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鮫神伝  作者: アヤトさん
尾巻章
1/17

入道雲のカケラ

ーあぁ〜、また雨だ。しかも雷まで鳴ってるし。

午後の授業中、同級生の何人かがそんな声をあげる。うるさいなぁと常日頃思っているが、雷が近づくにつれて声が小さくなっていくのはなかなか見ものだ。校則では授業中にスマホを触るのは禁止なのだが、あいつらは懲りずにまたスマホを触って何やらしている。昨日も今日も、毎日ひとりずつスマホ関連で指導を受けている気がする。全く、所謂華の高校生も落ちぶれたもんだ・・・と思っていたら、脳裏にあのの顔が浮かんできた。にしても、なんで最近あの娘のことばかり考えちゃうのか?ただの同級生のはずだと思ってたが、違うのか?



その娘の名前は撫養むや琴音ことね。中学時代からの同級生だ。撫養という苗字は"むや"と読むらしいが、初めて知り合った頃は中々読み方が判らず、間違えて"なでよう"って何回も呼んでクスクスと笑われたっけ。結局向こうが「琴音でいいよ」と言ってくるまでどれぐらい掛かったことか。今でも話すことは多いが、高校以降はなぜか席が遠くなってしまい、以前のようには授業中に意見交換できなくなった。はぁー、なんでこんなに頭の中がいっぱいになるんだ〜?



あっ、いけねぇ、自己紹介忘れてた。オレの名前は浪岡なみおか奏太郎そうたろう尾巻おまき高校2年、考古学部員だ。話すのは面倒いからこの辺にしとくか。あーっと、もう下校時間か。今日傘忘れちまったし、どうしようかな。

「奏太郎、どーしたの?」

「ん?琴音?いやぁ今日は傘忘れちまって、どうしようかと思ってて・・・ 」

「奏太郎・・・よ、よかったら、私の傘に入ってかない?」

「えっ!?マジ??」

「私は別にいいんだけど、まさか照れてるんじゃない?」

「チ、チッゲェよ!!」

妙にからかってくるが、此奴今日はどうしたんだ??

「まぁ、いいじゃん入ってよ♪」

「あぁ!」

とりあえず、今日は琴音と一緒に帰ることになった。さっきの遣り取りでどれ程時間を食ったのか、周りにたくさんいた筈の同級生はもういなかった。しかし、オレの心も知らずに楽しそうな琴音と、あちゃー、周りに聞かれちゃったよ・・・と思う自分が教室の片隅にいた。



下駄箱を出た後、野球部共の練習が出来ない悲痛な雄叫びを何度も聞きながら長い道を正門へ向かった。正門の外、愛瀬まなせ川に架かるらくだ橋を渡ると、突然琴音の奴がオレの手を引っ張って走り出した。連れられた先には、何やら人集りが出来ている。そこには、目を疑うような光景があった。そう、巨大な鮫の歯がまるで今にも襲い掛かって来そうな程に生き生きと並んでいたのだ。水族館には琴音に連れられて何回か行ったことがあるが、ここまで大きな顎は見たことがない。

「こ、これってメガロドンに違いないね!!」

「メ、メガロドン?」

「わぁー、こんなとこで実物が見れるなんて!!奏太郎も見といたほうがいいよ!!」

「わかった・・・ってお前なんで柵通り越してんだ!」

驚くべきことに、好奇心の方が勝ってしまった琴音はオレを道連れに、今まさに道を踏み外そうとしていた。

(あちゃー・・・明日には拳骨喰らうぞ・・・)

身体が言うことを聞かず、オレも鮫の歯の前に行ってしまった。



生物に詳しくないオレでも、思わず見入ってしまうほど歯が整って並んでいる。その中に何故か二つ、光る歯が立っていた。

「おぉー!この歯光ってるーー!!わたしはこっち持ってこー!!」

「お、お前ガチで言ってるのか?」

「別にいいじゃん。ほらどーぞ!」

結局、大きな鮫の歯がオレの手の上に載せられちまった。

「これで奏太郎とおそろ♪おそr・・・」

なぜか、急に意識が遠のいて行った。

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