大広間
気がつくと、僕は畳が一面に敷かれた大広間にいた。ひとつの学校の生徒全員が座れそうなほどの広さざ。ふと横を見ると僕の親友、戸倉炎輝が寝転がっていた。
「炎輝!起きろー!!炎輝!炎輝ー!!」
揺さぶっても起きない。そういや炎輝は寝たら中々起きなかったっけ。不安になった僕は一層強く揺さぶる。
「ここは、どこなんざよぉーー!!」
叫んでも、返事はない。この知らない場所に来たのは、あの光った化石のせいかな?と思いながら、しばらく時間が経った。
「深く昼寝していたようだな」
「なっ!?君は誰ざ?」
「吾は磯部媛。お前達は選ばれたのだ」
「な、何に!?」
「鮫の歯の勇者だ。お前達が鮫の歯を見つけたのは偶然ではない。遥か昔から運命付けられていたのだ」
「ぼ、僕なんかで大丈夫かい?」
「鮫神様の導きに嘘は無い」
「じゃ、じゃああの三角の化石は・・・」
「そう、鮫の歯だ」
僕は全く信じられなかった。あの化石にそんな霊力があったなんて。
「それより、炎輝は大丈夫か?」
「お前の隣の少年なら命に別状なしだ。もうすぐ目覚める。」
「よ、よかった・・・」
ふと、なぜかあの化石がどうなったのか気になった。その瞬間、眩い光とともに左耳に重りがついたような感じがして、左耳を触ると三角形の化石がピアスにくっついてた。
「うゥ〜耳が重い〜〜」
そう言って炎輝も目覚めた。
「炎輝、右耳を見ろよ!」
「うわっ!あの化石ざ!!なんで右耳に!?」
「ここに化石も一緒に来たのはなんでかよくわからんけど、僕のは左耳にあるから、たぶん場所が被らないようにしてるんざろうな」
「なるほどな。でも、ここは一体どこなんざ?」
「ここは飛騨の鮫山だ」
「飛騨!?結構遠くまで来ちまったなァ・・・」
「近頃、全国各地で封印が破られ、悪霊が大量に出現している。お前達には討伐に行ってもらわなければならない」
「そ、そんなの無理ざよぉ〜」
「吾も鮫神様に仕える巫女として願い続けたが、全て駄目になってしまった。だからお前達鮫の歯の勇者は導かれたのだ。お前達は産まれながらにして素質があるのを鮫神様は見抜いていた」
「選ばれた以上、やるしかねェな!」
「うん!!」
炎輝の凄まじく何かを決心したような顔を見て、思わず僕も同意した。
「お前達は初めてだろうから、もう1人助っ人を用意している。奏太郎、来い!」
障子の奥から、いかにも自信なさげで根暗そうな少年が現れた。
「オ、オレは浪岡奏太郎。オレも突然鮫の歯を拾ってここに連れてこられた。たぶん今から飛ばされる場所でも磯部媛はアドバイスをくれるだろう・・・」
「「よろしくな、奏太郎!!」」
「あ、ああ・・・」
なんとなく奏太郎はかわいくて弄りがいがあると思った。
「今からお前達には伊豆の三島に行ってもらう。勝ったらコロッケでも食べようか」
「「「おうおう!!!」」」
こうして、僕らは遥か遠くの三島へと旅立った。