第1話:I♡factory
第1章、はいふぁくとりー編です。
零
わすれもの?
* * * *
一
…うん?
ここは…、どこだ?…工場?
折神尋騎が目を覚ましたのは、廃れた工場のような場所だった。
天井付近についている窓は殆どが割れ、窓枠にはツタが絡まっている。
辺りには古びた木箱や木材、鉄材やなにかの機械などが置かれている。
(…なんで僕、こんな服着てんだ?)
尋騎は自分の着ているTシャツを見て疑問に思った。
尋騎が着ていたのは制服のズボンに、自分が買ったとは考えられないようなセンスのTシャツだった。
具体的には、白地にでっかいフォントで「I ♡ FACTORY」と書かれている。
「I♡FACTORY…?」
下は制服着てんのに、なんで上はこんなTシャツなんだ?
(えっと、今日は学校行って、…、行って、普通に授業を受けたはずだ)
何故か今日の記憶が曖昧だが寝起きでまだ混乱してるのだろう。
尋騎はそう思って辺りの探索を始めることにした。
すると、
「こんばんわ」
という女性の声が、まるで尋騎の意思を読み取って、丁度思考の途切れたところを狙ったかのようなタイミングでかけられた。
尋騎はバッと辺りを見渡すが、人の姿は見つけられない。
(…今どこから声がした?)
「挨拶ぐらいしたらどう?」
声が響いているのかどこから声がしているのか、尋騎は掴むことが出来ない。
「…こんばんわ。どこにいるんですか?」
「ここだよ」
「わからないです」
「ここだって」
「…」
わからん。
さて、この声の主を推理してみよう。
まず、なんでこの声は、どこから聞こえてくるのかわからないのだろう。
1、単にたまたま
まあ、そういうこともあるかもしれない。
耳が悪くなったかな?
2、彼女がオバケだから
この声がオバケのものだったら納得がいく。
まあ、そうだったらしかたないよね。
…って、そんなわけあるか。
尋騎は自分で自分にノリツッコミしながら頭をガシガシと掻いた。
だめだ、全然思いつかない上に、馬鹿な意見だ。
お手上げ。本当にオバケだったりして。
…ちょっと怖くなってきたぞ…!
「ふふふ」
まただ。また、この声だ。
「ごめんね。ちょっと怖がらせちゃったかな?こっちだよ」
今度はちゃんと聞こえた。
丁度、尋騎の真後ろの方だ。
「改めまして、こんばんわ」
そこには、ショートカットの女性が立っ…
「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」
悲鳴をあげるやいなや、尋騎は駆け出した。
「…あれ、なんで逃げられたの?」
後には、カッコつけて登場しようとしたが、失敗してしまった、憐れな女性が残った。
廃工場は、皆様のイメージするものでほとんどあっていると思います。そんぐらいベタな工場ですが、すこしばかり大きかったりします。
ちなみに舞台は広島のあたりです