綺麗なニワトリの子
【ニワトリ「兄」】「なあ、弟」
【ニワトリ「弟」】「なあに? 兄ちゃん」
【ニワトリ「兄」】「・・・俺さ、ずっと思ってたんだけど」
【ニワトリ「弟」】「うん」
【ニワトリ「兄」】「お前って、ニワトリ?」
【ニワトリ「弟」】「兄ちゃん、何言ってるの。僕は、【ニワトリ「弟」】だよ?」
【ニワトリ「兄」】「そうだよな・・・ でも、お前って、俺とか皆と違うからさ」
【ニワトリ「弟」】「え? そう?」
【ニワトリ「兄」】「なんか色々と違うんだよな・・・」
【ニワトリ「弟」】「そんなことないよ~。だって、僕は【ニワトリ「弟」】だよ?」
【ニワトリ「兄」】「そうだよなぁ・・・」
【ニワトリ「弟」】「そうだよ~」
【ニワトリ「兄」】「・・・あれだ、皆と違うんじゃなくてお前の個性だな」
【ニワトリ「弟」】「こせい?」
【ニワトリ「兄」】「・・・皆にはない、【ニワトリ「弟」】しか無いものだ」
【ニワトリ「弟」】「え!? 僕には何があるの?」
【ニワトリ「兄」】「とりあえず・・・ 羽と尻尾の間らへんに力入れてみな」
【ニワトリ「弟」】「よく分かんないけどやってみる・・・」
【ニワトリ「兄」】「・・・なんか広がっているな」
【ニワトリ「弟」】「え、何が?」
【ニワトリ「兄」】「こう、半円状にバサッと」
【ニワトリ「弟」】「だから、何が広がったの?」
【ニワトリ「兄」】「なんか・・・ 羽みたいなやつ」
【ニワトリ「弟」】「羽?! 羽は左右合わせて二つしかないんじゃないの?」
【ニワトリ「兄」】「違う、それじゃない。体に生えているやつが大きくなった感じ」
【ニワトリ「弟」】「・・・?」
【ニワトリ「兄」】「それと・・・ 顎のひだ? あれも無くて超女顔だよな」
【ニワトリ「弟」】「え、無い?! 顎に重さがないな~と思ったら無いの?!」
【ニワトリ「兄」】「お前が女だったら、男がわんさか集まってくるな」
【ニワトリ「弟」】「そうなんだ・・・ 兄ちゃんみたいなカッコいい顔になりたかった・・・」
【ニワトリ「兄」】「大丈夫だ、男受けするから」
【ニワトリ「弟」】「変な事考えさせないでよ!」
【ニワトリ「兄」】「後は・・・ 目元とかトサカが真っ白だな」
【ニワトリ「弟」】「ホントに?! それじゃあ、僕ってニワトリの特徴が僕には一つもないの?!」
【ニワトリ「兄」】「違う違う、お前はニワトリ界のホワイトタイガーだ!」
【ニワトリ「弟」】「・・・どういう事?」
【ニワトリ「兄」】「ただ真っ白いだけだ、気にするな! しかもカッコいいじゃん」
【ニワトリ「弟」】「え、そう?」
【ニワトリ「兄」】「色白で、メス顔で、首筋がすっとしていて、カッコいい何かがついている・・・」
【ニワトリ「兄」】「お前ってイケメンじゃん!」
【ニワトリ「弟」】「そ、そうかなぁ~・・・」
【ニワトリ「兄」】「そうだって!」
【ニワトリ「弟」】「・・・・・」
【ニワトリ「兄」】「ん? どうした?」
【ニワトリ「弟」】「・・・僕、本当は気づいていたんだ」
【ニワトリ「兄」】「なにを?」
【ニワトリ「弟」】「僕がニワトリじゃないって事」
【ニワトリ「兄」】「・・・じゃあ、なんで最初は否定したんだ?」
【ニワトリ「弟」】「もしかしたらって思っても、
自分で自分の姿を見て確かめることができないじゃん」
