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第十一回

英雄百傑

第十一回『陣中の龍、火中の阪州を覗き険難を味方にす』


―あらすじ―


昔々、巨大な大陸を統治する皇帝がいた時代。

前皇帝が亡くなり、帝が即位すると大陸は暗雲に覆われ、

天変地異や異常な事件など不吉な前兆が次々に起き始めた。

これに不安を覚えた民衆を見て宗教を崇めさせた黄州の賊長アカシラは、

天(天候や気運)を頂く(自由に動かす)神の教え『頂天教』の教祖となって

大陸を信者で増やし、ついには南北の数郡を抱え込み皇帝に反旗を翻した。

信者の軍の中には良将も多く、隣接する都市や要害は次々に落とされていった。

事態に焦った官軍は皇帝に逆らう逆賊に対し、

隣接する州、郡に討伐の兵を派遣したのであった。


ジャデリン率いる官軍1万は鏃門橋の砦をミケイの策と

ミレム、スワト、ポウロの三勇士の決死隊で突破し、

北から来た官軍、キレイ率いる1万の兵と合流し郡から

頂天教軍を追い出し、国中郡を平定した。

郡平定の祝いとして、根島城にて祝宴が行われ

宴の催しとして郡太守が酒宴に占いと人物眼に定評がある

土地の名士カカツを呼び出した。

ジャデリンはカカツにこれからの官軍の行く末を占ってもらうと

陣中に人物と呼ばれるものは居るかどうか相を占ってもらう事にした。

そして酒を飲み顔が紅潮しているミレムを龍の相と評し、

末席の将キレイを天を飲む英雄の相と評した。

そして祝宴の夜が終わり、次の日の朝が幕を開けると

官軍は意気もそのままに隣国阪州の頂天教討伐へと

向かう準備をするのであった。


―――――――――――――――――――――


阪州 大重郡


(ハン)州の西、大重(ダイジュウ)郡は平地が多く、樹木は育たず

土地も痩せ、香川の下流に位置し、水路も開拓されてなかったため水も悪く、

農耕には向かない土地であった。

だが唯一の大高地、妖元山一帯から良い鉱石が出ることが有名で

良鉄から青銅、果ては装飾に使う翡翠や黒曜石などを産出し

それを加工をする技術者や、細工をする職人が多かったことから

帝国もこれに援助し、労働力を送り込み内陸の工都として開発し

大重郡は技術の都として発展し、帝国きっての工業郡となった。


しかし、元々この土地は水路無き故に農耕が難しいため食料が乏しく

森林も少ないため、燃料にする物資は隣郡に頼るしかなかった。

鉱石の物資輸送を狙った賊達も多かったため、凶作が続くたびに

物資の争奪や略奪が繰り返され治安が悪く、過酷な山崩しをする労働者や

技術者職人達にも帝国に対する怨嗟の声があった。


これに目をつけたのが頂天教の教祖アカシラで、

この郡の賊軍を瞬く間に纏め上げると、妖元山を奪い

ついには郡を守る候武城、清城、円城、封城、遠義城の五城まで陥落させ

自らの軍を妖元山に置くと、天下の頂天教教徒を蜂起させたのだ。


これに焦った官軍は東の阜滋(フジ)郡から攻略を仕掛けようとしたが

賊軍に民衆が重なった頂点教兵の多さと官軍崩れの武将達が率いる

妖元山の兵に阻まれ、戦いやすい平地でありながら数ヶ月の膠着状態を

続けていた。


対して国中郡を出発したジャデリンとキレイの官軍は

部隊を二分化し、まずは妖元山を取り巻く五城の攻略に乗り出した。






各城の頂天教軍の抵抗も激しかったが、実戦において連勝に連勝を重ね

訓練され統率された官軍と、結束覚束ない民衆交じりの賊軍とでは

士気や兵の質が違った。


まずキレイ官軍10000が候武城に数を頼みに襲い掛かった。


流石に平地に立てられた城での防衛は難しく、2000の守備兵は

半数の兵士を失う大損害を出しながら退却し、清城の1000の兵士と共に

