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第十九回

英雄百傑

第十九回『龍将帰陣し陣頭に立ち、気運挟んで賊軍を破る』


―あらすじ―


昔々、巨大な大陸を統治する皇帝がいた時代。


頂天教の教主アカシラの怪しげな術により、

大敗を被ったキレイは山道の側面林道の獣道へと落ち延びた。

一方、山の麓では、タクエンの説得と、ミケイの進言で

重い腰を動かしたジャデリンを大将とする援軍5000が

キイ率いる後詰め部隊1000と合流し、妖元山の二路を

それぞれ上り始め、ついに官軍と賊軍の決戦が始まった。


数で勝る官軍を見て、頂天教の総大将であるアカシラは

神出鬼没の奇襲攻撃に打って出た。策は見事に功を奏し、

中央路より上ってきた先見斥候足軽部隊の

ミレム、スワト、ポウロの三勇士率いる足軽隊500が襲われ、

同時刻に西路より先を急いでいた総大将ジャデリンの3500が伏兵に襲われた。


あわや敗戦必死と思われた官軍だったが、歴戦の猛将ジャデリンの

獅子奮迅の働きにより、西路の官軍本隊は

多くの被害を出したものの、三方から迫る伏兵を蹴散らした。


一方後詰めを任されたスワトは、非道な賊軍の無礼に怒りをあらわにし

かかる500の賊兵をなぎ倒し震え上がらせ、人間技とは思えぬ

殺戮を行い、賊兵は方々に散り退散した。


思わぬ修羅の業を見た後軍のミケイは、眼を疑ったが

豪傑を後陣へ運ぶと、気丈に敵陣へと兵を進軍させた。



―――――――――――――――――――――



頂天教本陣 ミレム隊



修羅となったスワトの武勇を未だ知らぬまま、

進軍を続けていたミレムとポウロ率いる400の足軽隊は

頂天教軍の本陣、妖元山山頂付近の採石所に肉迫していた。

しかし後詰を足止めに使い、駆け足で上っていたため

遅れて駆け上がってきたものも多かったため、少し行軍を待って

統率できるように兵を整列させると、ミレムは陣の様子を見ていた。

灯り無く、静まり返り、何の物音もしない陣を見て

ミレムはおかしいと思ったのか、ポウロにたずねる。



「兵は落ち着き、いつでも敵を誘い出す準備はできているが、暗くなるというのに灯り無く、守備する賊軍の敵兵も見えないな。むう、ポウロどう思う?」


「戦に重要な本陣をがら空きにするとは…」


「ジャデリン将軍の隊へ兵を割いたのかのう?」


「ふふふ・・・しかしミレム様、これは好機じゃないですか」


この時、ポウロの功名心に火がついた。

口はニンマリと緩み、悪ぶれた表情と口調で言ったポウロの言葉、

それをミレムが理解できるはずも無く、キョトンとした目をポウロにやり

何のことだかわからないといった風に再び尋ねた。



「好機?何のことだ?説明してくれ」


「つまり・・・」


ポウロは再び口をニンマリと緩ませると、

少しだけ眉をピクッと動かして緩やかにミレムに話し始めた。


「後陣のミケイ、キイ将軍は伏兵で足止めを食らい動けませぬ。おそらく陣容を見るにジャデリン軍も足止めを食らっているはず。悠々と動けるのは我ら足軽隊のみ。そして目の前に広がる無人の本陣。ふふふ、今ここで敵陣に官軍一番乗りの旗印を立て、陣を奪えば我らの武功は計り知れませぬぞ」


「ば、ばかな。策を忘れて抜け駆けをせよとは。ジャデリン将軍は元より、策を反故にされたミケイ将軍が怒るぞ」


「陣を奪って功を成せば文句は言えませぬ、クックック。ミケイとジャデリンの鼻を明かして一気に征伐の武功を上げれば、皇帝もさぞお喜びになり、我らに彼ら以上の高級官職(特別権限を持つ官僚)として召抱えがあるやもしれませぬぞ」