【ニワトリ「兄」】「確かにそうだな」
【ニワトリ「弟」】「だから、兄ちゃんから言ってくれるのをずっと待っていたんだ!」
【ニワトリ「兄」】「なんで・・・ 俺から?」
【ニワトリ「弟」】「皆が気を利かせてくれてるのかもしれないけど、
なにも言ってくれないんだもん!」
【ニワトリ「兄」】「それで俺か・・・」
【ニワトリ「弟」】「・・・ねえ、兄ちゃん」
【ニワトリ「兄」】「なんだ?」
【ニワトリ「弟」】「僕が一体なんの鳥なのか、兄ちゃんなら分かっているんでしょ?」
【ニワトリ「兄」】「なんでそう思う?」
【ニワトリ「弟」】「僕、一度も羽みたいなやつを広げたことないのに、
兄ちゃんは広がるものだって分かっていたんでしょ?」
【ニワトリ「兄」】「そうか・・・ まだ推測の域を出ないが、分かるには分かるな」
【ニワトリ「弟」】「ホントに!? 僕って一体なんなの?」
【ニワトリ「兄」】「お前は・・・ 白孔雀だと思う」
【白孔雀/弟】「え・・・ 白孔雀?」
【ニワトリ「兄」】「あの、羽みたいなやつが半円状に広がるのは、
孔雀以外に思いつかないからな」
【白孔雀/弟】「白孔雀・・・」
【ニワトリ「兄」】「・・・まだひな鳥の段階だったら見分けがつきにくいだろ。
よく確認しないで一緒に育てられたのがお前なんじゃないか?」
【白孔雀/弟】「多分そうだね・・・」
【ニワトリ「兄」】「・・・でも、お前が孔雀だとか関係なく、お前は俺の弟だけどな」
【白孔雀/弟】「兄ちゃん・・・」
【ニワトリ「兄」】「ホントに、孔雀でよかったな」
【白孔雀/弟】「え、なんで?」
【ニワトリ「兄」】「・・・オスのニワトリが、最終的にはどうなるか知っているか?」
【白孔雀/弟】「え・・・ 皆で楽しく過ごせるんじゃないの?」
【ニワトリ「兄」】「じゃあ逆に、なぜ俺達は人間に飼われているんだ?」
【白孔雀/弟】「ペットとして見てくれているんじゃないの・・・?」
【ニワトリ「兄」】「違う、俺達は・・・ 奴ら人間の食糧でしかないんだ!」
【白孔雀/弟】「食糧・・・ 一体、どういう事?!」
【ニワトリ「兄」】「奴ら人間は、俺達をこの狭い世界に閉じ込め、繁殖をさせ、
雌鶏が苦しい出産の後に産んだ卵を無心で取り上げ、
卵を産めない雄鶏は、殺し! バラバラにし! そして喰われるんだ!」
【白孔雀/弟】「そんな・・・ じゃあ、兄ちゃんは・・・」
【ニワトリ「兄」】「・・・奴らに殺されてしまうだろう」
【白孔雀/弟】「嘘でしょ・・・ そんな・・・」
【ニワトリ「兄」】「ほん...っとうに! お前が孔雀で良かっ...た!」
【白孔雀/弟】「そんな・・・ 嫌だよ! 兄ちゃんが死んじゃうなんて!」
【ニワトリ「兄」】「しょうがない事なんだ、ニワトリに生まれてきちまったんだから」
【白孔雀/弟】「嫌だ! 本当に・・・ニワトリに生まれたかった!」
【白孔雀/弟】「兄ちゃんが死ぬんだったら一緒に死にたかった! どうして僕は孔雀なんだ!」
【ニワトリ「兄」】「・・・・・」
【白孔雀/弟】「うあああああああああ!!!」
【男の子〔白孔雀〕】「・・・やっぱり、ニワトリさんごっこたのしいね~」
【友達〔ニワトリ〕】「そうだな! お前はくじゃくだけど!」
【男の子の母】「え・・・ 誰が教えたの、こんな設定?!」