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06. 幸運と騒乱の運び手

 幼なじみ達を巻き込まないよう、力を抑えて――


「オラァッ!」


 ダガーから放たれた衝撃波が金属の鳥かごを襲い、何本かの鉄格子が切断された。


 さらに三発。


「ウラッ! ドラッ! ゼヤァッ!」


 これで鳥かごに出口ができた。


「その剣撃を飛ばす能力、すごいですね……」


 鳥かごに閉じこめられていたエクスタが、そんなことを言いながら外に出てくる。


「わーい、ファーちゃんありがとーっ!」


 次いでノエルが出てきて、俺に抱きついた。


「あっ、ズルい!」


 エクスタにも抱きつかれた。


 フハハハハ! よいぞ、よいぞ! もっと体を押し付けるがよい!


 俺は今、最高の気分だった。

 まあ、足元にある商人の首なし死体が、そんな気分も盛り()げてくれるわけだがね……


「それにしてもファー様がこんなに強いなら、『竜血』のスキルも取得できるかもしれませんね」


 ん……、『竜血』のスキル?

 不思議に思った俺は、エクスタに詳しいことを聞いてみる。


「何それ?」


「えと……強い竜を倒した者が授かることがある……能力(スキル)……ですかね……? 他の強い魔物を倒したり、邪神を退(しりぞ)けた褒美などで、似たスキルを女神から授かった英雄もいるそうですが……」


 へー。


「――もしファー様が『大魔導』みたいな強い職業を得ていれば、その能力を取得できないか試すのもありかもしれない……とお婆様が話していたのです」


 ……そんなことを考えてくれていたのか。


「ただ手に入れるには、上位の竜と正面から戦い、倒す必要があるので……。『貴重なオスフェアリーが死ぬ可能性のある手段はとりたくない』と多くのフェアリーが反対していたようですが」


 なるほどね……


「このスキルには、いくつかの効果があるんですが、そのひとつが繁殖能力の向上なんです。……多分、媚薬を飲まなくても一晩に十人ぐらいのフェアリーを相手にできる程度には上がるはず」


 彼女が俺を見る。


「……正直、ファー様の力は、まだ上位竜を倒せるほどではないと思います。――ですが、魔物などを倒し鍛えていけば、その力は、もっともっと上がっていく……」


 期待する目をした彼女が、問いかける……


「ファー様……、『竜血』のスキルを手に入れるため、戦士の能力(ちから)を鍛えてみませんか?」


 それに俺は――


「良いぞ!」


 よくわかんないけど、なんか楽しそうだし、うなずいた。


「エクスタも協力してくれるんだろ?」


 彼女はにっこりと笑う。


「もちろんです! 集落の皆は心配ですが、あちらはお婆様がいれば大丈夫でしょう。私はファー様と共に歩みます!」


 おっしゃ!


「話は決まったな! じゃあ殺せる魔物を探して旅立とうぜ!」


「了解です! ……ただ、その前に旅に必要な荷物をそろえないと」


 そのエクスタの言葉に応じるように、ノエルが声を上げる。


「とりあえず、ここにファーちゃんにプレゼントした剣はあるよう!」


 パタパタと飛んでいって、死んだ商人の内ポケットから俺の剣を出してきた。


 何で知っているんだ……


 ……まあ、俺が目を覚ましたときには、すでに彼女達も起きていたからな。

 商人と会話して、その情報を得ていたのかもしれない。


「ん……? ノエル、それは、なんですか?」


 エクスタが何かに気がついたようだ。見るとノエルが剣のほか、金属のカードを持っていた。

 カードには、蛇が自分の尾っぽをくわえているようなマークがついている。


「なんか剣のベルトに絡まって、一緒にポケットに入っていたよう!」


「うーん……これは……『ウロボロス』と呼ばれるマークですかね……」


 エクスタは首をかしげていたが――


「カードもいいけど……! とりあえず旅の荷物を商人さんの荷物から拝借しようよう! 今なら取り放題だよう!」


 ノエルはお構いなしに、金属のカードをポイーっと投げていた。


「探せば多分、ヘビ花火もあるよう!」


 彼女の言葉に、俺も金属のカードなどどうでもよくなる。


「よっしゃ、二人とも! ヘビ花火を持てるだけ持って旅に出るぞ!」


「わかったよう!」

「ええっ……?」


 ノエルが右手を突き上げる横で、エクスタが戸惑いの声を上げた。


 そうして三人でしばらく家捜しを続け、ヘビ花火や他の役に立ちそうな商品を見つける。

 俺が自分の家から持ち出した荷物も発見し、商人の家をあとにしたのだ。


 まあ、途中、ノエルが変なボールを発見し魔力を込めたところ、それが炎上。

 彼女が(あわ)てて手放したそれを、破裂でもしたら大変と、キックで遠くに蹴飛ばしてやったんだが……

 そこに可燃物があったんだろうな……、家の中の燃えやすいものに次々と火が燃え移ってしまい……

 転げ出るように外へ飛び出した俺達の後ろで、変な魔法のアイテムがあったのか、大爆発を起こし家が吹き飛んでいたが……


 だが、俺は気にしていない。


 爆発で、うまい具合に火も(ついでに家も)消えた。


 フェアリーは幸運の運び手、幸運の象徴といわれる種族だからな。

 きっとこの不幸な事故にも何か深い意味があったのだろう!


