄い!!私達も中に入ろう。」
中に入ると、想像以上に、盛り上がっていた。
イケメンアイドルに湧く女子に、ミーハーな者達、嫉妬する男達。
まあ、恋人を作るチャンスと、この合宿に掛けている者も少なからずいるので、絶望したものもいただろう。
もちろん、俺も相手がアイドルとは言え、好きな子が他の男に本気でなくても好意を向けているのは嫉妬する。
イト、俺といた時よりもいい笑顔じゃねぇか…俺は泣くぞっ。
逃げ込んできたアイドルたちは、この近くで撮影していて、その付近のこことは別の旅館に泊っているらしい。
ここのホテルに泊まっている女性アイドルグループのSTB100%と会う約束をしていたが、入り口でSTBを張っていた報道陣に見つかり追い掛けられたのだそうだ。
ミヤはあまりアイドルには興味がなかったので、チビチビと離れて酒を啜り始めると、横川が来て話し掛けてくる。
「ミ~ヤ、たまにはお前の変な能力も役に立つんだな。芸能人連れて来るのはスゲーよ。」
「まあな~」
皮肉にしか聞こえない。
「ミヤ先輩ってそんな能力があるんですか?」
純粋に不思議そうな顔をして、出水が横から会話に入ってくる。
「ああ、意図して発動できない、厄介なヤツでかなり困っているんだが…ある。」
俺は、死んだ目をして目の前にあった透明な液体入りのグラスを手に取り、一気に飲み干した。
視界が歪む。
それからは、記憶にない。
誰かが、合宿だからと、度数のかなり高いお酒を持ち込んでいたらしく、それを自分のコップの水と間違えて、うっかり口にしてしまったようだ。
気づいたら、男所帯の中に寝かされていて、朝を迎えていた。
こうして今年の夏合宿は、不完全燃焼のまま終わりを迎えたのであった。
ストックが切れたので、投稿速度が激落ちくん。
頑張って執筆しますので、見放さないでください(´;ω;`)ウゥゥ
次回、水族館へ行く。