普通であれば、作戦及び進軍の変更は一介の将がやってはいけない事で

大将か、直属の上官の許しが無ければ死罪になるのが当たり前であったが、

この大陸の帝国の法には武功を立てれば罪と帳消しという暗黙の了解があった。


ポウロは楽花郡の田舎暮らしに飽き飽きとしていた頃に、国の法律、

特に軍法を良く学んでおり、ポウロの言は欲丸出しの功名にくらんではいたが、

時代の理に適ってはいた。


なぜなら、高級官職になった人物の多くが

賊討伐の武功によるものだと言われるからだ。



「だ、だからといって間違えば死罪になるぞポウロ!」


「また臆病の虫が騒ぎましたか」


「なんとでも言え!そのような大事、俺にできると思うか!」


「帝の血族の者ならできるはずでございましょう!?」


「えっ!?」


大声でそういったポウロは、未だ煮え切らないミレムに向かってそう言うと

その大声に後ろで止まっていた兵士達は騒然とした。



「(…ぽ、ポウロ、噂程度なら話は済むが、こう公に言ってしまっては…)」


「ふふふ・・・」



ザワザワザワ・・・


以前から帝の嫡流(子孫)という官軍に入り噂を兵士達に流していたとはいえ、

帝の血族と兵士の前で言うことは、噂の度を越し、公として認めることになる。

疲労の色の見える足軽達も、それを聞くと顔を強張らせ、真剣になった。

噂には聞いていたが、まさか本当の事だとは思わなかったからだ。

狙い通りに動揺する兵士を見てポウロは、今度はやんわりとミレムに話しかける。



「ミレム様。どんなに素晴らしき草花も水と土が無ければただ枯れるのみです。どんなに便利な農具と耕人がいても、水と土がなければ実りある作物は育つはずがございません」

(優れた君主でも、名声と領土が無ければ衰退する。優れた豪傑や参謀が居ても、人馬と、それを養う領土が無ければ召抱えられず。国は成り立たないだろう)



「・・・はっ!!」


その言葉の真意を理解し驚くミレムは、今まで焦燥の色に染まっていた顔を

まるで憑き物が落ちたように、野心に満ち満ちた顔へと一変させた。



「帝に仕える高級官職になるか、一介の義勇の部将で終わるか。転機でございますぞ!ミレム様!」


「ふ、ふふふ。ぐふふふふふ。そうだのう。そうじゃ。そうじゃ俺は帝の血族じゃ」


「さあ、ご指示なさいませ」


まるでポウロに洗脳されたように、帝の血族になりきるミレムは

ポウロの最後の進言の一言を受け取り、野心にゆがんだ顔を

一度キリッと立て直すと大きく息を吸い込み、高々と叫ぶようにこう言った。




「足軽隊よ良く聞け!黄州四谷郡官軍属、関州楽花郡盛草村義勇の将ミレムは今、策を反故にする!臨機を見、義によって悪辣非道の賊の本陣を奪い取り戦勲武功を立て陛下への忠節の表れとする!異論、反論など許さぬ!我は帝の血族なるぞ!!帝のご威光を見せつけよ!続けーッ!!」


「オーーーーッ!!」



こうしてポウロの野心に出し抜かれたミレムは『帝の血族の軍』という鼓舞に

士気煌々、いきりたった足軽隊400人を連れ、もぬけのから同然となっていた

敵軍の本陣、採石所へと攻め込んだ。



柵をなにともせず上りぬけ、兵士達は城門を空け、

ミレム隊は足軽隊を方々に侵入させると速攻で陣の各所を制圧した。

流石に殆どの兵が居なくなった陣を奪取するのは容易く

隠れていた守備兵の殆どが方々の体で逃げ出していった。



「やったなポウロ。あとはミケイ隊に連絡の星升火矢を上げればよいことじゃ」


「ふふふ、本陣奪取一番乗り。笑いがとまりませぬな・・・」


足軽隊が陣を奪取していく様子をニヤリと恍惚の笑みを浮かべ

見つめる二人は、気づいていなかった。

賊軍の将ブラツク率いる黒い甲冑の兵が周りを取り囲んでいることに。



ジャーン!!ジャーン!!!