後方の円城に逃げ、円城の将アガルの指揮下に入った。


快進撃を続けるキレイだったが、円城を攻める時は今までとは打って変わって

牛歩と思ってしまうほど慎重に慎重を重ね、ゆるゆると時間をかけて攻めた。

これは兵が多くなればなるほど兵糧の減りが早いと見越したからであった。

候武城と清城の敗残兵およそ2000を抱え、

膨れた円城の守備兵5000をまかなう兵糧は凶作にあえぐ

この郡の一城には無かったのだ。


それに加え、キレイは兵糧を現地から調達できないように

周りの数少ない農村や農耕地帯に火を放った。

住民は嘆き、抵抗するものもあったが、キレイはその眉一つ動かすことなく

自らの手で焼き討ちを続け、全てを焼き払って焦土とした。


キレイは恭順の意思があるものには兵糧を開放し施しを受けさせ

反抗するものは捕え、その場で首を刎ね極刑とし、

抵抗の意識がある全ての農民たちの見せしめとした。


何時の間にかその死体の数は300以上にも上り、毎日の如く

反感を覚えた住民たちは恐怖して頂天教の円城へと逃亡した。

日に日に円城へと向かう住民達をキレイは追わなかった。

これも円城の兵糧を減らすためのキレイの策であったからだ。



この行為を見ていた官軍の兵や将たちは流石に恐れるものや、

キレイに対して物言いをするものも多かったが、

キレイは反抗する有能な将には自分の理想を語った後、褒美をやって黙らせ

無能な将は官職を剥ぎ、その後周到に仕立てられた事故に見せかけて謀殺した。

まさに恐怖で支配されたキレイ官軍は、背中に

『己の信念のためには味方をも殺す恐るべき鬼将』の眼があると思うと

何時の間にか『恐怖』という強固な結束で縛られた軍となった。

どこか勝利に浮かれていた兵士の顔には余裕は消え、

次の戦に対しての真剣さが見え始めた。



そして、おおよそキレイが策を弄してから10日もすると

兵糧の無くなった円城内の兵士の士気は大幅に下がっていた。


それを見たキレイは部下の猛将オウセイが率いる

3000の兵に指示をし円城に果敢に突撃させた!

士気のまったくない兵士に守られる城門ほど弱いものはなく

なんなく開け放たれた円城の城門を見て

頂天教軍5000の守備兵の指揮は乱れ、

混乱した軍を立て直そうと大将のアガルが、猛将オウセイに一騎打ちを挑むも

キレイ軍きっての猛将オウセイは、差し迫るアガルの胴を

双尖刀(上下に太刀のある槍)で一突きにするとアガルは落馬し

オウセイに一合もつけることなく討ち取られた。

残った頂天教軍は更に混乱し、退却を始めたところに

恐怖によって統制された兵とキレイの用兵術を駆使した

後詰めによって各個撃破され、キレイ軍は三城を開放し大勝利を収めた。


降伏した元官軍、頂天教の兵を吸収したキレイ軍12000となり、

策と用兵術を用いたキレイの軍の勢いは天を突くように高く、

その兵は今や空をかける龍の如く素早く、虎のように強かった。



一方、ジャデリン軍は正攻法を持って

ミケイの用兵術とミレム、スワト、ポウロ達三勇士の豪を持って

河川に面した遠義城、封城に立てこもる8000の兵士と対峙し

頂天教の兵士の多くに大打撃を与え、ニ城を開放した。

しかし被害も多く、降伏するものも少なかったことから

ジャデリン軍の兵は今や5000まで減っていた。



多くの兵糧を持ってきていた官軍は、凶作で兵糧に余裕の無い賊軍に勝ち

あっという間に五城を開放し、その勢いはついに妖元山の麓まで

押し進んでいった。


ジャデリンとキレイは山攻めでの長期戦を予想し

少なくなった兵糧を兵士分確保するため、その半数を郡に帰らせると

妖元山の頂天教守備兵5000と対峙したのであった。

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