第一回
英雄百傑
第一回『大陸に人生じ、争う中に英雄生まれ統治し、時流れる』
遠い遠い昔の話、一つの大陸があった。
四方を美しい海に囲まれ、その外海には島国が細々と点在している。
この大陸は山や野の自然に恵まれ、獣が良く育ち繁栄していたが
いつの頃からか、獣と共存するように人と呼ばれるものが介在するようになった。
最初は草や実、弱い虫などを採って単独で生活していた人々だったが、
安定を求め、やがて人々の集まる集落を築いていった。
時が立つと、自分達の天敵である大きな獣から身を守るために武器を作った。
やがて武器は進化し、獣を狩る道具として成長するまでになり
その後、自分達で足りないものを補充するため武器を精錬する技術で農具を作り
武器は形を変え農耕という文明が始まった。
穏やかな日々が続いたが、問題もあった。
土地の寒暖や土壌の差、風の吹き具合による天候の違いによって
集落農耕で収穫できる収穫量に差が出来始めたのだ。
そして、収穫量の違いから、いつの間にか人々の心には他人を妬む心が生まれ
人々は他人を支配しようと農具を武器に変え集落での争いを始めた。
弱きものは強きものに飲まれ、強きものは弱きものの支配を得た。
―――――それから500年ほどの年月が流れる。
人々は小さな統治と分裂を繰り返し、未だ大陸は争いの中、
それぞれ豪族達は自分達の地方の名を『国』、統治者である者を『王』とし
『王族』『大臣』『兵士』『平民』という身分を設けて隔て、
明確な支配制度を打ち出すと、再び互いの国と反目しあいながら
100年間、自らの力を誇示せんと争いあった。
そして100年後、一人の男が現れる。
光り輝く彗星が見える西の空から出立した一人の男は、
人と人を結び、時には力を行使し、支配を繰り返していき、
ここに誰もが成し遂げなかった大陸の全てを統治する王となった。
『英雄』
誰がそう言ったかわからない。しかし、その文字通りの活躍をした男は
大陸の全土を支配する『皇帝』となり、地方を治めるものを『王』
その中の一郡を収めるものを『太守』と呼び始め、平和を第一とし
法によって国を統治すること、大陸に暮らす人民達に戦の無い世の中に
することを確約した。
しかし、英雄となった男を取り巻くもの達も人である。
全てを収め、全てを支配した英雄と呼ばれた男が死を迎えてから
100年の歳月が流れると、不穏な動きが現れる。
幼くして即位した王族ゆかりの『皇帝』に政治を一任されていた
時の『大臣』が自分の一族だけの専横を始めたのだ。
皇帝に代わり支配をし始めた『大臣』に怒った『兵士』達だったが
その謀略に乗せられ、有能なものは全て殺され、無能なものは
『大臣』に媚び諂い、その力を蓄えていった。
専横を極めた『大臣』と『兵士』だったが、最後には
いつの間にか力をつけてきた『平民』の『英雄』に敗れ、
『英雄』は『皇帝』を擁立すると再び大陸は平和となった。
その後、『英雄』は皇帝の下を去り、再び『平民』となった。
そしてまた100年の月日が流れる。
皇帝の一族が途絶え、再び野心に駆られた人物達が己が牙を研ぎ始めると
大陸全土に天変地異が起こり、人々は不安を感じて自分達で皇帝に代わる
神を作り始め信仰し、それはいつの間にか一軍となって
天下は再び揺らぎ始めた。
一人の英雄が皇帝となってから202年、
時代はここから動き出すことになる。