「ワーッ!!ワーーーッ!!」


けたたましいドラの音と共に黒い甲冑を着たブラツクの兵500が

まるで陣の回りを取り囲むように現れると、勝利を確信していた

足軽隊400は浮き足立ち大混乱に陥った。



「ほ、本陣の周辺から賊兵だと!?な、なんだとそんな気配は無かったはず!どこから来たと言うのだ!」


この光景を見て、額にたらりと脂汗をかき始めたポウロは

今まで功名の笑みを広がらせていたとは思えないほど、

焦燥に煽られ、動揺を隠せずに入られなかった。

己の功名心がしたこととは言え、ミケイの策を反故にし

帝の血族をミレムに名乗らせて敗北すれば、死罪は元より

三族(当人妻子、父母、兄弟)皆殺しの憂き目に会うと思うとポウロは、

その場にヘナヘナと倒れ怖気づいてしまった。


しかし人間の生への業は侮りがたく。

それでも生きようと必死に逃げ支度をするポウロはこう言った。



「と、取り囲まれただと!!こ、このままでは策を反故にし、空陣と思って進軍させた責めを負うのは必須・・・こ、ここはミレム様、ここは逃げまし・・・」



「黙れいポウロ!俺は帝の血族ぞ!ここで耐えてこそ功績もあがるというもの!お前は敵を見ながら俺に逃げろとでもいうのか!帝の血族の俺に!」



「え!?どう考えても立て直せませぬぞ!血路を開いてお逃げを」


「黙れい!!!これ以上言うと斬り殺すぞ!!!」


剣を抜き、眼をグッと開いたミレムの顔を見てポウロは悟った。

ミレムの思い込みの激しさが災いしたのか、自分の進言で、

軟弱だった男の心が、まるで本当に帝の血族と思えるほどに

強く、雄雄しくなってしまったのだ。



「ああ、野心に己を飲まれたか・・・私もこれで最後か」


ポウロは愕然として己の最後を予感した。

しかしミレムはへたり込むポウロを力いっぱい持ち上げると

剣を振りかざしながらこう言った。



「ポウロ!ボサッとへたりこんでないで聞け!わしはまず統率できる足軽隊を集めて陣の西路側の防衛に向かう!お前は統率できる兵100人の背中に5本の灯火を持たせて中央路側で戦わせよ!あとの兵は陣のあらゆる場所にかがり火をたかせよ!」



「え?あ・・・はい!!」


絶叫するミレムに言われて、ポウロは半ば強制的に

陣内を駆け巡るように走り抜けていった。

ミレムは自分の周辺に居る足軽隊を集めると、まずは散らばっている兵の

士気を高めるために、陣頭に立って灯りをつけ味方を鼓舞し始めた。



しかし、天はミレムに対して残酷であった。



ジャーン!!ジャーン!!



なんとジャデリンに負けて撤退してきた賊将レツドの兵300が

本陣を取り囲むブラツクの部隊を見てこれ幸いと攻撃を仕掛けてきたのだ!

ミレムは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべるが、

これもまた功名の調味料のひとつと思うと、野心が先に立ち

どこか嬉しそうな表情を浮かべながら、松明を煌々と燃やしていった。



「ふふふ!過酷であればあるほど功名になるわ!ここを死守し、見事守り抜ければ城一つ!将を討ち取れば郡一つ!大将倒して勝利すれば州一つだ!!賊軍一兵たりとも、この陣に近づかせるな味方少なければ褒美も多い!防げッ防げーーッ!!」



「「「オオオーッ!!」」」


数倍の敵に対してまったく揺るがない、というよりも

野心に飲まれて功名に狂った姿は、兵士達には勇猛に戦う将に見え

「流石、帝の一族の血は将たるに足りるもの」と自分達も奮戦した。


ボッボッボッボッ!


ブラツクとレツドは段々に本陣から増え始める松明の数を見て

実は陣内には相当の官軍の兵士が居ると思って、一気に攻めることをやめ

ジリジリと囲い込んで士気を下げ攻めるように命令した。


ミレムのとっさの機転によって、陣に族兵は一人として入れなかった。

怖気づいていたポウロも、いつの間にか力をつけていたミレムに感嘆し

その守りには名将も適うまいと思った。


「「「ワーーッ!」」」


そして程ほどに時間がたった時、西路より駆け上がってきた

ジャデリン本隊に賊軍は居を突かれて官軍に挟撃され

ブラツクはジャデリンと一騎打ちするも討ち死にし、

レツドは兵を良くまとめようとしたが、流れ矢に当たり捕らえられたのだった。


こうして賊軍の本陣は奪取されたのだった。

ジャデリンは伏兵にも負けず、奪取し良く守ったミレムに感嘆した後

ポウロを守兵に残し、ミレムと共に騎馬隊300騎余りで

おそらく足止めを食らってるであろう

ミケイ、キイの隊を救出しに山を駆け下りるのだった。




中央路 後軍ミケイ隊



ジャーンジャーン!!!!


