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魔王と勇者が時代遅れになりました  作者: 結城忍
第2章ー魔王軍設立編
22/78

22話:魔王、英雄を闇に葬る

21話、22話も同時投稿になります。ご注意下さい。

SF成分多めでお送りしております。

 工業用ステーション『ヴァルナ』に到着したのは、体感時間で一週間程後の事だった。


 海賊の襲撃とかのイベントはなかったが、途中ガタがきた特殊海賊空母がリアクターを故障させたり、推進器が壊れてさらに速度低下するなど、予定以上に時間がかかってしまった。



 ワイバーンをドックに入港させ、桟橋から港へと渡った俺を待っていたのはリゼル父とその部下達だった。

 港に準備されていた大型トランスポーターの後部座席に乗り込んで、相対するように座る。

 後部座席にはリゼル父の他にも数名の姿。

 種族的な特徴で若く見えるが、老獪な雰囲気を持っていた。

 多分リゼル父のように、ステーション運営に関わる重鎮なんだろう。



「娘達は無事だろうな?」

 第一声がこれというのは、色々どうかと思う。


「2人とも元気そのものだ。後で会えばいいさ」

 無事とは言わない。特にミーゼは抽象的な部分が無事で済まなかったからな。

 悪として人を騙す事はあるが、平然と嘘を言うのはまた違うものだ。



 トランスポーターについている、防弾や対ビーム皮膜付きの窓の向こう、遠くから歓声や感涙の声がまとめて聞こえて来た。


 今回人質になった人々や、エネルギープラントに囚われていた人々がワイバーンの船倉部分に接続された、別の桟橋から降り立ったのだろう。

 連絡を入れておいた家族や親類と再会し、喜びに震えてるようだった。



「しかし、本当にこれで良いのかね?」

 リゼル父の手元にあるのは一通の投影書類。

 民間軍事企業として、救出した人々に対する救出費用の請求書だった。

 その金額は海賊達が要求した身代金よりは少ないものの、慎ましい生活をしている『ヴァルナ』ステーションの人々には相当高額な内容だ。

 支払えない場合は、文字通り体でも何でも使って返済して貰う事になる。


 だが、その請求書には最初から領収書もセットでついている。


「ああ、俺が欲しいのは評価であって評判じゃないからな」


 通信でリゼル父と打ち合わせしておいた内容はこうだ。

 民間軍事企業『魔王軍』はリゼル父の依頼を受けて海賊を討伐し、人々を救出するが、軍事企業の規定通りに救出費用も請求する。

 リゼル父は地元の名士として、救出費用を被害者やその家族の代わりに支払った。

 ……という事にして貰う。


 するとどうだろう?

 被害こそ小さいが討伐難易度の高い海賊を倒した企業評価は俺達に。

 被害者達を救出した評判はリゼル父と自治体に行く。


 人情の為に海賊達から人質を救出した民間軍事企業というのは美談にはなるが、心情的にも利益的にも美味しくない。


 だってそうだろう?

 海賊に捕らえられた人々を救出した魔王に魔王軍なんて違和感しかないし。

 次に救出費用の請求をすれば「何で自分達ばかり有料なんだ」なんて言う奴が出てくるに決まっている。

 俺はそう考える程度に未来人や宇宙人達を信用していない。


 これがファンタジー的な世界なら、街の人が大歓迎したりして英雄呼ばわりされていい気になれるシチュエーションなんだが、現代やSF世界ならこんなものだろう?


 元からリゼル父は『ヴァルナ』ステーションの中で顔役だったが、今回の一件でその地位をさらに確固としたものにするだろな。


「他の連中の受け入れも予定通り頼むぞ?」


「分かっている。あの人数だ、上手くやれば利益にもなる」


 工業用ドックに入港した特殊海賊空母から降り立ったプラントの非戦闘員達も、今頃は『ヴァルナ』ステーション駐在の地方行政府の役人達に、身分登録とか今後の身の振り方とかを説明されるのに移動させられている頃だろう。


 身元が判明して家族と連絡の取れる一部の人々は、郷里に帰るという。

 その他大勢の者は、本来は避難民扱いされてもおかしくない。

 だが、リゼル父との取引の結果、特殊海賊空母をこのステーションに売却する代わりに、ある程度の期間生活を保護させる事にした。


 別に魔王が慈善事業に目覚めた訳じゃないぞ?

