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ヒーローアンドヒーロー  作者: くろすけ
1/11

序章

 一

 ピーポーピーポーという音が聞こえる。ここは、どこなのだろう。


 折神尋騎(おりがみひろき)が目覚めたのは、けたたましい音を鳴らしながら走る救急車の中だった。

 彼は下半身だけ制服のズボンを履いており、上半身裸の状態で仰向けにねむらされている。


「血が足りない!あちらにちゃんと連絡して…」


 頭の上で誰かが何かを喚いているが、尋騎にはその意味を理解することができなかった。


 救急隊員達は、どうにかして尋騎の命の鼓動を延ばそうとしていたが、それも、もうすぐ意味を無くしそうだ。


 尋騎は黒い靄がかかったような意識をさ迷わせていた。


 そういえば、文夏に何かを頼まれてたんだった。なんだっけ…?


 彼のお腹には大ぶりのナイフが突き刺さっている。誰がどう見ても致命傷だった。


 そうだ、先輩を誘って本屋に行こう。先輩の好きな人の新刊が出てたんだよな…。


 ゴポッという音とともに、尋騎の意識にかかる黒い靄がいっそう重くなっていった。


 じん…にせん…とい…に…


 ………、


 ああ…、なんだか、眠くなってきたな…、


 …、



 ……、




 ………、






 …………………、













 キィィィ!


 急ブレーキ音がし、ガタン!と急に車が止まった。


「なんです!?どうしたんですか!?」


 突然のことに慌てふためく隊員が運転席に聞くが、返事はない。


 何が起きたのか、不穏な空気が漂う中、バタン!と後ろの扉が突然開いた。


 そこには、一人の女性が立っていた。



「こんにちは。迎えに来たよ」



 折神尋騎の意識は深い、深い、闇の中へと落ちて行った。






 二

 折神尋騎が自分の力が異質であることに気づいたのは、小学二年生のときだった。


 彼には、心の動きを“視る”ことができた。


 正確には、「感情を色として視る」ことができたのだ。


 人を見ると、首元にうっすらとだが、その人が考えている感情の色を見ることが出来た。


 だから尋騎は、魂は首元にあると思っていて、何故人が心臓にあるなどというふうに思っているのか、理解が出来なかった。


 自分と家族の色は見ることが出来なかったが、そういうものだろうと思っていた。

 親にこの能力のことについて聞いたこともあったが、親は、子供の戯言だと思ったのだろう。聞き入ってくれなかった。


 そんな彼も小学二年生のとき、もはやなんの話だったかも忘れてしまったが、自分の持っている力が、他の人間にはないものなのだと知った。


 彼は自分の力が特別だとわかったとき、周りの子供たちに大層興奮した様子で自慢した。


 しかし、返ってきたのは彼が期待した、尊敬や畏怖の眼差しではなく、異端者への暴力だった。


 意味がわからないものは排除する。

 当たり前の人間の心理のもとに、彼は自分の能力が特別なんかではなく、異質なのだと知った。


 それ以降、彼はこの能力を人に話すことは無く、自分の特技のようなものだと思って生きてきた。


 この力は特別なんかじゃない。ただ、人間観察が得意なだけだ。


 だから僕は、異端じゃない。


 そう思って、彼は17年間生きてきた。




 そんな日々も、終わりを告げる。

読んで頂きありがとうございます

「ヒーローアンドヒーロー」始めたいと思います

至らぬ点もあるかと思いますが、どうぞ宜しくお願いします

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