最終話
結局ヴィラの言い出したネネの表情解禁パーティーは、生誕祭の一環として盛大に行われることになった。
もちろん世界中から要人が集まって来るこの機会を逃すはずもなく、ルークの即位発表も合わせて行うことに。
全てが順調にいくかと思われた・・・・・が。
「はじめまして、神官長のドロージオと申します。
この度は即位を心からお喜び申し上げます。私も神に仕えるものとしてこれから世界の――――」
「あ?誰だてめえ」
「ですから、神官長と申しまして・・・・」
「知らねえよ、じゃあな」
「る・・・ルーカス様・・・!?お待ちください!」
各国の要人の挨拶を無視しまくるルーク。
「ネネ様ーーー!!せめてお食事は小皿に取り分けてください!!心配しなくても料理は逃げませんからあ!!」
大皿を抱えて走りまわるネネ。
それを追いかけるルードリーフは半泣き状態だ。
例え人前であろうと相変わらずな2人を眺めるヴィラはレオナードの隣でうんうんと大きく頷く。
「やっぱりこうなるだろうと思ってた」
「・・・止めるか?」
「いや、今日くらい自由にさせてやろうよ。主役なんだしさ」
「今日だけでなくいつも自由だろう」
ま、そうなんだけどね、と苦笑する。
しかし自由でないルークとネネなんてあり得ない。あの2人はあの2人らしく、これからも生きていくのだろう。
ベルガラの王城はドローシャのものよりもずっと質素だった。この国は華美を嫌い慎ましい方が美徳としているらしい。
中心の国に公式に認められたルークは、レオナードが手を回していたこともあって、誰にも咎められることなくベルガラへ迎え入れられた。前女王陛下に生き映しだったネネも彼女を知ってる者たちは吃驚していたが、事情を説明するとそれも拍子抜けするほどあっさり受け入れられた。
何よりルークの即位を喜んだのは国民たち。失った誇りを取り戻した彼らは3日3晩お祭り状態だったという。
「・・・ベルガラ王国、ルーカス王・・・」
王の間。見渡す限り人に埋め尽くされたその部屋は熱気に包まれている。
壇上で静かに名を呼んだのは水色の髪の少女、ネネ。ふわりとした白いドレスに身を包み、頭に装飾の施された王冠を乗せていた。
その姿はまるで生前のネーネルフィ女王陛下だと涙を流す者もいる。
ルークは片膝をついて彼女の前で頭を垂れた。
ネネは自分の頭上の王冠をゆっくりと両手で下ろし、それをルークの頭の上にそっと置く。
割れんばかりの拍手が起こり、ネネは微笑んだ。
自分の生きていくべき場所を見つけた。そして自分を受け入れてくれる居場所も。
ところがルークは頭に乗った王冠を派手に放り投げると、宙を舞うそれに唖然としている観衆の前でネネを乱暴に引き寄せた。
2人の距離が無くなり、唇が重なる。
女王の血で作られた人形と王家で唯一生き残った男のお話は、有名な御伽話として後の世に語り継がれることとなった。