   ◇


「うーん……『家』ってより、『小さな山小屋』……って感じだったか」


 あらためて商人の家を思い起こしての感想。あの家は山の中に建てられていた。

 周囲には道もなく……、木々の間を歩いて、出入りしていたのだろうか?

 前世にあったような、GPS機能がついた電子地図でもないと迷ってしまいそうだ。


 不便ではあるが、奴隷の売買とか裏の商品とか、そういう後ろぐらい商売の隠れ家としては最適なのかな。


 その山小屋から出た俺達は今、遠くに見えた街道らしき場所に向かい、山々の上空を飛んでいた。


 俺のひとり言を聞いていたらしいエクスタが、うなずく。


「ええ、『山小屋』とか『隠れ家』という感じでしたね……。あの家は小さく、周囲から隠れるように建ってましたし」


 チラッと、山小屋があった方向を見る彼女。


「ここの場所はどこだかわかりませんが……、あの商人はファー様が目覚める少し前、私達を二ヶ月ほど眠らせ、その間にここまで連れてきた……みたいなことを言ってましたので、私たちの集落からも、かなり遠い場所だと思います」


 彼女の言葉に、そういえば俺が眠る直前、商人に『また二ヶ月後』とか言葉をかけられたなと思い出した。


 彼は『寝てる間、食事も取らないで良くなるし、排泄もしなくなる……とっても便利な()()の薬』を持っているとも言っていたし。

 それを飲まされたのかもしれない……


「うーん。……っつーことは、フェアリーの集落からの追っ手と鉢合わせ……なんて可能性は、だいぶ低くなるのかな?」


「多分……」


 エクスタがうなずいてくれた。


 ずいぶんと良いニュースだ。


 探し手が近くにいないなら、オスであることを隠すなんて面倒なことをしなくて良い。


 ニヤニヤしていたら、もう一つニュースが飛び込んできた。


「ファーちゃん、ファーちゃーん! やっぱり、あれ小さいけど道だよー! なにか人っぽい影があるもん!」


 ノエルからだ。

 目指していた山のふもとにある街道らしき場所。そこが人のための道である可能性が高まったのだ。


「よっし、二人とも! 空の魔物やトンビ、タカに気をつけて進むぞ! 今日は人間の里で一休みだーッ!」


 俺の()け声に、「「オーッ!」」というノエルとエクスタの応えが返った。



Side: 謎の男達


 ファーライン達が商人を殺し、その場所を立ち去って二日後――

 吹き飛ばされた小屋の残骸……その周囲に数人の男達の姿があった。


「隊長、ここで会う予定だった我々の仲間……その死体()()()ものを確認しました! 死体の状態がひどいので確証は持てませんが……。彼とともに、受け取るはずのものも爆発などにより失われているようです!」


「何だと……。どういうことだ!」


 腹立ち紛れに、報告したものを怒鳴るスキンヘッドの男。


「おそらく事故ではないでしょうか。我々が頼んだものの中には、可燃性のものや、爆発するようなものもあったので……」


 部下の報告に、スキンヘッドの男は「クソッ!」と悪態をつき、自らの爪を噛む。


 禍根を残さぬよう、邪魔な大人のエルフを()殺しにし、生け贄に使う子供を大量に確保する。

 そのために用意させたアイテムが、全て失われていた。


 舌打ちをしたスキンヘッド。もう他の準備は終えてしまっている……

 彼はしかたなしに決断を下した。


「お前ら、計画を修正するぞ! 今の手持ちのアイテムだけで事を起こす! どうせエルフ達は殺す必要はない。生け贄用の子供だけ確保する!」


「「「はっ!」」」



 ――男達の計画は、この数日後に実行された。

 子供を奪われ、数人の同胞を殺されたエルフ達。彼らは当然のように、男達の敵となる。


 ファーライン達が小屋を爆発させなかったら、皆殺しになっていたはずの、とある集落のエルフ――


 彼らの軌跡が、幸運と騒乱を運ぶ三体のフェアリーと交わるのは、もう少し先のことだ。

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