「「「ワーッワーッ!!!」」」


「ここに伏兵!?なんということ!各自扇形陣形!殲滅せよ!」


ジャデリンの予想通り、その頃ミレム隊の応援に向かった

ミケイ隊1000もミレム達足軽隊と同じく、側面の林道から突如として現れた

頂天教軍の大将アカシラ率いる本隊1500の伏兵に急襲されていた。

突如として現れた1500もの兵に、流石に用兵に長けたミケイも

苦戦を強いられ、その兵の半数を失いつつあった。



「ヒャッヒャッ!弱兵を倒すのは愉快愉快!それ追い込めぇ!敵を蹴散らすんだよぉ!」


紫色の法衣のようなものに身を纏い、馬に乗りながら軍配で指揮をする

アカシラの軍の統率力はすさまじく、兵士はあたるを幸いとするように、

猛然とミケイの兵に向かい、畳み掛けるような猛攻を仕掛けていった。


「「「ワーッ!」」」


ブーン!カキーン!ブスッ!グシュッ!グサッ!


「ぐ、ギャアー!」

「ウワーッ!」

「う、うわあ」


「ヒャッヒャッ、愉快痛快だねェ!」


アカシラの狂喜の声と次々とやられる官軍の兵の悲鳴が戦場を木霊する。

陣形の先頭でどうにか騎馬隊の指揮をとっていたミケイは、この惨状を

苦々しく見ていた。


「鼓舞しても、この戦局ではおそらく兵も長くは持つまい…退路もふさがれ、敵にとり逃される事もあるまい…ならば!やるべき事は一つ!」


ダッ!ダッ!…ドドドドドッ!!!


ミケイは、おそらく形勢の立て直せない勢いを見るに、

手綱をギュッと握り締め剣を前方へ向けると、アカシラが指揮をとり

馬に乗っている場所を確認すると、緩やかな山道を勢い良く下り

手勢の豪の者5、6騎を従えアカシラに猛然と突撃した!

流石にミケイの誇る騎馬武者隊率いる突撃とあって、みるみるうちに

敵兵の陣形に一筋の道ができていく。



「賊軍の大将とお見受け致す!我ら騎馬隊と、いざ尋常に勝負勝負!」


「ヒャッ?おやおや決死の突撃ってかい?弓隊!防ぎな!」



ヒュンヒュンヒュン!!


名乗りを上げるミケイの騎馬武者へ、アカシラの回りに控えていた

歩兵が持った小弓から放たれた矢が一斉にミケイを狙った!

揃って突撃した騎馬武者はミケイをかばい、まるでハリネズミのような姿を

晒しながら落馬し、騎馬武者隊は突撃の勢いを失った後、ミケイを守らんがため

槍隊の槍を先んじてうけると馬ごと叩き落され、それぞれ無残な最期を遂げた。


ミケイは馬を走らせて退路を作ろうと自らの剣を奮うが

多くの兵に阻まれ、まさに命事切れる瞬間を今か今かと待つばかりであった。



「ヒャァッ?白の甲冑の武者君はまだがんばってるのかぃ!不愉快だねぇ!」


「こ、ここで死ねばジャデリン将軍に面目が立たぬわ!」


「ヒャッヒャッ!もっと囲みな歩兵隊!あの白い甲冑を赤く染めてやるんだよ!」


ブーン!ガキーン!


賊軍のギラギラした目をした10数人の歩兵に囲まれ

流石にそれを押しのけられるほどの武力はミケイには無かった。



「む、無念だ!ここで私は終わりなのか・・・」


「ヒャッヒャッ、絶望に歪む顔は愉快だねェ!さあ!官軍の将なんて生きててもしかたない!一思いに殺してしまいなァ!」



嬉々として馬の上で面白がるアカシラと

囲んだ兵士のギラリと光る刃に落胆に暮れるミケイ。




絶体絶命のその瞬間であった!




ジャーン!ジャーン!


ヒュンヒュンヒュン!!!ザクザクザクッ!!!