 保護している間に環境適応できないやつの面倒まで見る気もないし。

 資金を出すのは『ヴァルナ』ステーションの自治体、リゼル父も含めた地元の名士達だが、名目上は民間軍事企業『魔王軍』になっている。

 救出されて、面倒を見られて、生活まで助けられて、これで恩義を感じない奴は少数派だろうし、その少数派に興味はない。

 恩義を感じる奴の中には有能なヤツも普通に働けるヤツもいるだろうから、そのうち事業拡大する際に役に立ってくれるだろう。

 海賊達が居た上にあの過酷な環境のプラントで生き延びて来た連中だ。

 したたかさや図太さ、生命力や頑丈さには期待できる。

 将来の魔王軍候補の確保だな。




 リゼル父達と幾つかの契約書のやり取りと、報酬の受け取りを終わらせた俺はそのまますぐ近くにあった別の大型トランスポーターに案内された。

 周囲にはいかにもガタイが良い黒服が固めていて物々しい。

 先ほどよりも上等な、ICカネがかかっていそうなトランスポーターの中にはリゼル母と高そうな未来風スーツを着た中年が座っていた。


「こんにちはイグサさん、お久しぶりです」

 上品そうな笑顔のリゼル母。何故この母からリゼルが生まれたんだろうな。

 いや、リゼルはリゼルで悪くはないんだが、リゼルが年齢を重ねてもこのリゼル母のようになる気がしない。


「…どうも、アドラム帝国情報局・実働3課、課長のカインズです、はい」

 ハンカチ的なもので汗を拭っているのは、どこにでもいそうな中年親父顔の男。


 何故この組み合わせ?と不思議に思う気持ちは分かる。

 俺も聞いた時は驚きと納得に満ちたものなんだが、リゼル母、ミーゼが生まれるまでは帝国情報局の局長様だったという。

 殺伐とした仕事に飽きたので、ミーゼを妊娠・出産するのを機に退職し、それ以来リゼル父の事業を手伝いつつ平和に暮らしているらしい。

 ……ちなみに、リゼル父との関係は幼馴染だったそうだ。


 特殊部隊っぽいメイドさんがやたらいたり、武器の扱いに妙に手馴れていたり、不思議な貫禄があったりした疑問が解けてすっきりした。驚きもしたが。


「カインズ君ったら技術資本の企業を装って、イグサさん所の船員を誘拐なんてしようとしていたから慌てて止めたんですよ」

 近所のスーパーで安売りがあってね位の軽さで上品に笑うリゼル母。


「き、恐縮です」

 カインズ君と呼ばれた情報局の課長は冷や汗を掻いている。


「通信で聞いた通り、正体不明の遺失技術ロスト・テック狙いか?」

 ただの魔法なんだけどな。


「そうなの。報告聞いてもう、必死になって止めたわ。

 あんなに焦ったのは子供の頃にミーゼが冒険して大怪我した時以来よ」

 結構最近にもう一人の娘が行方不明になった時は心配しなかったのか。

 リゼルはやたら生き延びる方向に運もいいし性格も逞しいからなぁ…


「ま、俺も余計な手間かからなくて助かるんだけどな。どうしてだ?」


「だってイグサさん。身内に手なんて出されたら、情報局……ううん。帝国相手だって平気な顔して敵対するでしょう?」

 良くわかっているじゃないか。

 隣のカインズ君が真っ青な顔になっている。


「理解してくれてなによりだ。

 それで、俺を呼び出した用事を聞かせて貰えないか?」


「後輩君がオイタしようとしてごめんなさい。というのが一つ目。

 もう一つは今後も情報局は基本、不干渉にさせるわね、ってお知らせ」

 カインズ君が必死に頷いているんだが。

 それでいいのか、課長。


わずらわしくなくてありがたいが、良いのか?」


「いいのよ。元々アドラム帝国は戦艦2隻分の強さの凄い戦艦が出てくるなら。

 こっちは戦艦を3隻準備すれば良いじゃないのってお国柄だしね」


「合理的だな」


「それにイグサさんは娘達を気に入ってくれてるみたいだもの。

 孫が生まれて増えれば守ってくれるだろうから、急ぐ必要もないでしょう?」

 冗談じゃなくて心底本気だと分かるだけに生々しさが半端無い。

 リゼル母の目はどこまでも本気だ。

 そこで慌てるのも俺のキャラではないが。


「気の長い計画な事だ」


「あっ、でも一つお願いがあったわ」

 本題か?


