第4話
視点がコロコロ変わってわかりづらいかもしれません。
「失礼しました。」
橋森は今日本崎に勉強会をやめると言われたことを報告しに職員室に訪れていた。職員室での用事を終えた橋森は教室へ向かった。
「ホント、今朝のはなんだったのよ。今になって怒りがこみ上げて来たわ。せっかく教えてあげてたのに。」
橋森は誰に聞かせるでもなく、ひとりぼやいた。―この学校での成績は良くないけど、基礎は割と出来てたし授業も真面目だったから、印象悪くなかったんだけど―そんなことを橋森は考えていた。
「あれ、本崎?」
橋森が教室に入ろうとすると、彼女の視界に本崎が見えた。橋森は入りづらく、いったんその場を離れようとした。しかし、それとほぼ同時に教室の声が聞こえた。
『お前さー、クラスのみんなの前で橋森に勉強会はいらないって言ったらしいな。なんでだ?』
橋森は思わず足を止めた。本崎の友だち同様、橋森も理由を知りたかったからだ。そのまま音を立てないように聞き耳をたてた。
「なんでって言われてもなー。」
「だってお前、『橋森に勉強教えてもらうようになってから授業がわかるようになってきた』って言ってたじゃねぇーか。」
「ああ、それはそうなんだけどな。・・・バレたんだよ、あいつにアルバイトしてること。」
本崎は少し音量を下げて言った。いくら人気のない放課後の教室とはいえ、どこで誰が聞いているかわからない。本崎がそうするのも当然だろう。
「そうなのか?」
「ああ。その時は例の約束で他言無用を約束させたんだけどよ。」
「バラされるのが怖いからか?」
「いや、あいつは真面目だし約束は守るだろ。」
「じゃあ、なんでだよ。」
友だちの問いに少し黙った本崎だったが、やがてゆっくりと口を開いた。
「迷惑かけるかもしれないだろ?アルバイトは出来るだけバレないようにしてるけど、今回みたいにバレちまうかもしれない。その時、俺と仲良くしてたら疑われる可能性だってある。知ってて黙ってたんじゃないかってな。俺は校則違反だってわかっててやってるから、バレて停学になってもかまわねぇーけど、あいつは違う。クラス委員のあいつがクラスメイトの校則違反見逃してたって知られたら、俺以上の処罰受けるかもしれない。」
「だから、今のうちに遠ざけようとしてんのか?でもよーそれ、全部お前の憶測だろ?実際にどうなるかわかんねぇーし。」
「まあ、そうだけど、でも出来るだけ芽は摘んでおくべきだ。」
「なら、わざわざひどい言葉で傷つけて遠ざけなくてもちゃんと事情を説明すればいいだろ?」
「無理だな。」
「それこそなんでだよ。」
「あんなこと言った後だぞ?事情を説明して納得してもらうよりも徹底的に悪者になって嫌われた方が簡単だ。誰も嫌いなやつとは仲良くしようなんて考えないだろ。」
「確かにそうだけどよ。お前はそれでいいのかよ?」
「別に嫌われるのも憎まれるのも慣れてるしな。」
「そんなもんに慣れるなよ・・・」
「どうだっていいだろ?それよりもう帰らね?」
「ああ、そうだな。」
本崎たちは立ち上がり教室を出ようとした。一方橋森は慌てた。立ち聞きしていたことがバレてしまっては面倒なことになると思ったからだ。橋森は急いで物陰に隠れた。
「?なあ、今誰かいなかったか?」
本崎は教室を出た時、誰かいたような気がした。
「?いや、見てねぇーけど?」
「気のせいか。」
だが、友だちの方は気づかなかったらしく本崎は気のせいで片づけその場を去った。
「はぁはぁ、よかった。バレなかったみたい。」
橋森は本崎たちが消えていった方を見ながら胸をなでおろした。
「それにしてもどういうことなんだろう?」
橋森は教室に入り、席に座って考え込んだ。
―本崎はバイトがバレてもしかたがないって思ってて?
でも私が知ってることがバレるのは避けたくて?
だからわざと嫌われるようなこと言って私を遠ざけて?
でも本崎は遊ぶお金のためにバイトしてて?
いいやつなの?悪いやつなの?
でもよく考えると私と勉強できない日は用事つまりバイトしてるんだよね?
だったら遊ぶ暇ないよね?
そもそも本崎って無理してまでこの学校にいるんだよね?
ここ以外にも入れるところあるのにここにしたんだよね?
え?つまりどういうこと?―
「もうわけわかんないー!」
頭のいい橋森でも正解が出ず、思わず叫んでしまった。
「もう帰ろ。」
そう言って立ち上がった。
「お、橋森。」
その時、廊下から誰かに声をかけられた。
「先生。」
橋森が声がした方を見るとそこには担任がいた。
「勉強でもしてたのか?」
「は、はい。そうです。」
本崎のことを考えていたなどと言えるわけもなく、橋森はとっさに嘘をついた。
「偉いな、橋森は。それに比べ本崎のやつは、まったく。」
自分がついた嘘で本崎の株を落とされ、橋森は罪悪感を覚えた。
「やっぱり、親のいないやつはダメだな。」
「え!?」
担任の言葉に橋森は固まった。
「あれ?知らなかったのか?あいつは親いないぞ。」
橋森はそういえばあの家にいる間、家族にあったことがなかったと思った。
「じゃあ、彼は一人暮らしを?」
「ああ、そうだ。頼れる親戚や知り合いがいないんだと。ただ金は親が残してくれた貯金がだいぶあるらしくてな。」
―もしかしてだから本崎は―橋森は正解が見えた気がした。
「先生、すみません、失礼します!」
橋森は言いながら、風のようにその場から去っていった。橋森は走ってはいけない廊下を駆け抜け、大慌てで本崎の家を目指した。―私の答えが正しかったら―真実を確かめるため橋森は疾走した。
話をどこで完結されるか悩んでおります。いつも読んでくださってありがとうございます。