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風紀委員に入る? 初耳ですけど 2

「それに、あの役降りるし」


 その一言を聞いた瞬間、私は思わず、あんぐりと口を開けていた。


「え、何その顔キモい」

「ひどい。……って、そうじゃなくて、……本当に降りるの? だって、生徒会だよ? 一部の選ばれた人しか入れない……」

「面倒くさいし、お前風紀委員はいるんだろ? だったら俺もそっちに入るね」


 その時、担任と副担任の自己紹介が終わったらしく、「委員会決めるぞー」という声がかかった。役割を右から順に書いていく笠田先生。その中に、ちゃんと「風紀委員」という役割があった。男女一名ずつらしい。

 風紀委員という文字をじっと見ていると、また隣から声がかかった。


「入るのか? 入らないのか?」


 もちろん私は、入るつもりはない。偉大な生徒会様の秘密を暴露すると言う、自ら敵になるようなバカなことはしたくないし、このまま平穏に三年間がすごせればいいと思う。

 だが――、ルネ君の蒼い瞳にじっと見つめられて、相当焦っていたんだろう。気が付くと、手に汗がうっすらと浮かんでいた。


(やるわけないじゃん。風紀委員何て。私は学校の平和を守れなくても、平和に過ごせてればそれでいいの。他人なんて知らない)――。


「やるわよ、風紀委員。あんな奴らに学校統一されてたまるかっつーの」


 ……はて、今私はなんと……?

 額に冷や汗が流れる。目の前のルネ君はにやりと擬音が付きそうな黒い笑みを浮かべていた。


「おい橋田、ブランジェ、顔伏せろー」


 笠田先生に声をかけられ気が付くと、黒板の前に二人の男子が立っていた。学級委員を決める多数決らしく、ほかのみんなはもう顔を伏せていた。

 慌てて黒板を見ると、学級委員男子以外はとんとん拍子で、多数決をやらずに決まったらしい。残りは風紀委員だけだ。

 慌てて顔を伏せると、すぐに一人の男子の名前が挙がった。適当に、最初に呼ばれた男子に手を上げる。


「はい、顔あげろー。……投票の結果、」


 私が手を挙げた方の男子の名前が呼ばれ、まばらな拍手が起こる。


「それじゃあ、風紀委員行くぞー。前期は体育祭で忙しいが頑張れよ。……やりたい人は手を上げて」


 あげるもんかと踏ん張っていた腕。その腕を、ひんやりとした別の手が掴む。慌ててきょろきょろと視線を動かすと、ルネ君だった。

 は? と困惑していると、予想以上に強い力でぶん、と振り上げられる。


「お、橋田。女子は橋田しかいないな」


 ……橋田? 端だ? 梁田? 端田? ……橋田……。私ぃっ!?

 ちょっと待ってこれ私の意思じゃない――と異論を上げろうとするが、どうやらいつもの癖が発動しているらしく、掴まれている手が離れても腕は上がったままだ。

 じょ、冗談じゃないっ! 何で私が!


「誰もいないな。女子は橋田で決定。男子は――」


 黒板に私の苗字を書かれる。やっとおろすが、もはや時遅し。

 今なら慌ててもないし、反論できる――と思った時、口を塞がれた。……うん、こんなことするのはルネ君しか考えられない。


「男子どうしたー。誰もいないのかー?」

「あ……、俺やります」


 落胆したように言った先生の声とかぶったのは、私の隣にいる男子。つまりルネ君。

 え、本当に生徒会やめるの?


「……ブランジェ…………。お前、残念だが生徒会に入っているだろう?」

「やめます。これでいいですか」


 淡々とした口調で話すルネ君。その一言にはさすがに先生もびっくりしたようで、「本気か? というか正気か?」と聞いている。


「本気で正気です。俺は生徒会をやめます」


 そういうと、教室中は悲鳴で埋まった。「何でやめるの?」だか「何があったの?」だか、あまつさえ「あの二人ってできてんの? ルネ君、隣の女子の口塞いでるけど」という声まで。


「ふぇ、ふぇひふぇふぁんふぇふぁい!」

「『で、出来てなんかない!』らしいぞ」


 口を塞がれててうまく言えないあたしの言葉を訳してくれるルネ君。……よく、何て言ったか分かったよね。


「おいブランジェ、よく考えてみろ。風紀委員より生徒会の方が事実上、立場も上だし、ここだけの話、内申も高いぞ? いいのか? 出たら、もう入れないぞ?」

「別に、それがなんですか?」


 けろりとしているルネ君。一番びっくりしているのは私だ。

 本当に、彼は生徒会をやめるのだろうか。そうだとしたら、結構バカな判断だ。いくら裏の顔があれだからといっても、私だったら生徒会に残ることを選んでいると思う。


「早く名前書いてください」


 催促までし始めた。

 未だに口を塞いでいるルネ君のてをぺちぺちと叩き、解放を求める。


「………………」


 嫌な顔をされたが、とりあえず解放をされたので、私は機関銃のように彼に質問をぶつけまくる。


「ちょっ、本当にいいの? 一番ヒーローにほど遠い存在だけど、ルネ君って」

「……お前何、調子のってんの?」


 真面目に眉間にしわを寄せたので、とりあえず謝る。「ごめんなさい」というと、「妙に素直だな」とよく分からない返しをされた。

 ……いつも素直だ、馬鹿野郎。

 本当に言ってやろうかと思った時、チャイムが鳴った。


「お、ここまでだな。じゃあ委員長、号令。それと、ルネはこの後職員室にくるとこ」


 隣を見ると、あんなことを言われたにもかかわらず、ケロッとしている。

 ……笠田先生、死ぬ気でルネ君を説得してください……。


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