三島駅
気がつくと、俺たちは知らない街の駅前に立っていた。よく見ると、三島駅と書いてある。俺たちがそれに気づいた瞬間、鮫の歯から媛の声が聞こえてきた。
〈聞こえるかお前達。お前達が来ている伊豆の三島では近頃、偽天道と呼ばれる母悪霊から子悪霊が大量に溢れ出て畑を荒らしている。厄介なのは、子悪霊は母悪霊が倒されない限り死なないことだ。おまけにどんどん犬畜生のように増殖し続けている。お前達には母悪霊を退治してもらおう〉
「俺たちに倒せるのか?」
〈炎輝と萩也にとっては初戦だから吾がある程度指示しよう。奏太郎、お前は自分で頑張れ〉
「い、磯部媛、冷たいな・・・」
〈さぁ、行け!!〉
こうして、俺たちの初戦は始まった。
感覚を研ぎ澄ませて周りを見渡すと、三島駅の改札内から異様な雰囲気が漂っていた。おまけに、奥から大量の小虫のようなものが放出されていた。
俺たちは急いで入場券を買って中に入り、その雰囲気の元へと向かった。地下通路への階段の途中で、何人かのお婆さんが腰を抜かしていたので理由を聞くと、誰もいないのに唸り声が聞こえるのでここまで逃げてきたという。途中、蛍光ペンのような若緑色のズボンを履いた奏太郎くんが階段から転がり落ちちまった。
「大丈夫かい?」
「あ、ああ・・・」
「なら、立ち上がって行こうぜ!」
奏太郎くんも再合流し、地下通路の奥へと向かうと、エスカレーターの所に奴はいた。
錆色のドームのような甲羅に黒い無造作な斑が何個もついている吐き気を催すような外見の、偽天道の母悪霊がこっちを向いていた。どこが顔なのかは全くわからないが、なんとなく視線を感じるので、おそらくこっちを向いているのざろうと見当がつく。
近くで攻撃すべきか、遠くから狙うべきか。
悩んでいると、鮫の歯から媛の声が聞こえた。
〈ここは狭いから奏太郎と炎輝は能力を使うべきではない。萩也、お前は能力を使って良い。お前の能力は山だ!〉
「山ぁーー!?山の能力はどう使うのか?」
〈鮫の歯に念を込めて土塊を大量に放出し、彼奴を向こう側へ押し出すのだ。他にも、押しつぶすこともできるが、ここでは高さがないので無理だ〉
「なるほど。じゃあ、やるしかねぇ!」
萩也は右足で地面を蹴りながら鮫の歯から土塊を大量に出し、山を作り上げた。しかし、動かし方を知らない。
「なら、、オレが風を起こして押し出そう!」
「そ、奏ちゃん!?」
「思いついたんだ。山を押し出すには風しかないと」
「なら、任せるよ」
「ハァーーー!!!!!」
目を向けられないほど強い風が吹き、地下通路の端っこへと悪霊は飛んで行った。
「もういっちょ!」
萩也が掛け声をあげた。呼応するように奏太郎くんは叫び、山が曲がりくねった道を進んでかなり向こうまで進んで行った。でも、これには大きな誤算があった。