「子供が出来たら結婚とかまで期待しないけど、認知だけしてね。

 孫に父親なしっていうのは寂しいから。

 今回の件であの人、イグサさんを婿にするって方針に切り替えたみたいだけど」

 ホント生々しいな!

 そしてリゼル父、さっきの態度ツンデレだったのか!?

 知りたくなかった情報だな、をい!


「大物だな。元情報局長ってのも伊達や酔狂じゃないらしい」

 あまりの大物ぶりにくははっ、と笑いが漏れてしまった。

 決して生々しい話ばかりで乾いた笑いが出た訳じゃない。本当だぞ?

 のんびりした口調だが、こいつは随分な悪党だ。


「で、認知だけしてくれるかしら?」

 ……言質を取るまで逃がす気はないらしい。

 これは母の瞳じゃない。狩人の目だ。


「構わないさ。俺は敵には容赦しないが、身内には甘いのが信条だからな」

 その手の事で縛られる気はさらさら無いが。

 縛られないならその程度は気にしない。


「よかった、これで一安心できるわ」

 ぱんと手を叩き、顔を輝かせて喜ぶリゼル母。

 仕草は可愛らしいんだが、素直に可愛らしいと思えない俺がいる。


 結局、『不干渉認定書』という前代未聞らしい、帝国情報局の公式文書を貰った。

 情報組織がこういう公文書を残してもいいものなのか?



―――



 遠くに見える工業用解放ドックに拘束されるように係留された、特殊海賊空母は早くもあちこちで部品の抜き出しや分解が始まり、巨大な船体のあちこちで溶接光のような光が瞬いている。


 『ヴァルナ』ステーションのドックに係留されたワイバーンは補修を受けていた。

 ライムと魔法少女化したミーゼの2人で、交互に回復魔法を使って修復できるようになったので回復速度が格段に上がり、装甲板や消耗したリアクター、かなり消耗して部品が一部お亡くなりになっていたシールドジェネレーターとかは魔法での修復が順調に進んでいたんだが。

 リゼル曰く直るのと調整されているのは別らしく、メカニック系の戦闘船員達が忙しく艦内を調整して回り、回復魔法で直らない主砲の部品や旧式化が進みすぎた部品を交換している。


 本来なら応急修理だけしてワイバーンを魔改造してくれたおやっさんのドックへ持っていくつもりだったのだが、嬉しいことに前から声をかけていたおやっさん―――ガルンという名の中年のテラ(地球人)系アドラム人で、リゼルの師匠にしてリゼル父の友人らしい―――が、弟子らしい知り合いの技師20人を引き連れて正社員になってくれた。

 ……弟子の技師が片っ端から猫耳系少年風に見える男性アドラム人だった辺り、偶然なのかおやっさんの業が深いのか気になるところだが。

 これで出先でもワイバーンを本格的に修理できるようになった。


 なにより、これで念願の男性社員が一気に増えたのだった。

 面接もしたが、皆性根もまっすぐで勤勉な働きものだ。文句のつけようがない。


 何故か全員一人称が「ボク」または「僕」で、妙な色気があって、女性社員の中になんの違和感もなく溶け込んでいるが、些細な事は気にしない。

 気にしたら何か危険な気がするから、俺は気にしない事にした!



―――



 お約束ってあるよな?


