プロローグ
私をこの世界に引き込んでくれたすべての本に感謝を
本を嫌いにならなかった昔の自分に感謝を
私は死んだ。
冬に冬眠を失敗したクマに首筋を何度も何度もしゃぶられ、肉の裂けるおぞましい音と雪の上の血の独特なにおいに囲ませて私は死んだ。
なんともおめでたい死に方だ。孤独に死んでゆく老人も多い中、地元の子供たちや猟友会のおやじさん、学会仲間達に見守られて骨になることのなんたる幸せか。最も、頭や腕や足の骨の一部はあの熊野郎の晩御飯に消えたかもしれない
遭遇は突然だった。私は自然や動物を研究する傍ら森の中に遊歩道を整備し動植物を解説することを生業としていた。
おやじさんは俺が北海道に移住したときからの付き合いで、森に遊歩道を整備するとなった時もいろいろ工面してくれた。頑固な性格だが彼の独特な空気感は私の夢に本気で立ち向かわせてくれた
サバイバルツールにオイルライターを含めるかで大ゲンカしたのも今となってはいい思い出だ
いまでは森に遊歩道ができ解説員も15人まで増え、人口7000人の村には少々立派なフィールドセンターもできた
娘さんは小さい頃に一度か二度会ったくらいで本州に引っ越したのでよく覚えていなかった。が茶髪で独特な雰囲気は間違いなくおやじさんの娘だった
なのでここに訪ねて来たときは心底驚いたーー結婚していることにも
今日は妙にツいていた。今朝は吹雪の予報だったのにからっきしの晴れになったし、エゾフクロウが昼間に飛んでるのは私が三十路越えまで生きてきた中で三度しかないし、キタキツネが積極的にこちらについていこうとするのは、もう何か月も見ていない。すべてが順調すぎたのだ
私はいつもの松林で、カラマツとエゾマツの違いを解説していた
「……この時この二つのマツを見分ける方法としt」
てと言いかけた時
娘夫婦の旦那さんが「あっクマがいる!」
と興奮ぎみに声を上げた
視線を向けると前方100mーー2mを優に超えるヒグマが佇んでいた
本州の人はクマの恐ろしさを知らないらしいことはわかっていたがタイミングが悪すぎた
クマはその巨体からは考えられないほど早い速度でこちらの気配を感じ取り
狙いを定めるような目をこちらを研ぎ澄ませていた
「落ち着いて、絶対クマの前で恐怖心を出さないようにしてください」
本物の冬眠失敗クマに動揺しかけたが、すぐに立て直した
しかし娘さんは恐怖心に打ち勝てなかったらしく
「あ……ああああっっあああ」
と奇声を流しているだけだ
その言葉に反応してヒグマは興奮し娘さんに襲いかかるこのままじゃ全員犬死だと考えた私は
「村に出てから猟友会にヒグマが出たと言え 野営はするな」
と言い残し冬用のダウンコートを脱ぎ捨てて猛スピードで娘さんのところに向かった
クマは刺突猛進が如く娘さんに突き進んでいる
ダウンコートを脱ぎ捨てる時オイルライターを引きずり出して火を入れる
まずい、このままじゃ間に合わない
娘さんとクマの距離が5mにいかないくらいになったとき私は娘さんをタックルして吹き飛ばした
すかさずオイルライターでマツの木を燃やそうとした瞬間である
いきなり目の前がまっ暗になり首に激しい痛みを感じたかと思うとそのうち全身が離れる感覚を味わう
穴に落ちていくような感覚
、無
・
。 落
:
知-
火
水
‘
.
草
、
気が付くと知らない町にいた
初投稿です。いろいろ至らぬ点あるとおもいますがどうぞよろしくお願いいたします。
この作品を読んで「面白かった」「また続きがみたい」「こんな作品二度と見るのは御免だ」
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