マイペース
いつも、マイペースが一番だと言われて育った。
人生はマラソンのようなもので、いつも一定のリズムを崩さなければ、あとは何とかなると。
確かに、生きてきて80年余り。
その通りだったかもしれない。
だが、マラソンにゴールがあるように、人生にも終わりは訪れる。
「ほら、あっちがゴールですよ」
スーツの人に促されるままに、私は走っていた。
「そうですね、死神さん」
「昔はサイン神と呼ばれてましたがね。あ、ほら」
指差したところには、白いテープが見える。
孫や親や、見たことがない人たちも。
「みなさん、お待ちかねですよ」
私は走る速度を速めも遅めもしないまま、ゴールテープを切った。