 山道を歩いていたらむさ苦しい髭の山賊が出てきて。


 命が惜しかったら身包み置いていけ、へへ、そっちの姉ちゃんもなぁ。とか言ったりさ。

 貴様に殺された兄の仇!と美少女が飛び出てきて返り討ちにあって丸め込まれて、昨晩はお楽しみでしたね。的な展開になったりさ。



「おい、お前!こいつらの命が惜しかった……ギャアァアアアア!」


 悲鳴が早いよ。


 まとまったICカネを手に入れた企業の社長とかカモに見えたんだろうな。

 そしてどこにもはみ出しものはいるもんだ。


 『ヴァルナ』ステーションの商店街を歩いていた時の事だ。

 一緒にやってきた戦闘船員達が、久々に見る屋台とかに熱い視線を送っていたので、この程度で士気が上がるなら安いものと、色々奢ってやっていたんだが。

 うちの戦闘船員達も、見た目は可愛らしいお嬢さんたちに見える。


 つまり、成金がIC(カネにモノを言わせて、若いお嬢さん達をはべらしているように見えたんだろうな。


 一人の船員に刃物を突きつけたガラの悪いアドラム人がいた。

 老け顔の男だし獣耳も無いからテラ(地球人)系アドラム人だろうな。


 人質を取って俺にICカネを請求しようとした頭と運の悪い奴がいたんだよ。


「折角奢ってもらった串焼きが地面に落ちたじゃない!」

「ボクの休暇を邪魔するとかいい度胸だネ」

「たっぷりと可愛がってあげませんとね。皆さん、殺してはいけませんよ」


 ああ、うん、俺がどうこうする前に、突きつけた刃物は蹴り飛ばされて、手は関節が曲がったらいけない方向に曲がっている。

 その上、体を投げ飛ばされて地面に転がり、周囲にいた戦闘船員達に蹴られ、踏まれてフルボッコにあっている。


 ワイバーンでの船員としての訓練の他に、戦闘メイド隊に体を使った白兵戦訓練も受けていたのを知っていたが、予想以上に成果が出たようだ。

 白兵戦訓練を受ければ研修ボーナスキャンペーンをやっておいた成果が出たな。


 一時は騒然とした周囲だが、もうフルボッコにされてる男への同情の視線しかない。

 男には仲間も居たらしいが、一緒に仲良くボコられている。


 流石魔王軍の一員だ、頼もしい!……と言って褒めてやりたい所なんだが。

 執拗しつような股間へのストンピングは止めてあげて下さい。

 効果的かもしれないが、同じ男として見ているだけでキツい。



―――



 ライム程ではないが、最近リゼルの様子も少しおかしかった。

 スキンシップの回数が増えてはいるのだが、とてもさりげない風に変化していた。


 例えば、通路で出会うと「イグサ様っ」と元気良く挨拶しつつ尻尾を絡めてきたり。

 ブリッジで報告書に目を通したりしていると、体ごと擦りつけた上で、頭を首元にすりつけてきたり。

 とても自然体で甘えてくる。

 使い魔として慣れてきたのかと思えばそうかもしれないんだが。


「………にへー」

 ドック入りの時はブリッジに俺とミーゼの2人が揃っている事は少なく、一人報告書に目を通していた所、リゼルがミーゼのように膝の上に乗ってきて、体を擦り付けるように転がりながら甘えている。

「……ごろごろごろ」

 こういうスキンシップもありかなと、リゼルの頭を撫でながら報告書を読む静かな午後だった。



―――



 やはりあの海賊退治の後に、一番態度が変わったのがリゼル父だろうか。

 前はレーザーブレードで斬りかかってくる程度に嫌われていたんだが、やたら夕食や会食に招待される事が多くなった。

 俺が呼ばれれば自動的に娘2人がついてくるので、そちら狙いかなと思っていたんだが。


 酒を勧めてきたり、同席した他ステーションの有力商人に紹介されたりする。

 紹介してくれるのはコネが出来るので嬉しいのだが、どうにもリゼル父の距離感が近い。


 ある日『船の墓場星系』でいくつものステーションを股にかける法律家に紹介された時の事だ。


「彼は指導者としても企業家としても年齢にそぐわないなかなかのものでしてね―――」

 リゼル父にベタ褒めされる事が最近多いが、違和感しか感じない。


「なぁ、イグサ君。この調子で娘達の事もよろしく頼「それはお断りさせて頂く」」


「―――チッ」

 舌打ちするリゼル父。

 敏腕の法律家を紹介すると言われて警戒しておいて正解だったようだ。


 あの状況で曖昧にでも「わかりました」とでも言おうものなら、婚姻に承諾したとみなされて今日のうちに、リゼルかミーゼと結婚の上に婿養子にさせられていただろう。

 持ち込んだ記録装置探知機が反応しっ放しだからな。

 言い逃れが出来ないように、ボイスレコーダーやらカメラやらあちこちに仕掛けてあるようだ。


 前のようにまだ直接的に殺意を向けられた方が対処しやすかった。


 今日もまた、あちこちに散りばめられたトラップを回避しながら、リゼル父を最大限利用してコネを広げる夕食会になりそうだった。



 引っかかったら人生の墓場(結婚)行きのトラップはデストラップに分類されるのだろうか?



