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私立高等学校物語  作者: 北野ゆり
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第1話

カリカリとシャーペンを走らせる音が聞こえる。部屋には男と女がいた。2人で勉強しているようだ。

「ほら、早く解いてよ。」

女の方が怒りぎみに言った。

「うっせーな、わかってるよ。」

それに男はキレそうになりながら、返事した。

男の方は、本崎(もとさき)修野(しゅうや)、女の方は、橋森(はしもり)朱海(あやみ)という。なぜ本崎が橋森と勉強することになったのかというと彼の成績が悪いからだ。


本崎は、とある私立に通っている。私立なので学費は高いが、彼の通う学校は他より異様に高い。しかし、彼には親がいなく、頼れる親戚もいない。そのため、ほぼ毎日のようにアルバイトをし、学費や生活費を稼いでいる。もちろん、勉強している暇はない。ある日、本崎は担任に呼び出された。

「お前、なんなんだ!この成績は!」

担任は本崎にひどい点数のテストを差し出した。彼はもともと、この学校での成績はギリギリだ。にも関わらずバイトばかりしている彼はテストで、40点取れればいいほう。いつも赤点ギリギリ(何回か追試もくらっている)である。彼自身も、いつかは呼び出されると思っていた。

「それに、追試でさえギリギリ合格だろ!少しは、誠意を見せたらどうだ。」

「すみません。」

この学校はアルバイトを禁止している。なので本崎は、『アルバイトしているので無理です。』なんて言えるわけもなく、とりあえず謝った。

「お前、このままじゃ退学になるぞ!だいだいお前はな・・(ガミガミ・・)」

本崎は担任の話なんて聞くつもりないらしくだるそうに聞いていた。彼はふと、時計を見た。

「(やばっ!!バイトまであと40分しかねぇー。)すみませんが、どうしても抜けられない用事があるので失礼します。」

本崎は強引に話を終わらせ、担任の返事も待たず職員室から逃げ出し、マッハで帰った。その次の日は、昼休みに呼び出された。昼休みなら逃げられないだろうと考えたんだろう。彼が職員室行くとそこには担任とその隣に生徒がいた。

「来たな、知ってるとは思うがお前のクラスのクラス委員の橋森だ。彼女は成績優秀だ。今日から放課後居残りで勉強を教えてもらえ。」

「よろし・」

「お断りします。」

橋森は礼をしながらしゃべろうとしたが、本崎は彼女の言葉を遮って言った。

「はぁ?お前、今、なんて言った。」

担任の声には怒りがこもっていた。

「『お断りします。』といいました。」

本崎は繰り返した。

「なにを言ってるんだ!お前のために言ってるんだぞ!」

担任はすごい剣幕で言ったが、本崎には自分のために言っているようにしか聞こえなかった。

「何度でもいいますが、お断りします。俺には、やらなければならない事があるからです。それもほぼ毎日です。失礼します。」

そう言って本崎は職員室から出ようとした。その時それまで、黙っていた橋森が口を開いた。

「待ちなさいよ。」

本崎は無視してそのままドアへ向かった。

「待ちなさいって言ってるでしょうが!!逃げてんじゃないわよ!!あんた時間ないって言うなら、毎週土曜の放課後2時間で次のテスト、全教科50点以上まで引き上げてあげるわよ。それでどう?」

橋森は担任のことなど無視して提案してきた。

「はぁ・・。だから俺にはそんな時間・」

「もし、目標達成できなかったらあんたの望み、なんでも(・・・・)叶えてあげるわよ。」

今度は橋森が本崎の言葉を遮った。

「マジで言ってんのか?」

「ええ、当たり前でしょ。」

「なら、いいぜ。後になって後悔すんなよ。」

と、いうわけで本崎は橋森と彼の家で勉強中だ。

「もう!ここも違うじゃない!こんなできでよく今まで退学にされなかったわね。」

本崎のできなさに呆れて橋森は言った。

「一応、授業は真面目に受けてるし、提出物もちゃんと出してるからな。なんとかなってたのかもな。後は退学者を出したくないんだろ。だからこそ、お前に勉強を教えるように言ったんだろ。」

本崎は投げやりに言った。

「だからってねー。・・・っていうか、あんたはなんでこの学校受験したのよ。あんたくらいの成績なら、他に入れる所いっぱいあるでしょうに。」

「別にどうだっていいいだろ。お前には関係ねーよ。(そうだ、お前には関係ない。こんな事知られるわけにいかない。)」

本崎は素っ気なく返した。

「ふーん。まぁ言う気ないならいいわ。続けるわよ。ほら!とっとやって!!」

「おい、もう終わりだぞ。」

本崎は時計を指しながら言った。

「えっ!・・あっ!本当ね。じゃあ終わりね。宿題出しとくから、ちゃんとやりなさいよね!」

「無理。」

本崎は間髪入れず返した。

「はぁ?何言ってんのよ。」

「それは、こっちのセリフだ。お前は、毎週土曜日2時間でやるってつってただろうが!俺には宿題なんてやってる暇ねーんだよ。」

「なんで?」

橋森は、声を強くして言った。

「用事。」

本崎がそう突き放すように言った。

「なんの?」

橋森は声をもっと強くして言い返した。

「(ったくこれだから、女はうぜーんだよ。)なに?どこぞのクラス委員さんは、他人事に干渉する権利でもあるのかよ。」

本崎が嫌味っぽく言うと、橋森はさすがに何も言えなくなった。

「あっそ。分かったわよ。今日は帰ってあげるわ。でも、次は何が何でもやらせるからね。覚悟しときなさいよ!」

橋森はそう言って本崎の家から出ていった。本崎はバイトに行くための準備を始めた。

更新は不定期です。

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