「う、うわーー!!!」

「ふ、伏兵だーっ!」

「ギャアアーッ!」


側面の林道から現れた500の兵。

放った矢は賊軍の側面の兵士達を捉え、兵士達は次々と討ち取られていった!

その旗印は官軍、キレイの軍タクエンの部隊であった。



「官軍の兵達よ臆するな!関州の智謀の士タクエンが兵を連れて参ったぞ!」


「同じく関州の勇将ドルア推参!!」


林道を徘徊し、キイから500の兵を借りて動いていた

タクエンとドルアが敵の虚を突き、襲い掛かったのだ!



「ヒャッ!?ばかな官軍の伏兵がなぜここにいるのよぉ!!!?」


「アカシラ様!前方、本陣からの敵の旗印が!」


「ヒャ?な、なっ!?本陣が奪われたのかい!?レツドやブラツク達はどうしたんだい!ええい!くそーーっ!押し返すんだよ!」



アカシラが前方を確認し、馬のいななきが聞こえると、

そこにはジャデリンとミレムの指揮する300の騎馬隊が

恐ろしい突進力でアカシラの軍に突撃してきたのだった!



「ジャデリン将軍・・・そ、そうか!やったのか!やってくれたのか!ミレム殿!!!」


ミケイが感嘆すると同時に剣を取り、あっけにとられていた

回りの兵を振り払って逃げると、まんまと本隊へと復帰し、再び

自分の隊の指揮を取り始めた。



「それ!今だ!!押せーーー!!!」


「「「ワーーーッ!!!」」」


二方向から攻められて統率に優れるアカシラの軍も浮き足だち

およその兵達は各個撃破されていった!


「ヒャ!!!!!不愉快不愉快不愉快!!!!こうなれば逃げるが勝ちよ!再起して西の頂天教軍と合流すればいいこと!!逃げるわよォ!!」


「あ、アカシラ様!あれは・・」


アカシラが自分の精鋭の部下を率いて山を降りようとした

その時であった。


ジャーンジャーン!


けたたましいドラの音と共に、後方から官軍の旗印が見える

行軍のすばやさ、兵の士気、疲労の色の無さ、

いずれをとってもその軍はまさに精鋭であった!

かかる兵は次々に討ち取られ、アカシラの回りの兵も

それぞれに奮戦したが、勢いに負け押し殺され絶命した。


「ヒャ・・・ば、ばかな、軍が、壊滅・・・お、おまえらは!!」


兵に囲まれ混乱し、アカシラが絶望のふちにたつころ

二つの騎兵がアカシラの前に出てくる。



「ふふ、どうだアカシラよ。おぬしの妖術にもこのようなものはあるまい?」


「若、敵軍の総大将を助長する発言はいけませぬぞ」


「わかっておる。オウセイ!敵の総大将を捕らえよ!」


「はっ!」



「ヒャ・・・ヒャァァァ!」


アカシラが声を上げて驚き落馬し、それを見て笑う騎兵の将の一人が

前に出てアカシラに縄を打った。


陣頭で指揮をとっていた二つの騎兵、ボロボロの赤き甲冑に身を包んだ、

その将はなんと、山道を敗軍の将として駆けずり回っていた、

キレイとオウセイの二人であった!


「若、勝鬨をあげなされ」


「おう!」


キレイは手綱をギュッと握り、騎馬から剣をもった手をあげると

大声で兵士達にむかってこう言い放った!



「敵総大将を捕らえた!勝鬨をあげよ!エイエイオーッ!」



「「「オーーーーーーッ!」」」




ここに頂天教軍討伐軍南勢征伐、最後の要所妖元山は陥落した。

兵士達は、戦と討伐の終わりをそれぞれに分かち合うと

キレイ、ジャデリンの掛け声にあわせて勝鬨をあげた。

意気邁進な兵士達の笑顔、頑張った将達の安堵の息は、

恒久に続く、平和な時代の到来を予想してのものだった。

夜にかがり火が煌々と輝き、満天に広がる星空の輝くその光は、

新帝の威光、英傑達の活躍、それを象徴するようであった。



しかしこれは、次なる大乱の前の輝きに過ぎなかった。



皇帝が出率し帝国を開き、大陸を一つにして202年、その夏。

ここに綺羅星のごとく輝く英傑揃いて、邪教頂天の賊軍を征伐し

阪州は妖元山にて、その勝鬨を上げ候。


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