―――



 情緒というものは大切なのだとしみじみ思う。

 夏の日、夕方になり黄昏る山の裾野でヒグラシがカナカナと切ない鳴き声をしていたり。

 冬の日、深夜に深々と雪が降り積もる静寂の世界に一人立ってみたり。


 悪にだって情緒や浪漫はある。

 やはり敵もなく順調に世界征服が出来てしまうよりは、何度潰そうとも起き上がってくる正義の味方がきた方が俄然良いし。

 制圧した世界の中から立ち上がった反乱分子が自分の子供だったとか、もう悪としてはいう事がない。


 アルテがこの頃調子がおかしかったのは気がついていた。

 運んでいる皿を落としたり、何もない所でコケたり。

 ベタな感じのドジメイド化していたから、何かあるんだろうと思ってはいた。


「イグサ様、こ、今夜は不肖小官がお相手させて頂くであります!」

 いつもの装甲メイド服に背筋を伸ばした敬礼姿で言われても。


 こう、なんだ……情緒がないと思わないか?


 耳は怖がったように伏せっているし、追い詰められた子犬みたいな雰囲気まとっているし、若干涙目になっている所はポイント高いだけに、惜しい。

 酷く勿体無い。最高の刺身を目の前でバーベキューにされている気分だ。


「誰の指示なんだ?」


「はっ、奥様であります。既成事実と子供は多い方が良いと!」

 あっさりと自白したな。

 そういうのは秘密にしておくものだと思うんだが。

 アルテも色々とギリギリなんだろう。


 リゼル母の差し金か。

 不干渉でも個人的な恋や愛は別だという言い訳なんだろうな。


「……で、実際にはどういう事をする予定だったんだ?」

 余りにも直球過ぎるんだよな。

 餓えた青少年ならともかく、流石に軍人口調であの台詞だけでは、その気になる男はそう多くないと思う。


「はっ。後ろからだっ、抱かれる形で、イグサ様の手を服の中に導いて『旦那様いけません』と言っていれば後は何とでもなるとご命令を受けていたであります」

 なかなか攻撃力が高そうな手を使うじゃないか。

 確かにそんな事をされたら耐えられる自信がない。

 耐えるなんて考えもしないけどな!


 だが、恐ろしく初心で純情そうなアルテには難易度高すぎないか?

 説明させたのは俺なんだが、恥ずかしさのあまりにもうボロボロと涙が瞳から溢れている。流石に申し訳ない気持ちになってくるな……


「実行は厳しいんじゃないか?」

 足まで震えているので隣に座らせて頭を撫でてみる。

 びくびくとしているが、相手を落ち着かせる頭の撫で方には自信がある。

 ここ最近練習相手に困らないしな。


「いえすさー……困難であります」


「無理する事はない。やったって事にして口裏合わせてやってもいいぞ」

 肉食系なヤツらが多かったせいか、ここまで純なのは調子が狂う。

 本来ならもう頂きます。と頂いてしまっていてもおかしくないんだが。


「ですが、これも大恩ある奥様のご命令であります」

 きりっと決意の涙目で立ち上がると、指示された通りの行動に移り。


「……だ、旦那さま……いけま、せん……であります」

 凄い羞恥混じりの声で言われてさ。

 俺が耐えられるとでも思ったか?



 いや、無理だろこれ。なにこの可愛い生物。




 アルテは無事に任務を達成したのだった。

 リゼル母に外堀を埋められ続けてる気がしないでもないが。



 ここで何もしないのは俺らしくないよな?



―――



 お役所仕事らしく、支払いに時間がかかる賞金を待つ間。

 俺達は『ヴァルナ』ステーションとその近隣で英気を養っていたのだった。




――――――――――――――――――――――――――――――

 以下はファンタジー色の強いおまけです。

――――――――――――――――――――――――――――――

名前:イグサ (真田 維草/Igusa Sanada)

種族:地球人 性別:男

年齢:21   職業:魔王

Lv:29 EXP:282410/298000


<ステータス>

ステータスポイント:793

筋力 (STR)=100 (+860%)

体力 (VIT)=100 (+938%)

敏捷力(AGI)=100 (+678%)

知力 (INT)=500 (+1528%)

精神力(MND)=600 (+1238%)

魅力 (CHA)=500 (+981%)

生命力(LFE)=200 (+1002%)

魔力 (MGI)=600 (+5642%)


<スキル>

スキルポイント:128940

 <色々略>

[汚染耐性]:LV10

[アドラム帝国汎用語]:Lv1(MAX)

[機械操作(共通規格)]:Lv10

[機械不正操作(共通規格)]:Lv10

[ソフトウェア操作(共通規格)]:Lv10

[ソフトウェア不正操作(共通規格)]:Lv10

[構造知識(宇宙船)]:Lv5

 <表記し辛い特殊戦闘スキル>:合計LV1691


<その他>

・身長/体重:183cm/68kg

・悪への憧憬

・黙っていれば知性的な外見

・中身はエロ魔王

・伊達眼鏡

・BL題材被害583件

・魔王の特権:無念の死を遂げた死者数によりステータス強化

・要塞破壊者

・捕食者

・被捕食者



名前:ライム (向井寺 頼夢/Raim Mukouji)

種族:地球人 性別:女

年齢:17   職業:勇者

Lv:11 EXP:14468/18000


<ステータス>

ステータスポイント:21

筋力 (STR)=20 (+138%)

体力 (VIT)=15 (+86%)

敏捷力(AGI)=10 (+228%)

知力 (INT)=10 (+120%)

精神力(MND)=24 (+860%)

魅力 (CHA)=11 (+88%)

生命力(LFE)=20 (+368%)

魔力 (MGI)=14 (+175%)


<スキル>

スキルポイント:41


[武器習熟(剣)]:Lv5

[武器習熟(槍)]:Lv3

[武器習熟(弓)]:Lv3

[強打]:Lv4

[狙撃]:Lv2

[防具習熟(重鎧)]:Lv4

[回避]:Lv4

[騎乗] :Lv2

[大型騎乗] :Lv2

[騎乗:飛行]:Lv4

[法理魔法]:Lv2

[祈祷魔法]:Lv2

[概念魔法]:Lv2

[空間魔法]:Lv2

[交渉術]:Lv2

[鑑定]:Lv3

[治療]:Lv1

[魔物知識]:Lv3

[不屈]:Lv2

[アドラム帝国汎用語]:Lv1(MAX)


<その他>

・身長/体重:142cm/39kg

・クォーターによる隔世遺伝。銀髪翠眼

・外見年齢は12歳程度

・誤補導回数115回

・淡白・冷淡

・中身は割と熱血

・合法ロ……おいなにをするやm

・勇者特権:戦場に散った英霊達の数によりステータス強化

・はいてない

・被所有物

・依存LV6

・奉仕心LV5



名前:リゼルリット・フォン・カルミラス

種族:使い魔/アドラム人 性別:女

年齢:16         職業:宇宙船技師

Lv:8 EXP:5448/7500

使い魔Lv:6 Exp:20305/23000


<ステータス>

ステータスポイント:19

筋力 (STR)=8  (+16)

体力 (VIT)=9  (+16)

敏捷力(AGI)=7  (+16)

知力 (INT)=13 (+16)

精神力(MND)=5  (+16)

魅力 (CHA)=14 (+16)

生命力(LFE)=12 (+16)

魔力 (MGI)=1  (+16)


<スキル>

スキルポイント:7


[機械知識(共通規格)]:Lv1

[機械修理(共通規格)]:Lv1

[機械操作(共通規格)]:Lv1

[無重力運動]:Lv1

[ソフトウェア操作(共通規格)]:Lv1

[ソフトウェア作成(共通規格)]:Lv1

[構造知識(宇宙船)]:Lv1


<その他>

・身長/体重:158cm/52kg

・猫耳猫尻尾。黒毛

・元お嬢様

・天然

・腹黒…………?

・ファンタジーの世界へようこそ!

・→ファンタジー適応(中)

・魔王の使い魔化によりステータス補正

・エロ猫(称号)

・マッドメカニック

・貢ぐLV3

・おや、何か様子が……?



名前:ミゼリータ・フォン・カルミラス

種族:使い魔/アドラム人 性別:女

年齢:13         職業:参謀見習い/魔法少女

Lv:8 EXP:5600/7500

使い魔Lv:12 Exp:53200/61000


<ステータス>

ステータスポイント:11

筋力 (STR)=3  (+22)

体力 (VIT)=4  (+22)

敏捷力(AGI)=7  (+22)

知力 (INT)=17 (+22) /+80

精神力(MND)=2  (+22) /+80

魅力 (CHA)=12 (+22)

生命力(LFE)=8  (+22)

魔力 (MGI)=3  (+22) /+130


<スキル>

スキルポイント:10


[機械操作(共通規格)]:Lv1

[ソフトウェア操作(共通規格)]:Lv1

[統率]:Lv1

[指揮]:Lv1

[魔法道具適応]:Lv1



<その他>

・身長/体重:136cm/30kg

・狐耳狐尻尾。明るい茶色毛

・現役お嬢様

・頭脳明晰

・冷静

・冷酷

・うっかり

・策士

・甘えたがり

・経験不足

・魔王の使い魔化によりステータス補正

・ファンタジー適応(大)

・未来世界の魔法少女

・悪の手先の魔法少女



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