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プロローグ


 

 北の王国のセントラル。ここは年中雪が降り続き、人が住むには少し厳しい環境だ。城下町は、雪に埋もれほとんどの民家は地下に住まいを築いている。そんな中、国王の住む

城だけは城下町の中心に堂々とそびえている。

 日中だというのに、雪のせいで薄暗く家々は全くと言って良いほど見えない。しかしその城だけは、陸上の灯台のようにセントラルの位置を旅人に示している。示しているとい

ってもこの地に足を踏み入れるほど物好きな旅人はいない。セントラルの外は様々な魔物が巣食い、外界から完全にシャットダウンされているのだ。しかし今までここで人々が食

料や生活するための資源を手にすることができた理由は、魔術というものを扱うことができたからである。本来ヒト種と呼ばれる人間は魔術を扱うことは出来ないが、極希少に扱

える者が存在する。この王国の人々は、その希少な人々が住む、世界の中でもめずらしい国なのだ。


今この国である異変が起ころうとしていた。過去1000年以上も魔術とこの険しい気候により堅固に守られてきた王国に招かざる客が一歩、また一歩と猛吹雪のなか歩みを進め

てくる。客人の周りだけ雪がよけるかのように丸い球体がその人を覆う。そして、門の前までたどり着くとその歩みをいったん止め、門を見上げた。




今、この時この場所で・・・・、物語は始まる。




何処からともなく、開くはずのない、城下町の門が開き、一人のフードをかぶった男が訪ねてきた。もちろん門兵などいるはずもない。男は吹雪の中王の城へと向かった。家々は

雪に埋もれ、見張りの騎士は見当たらず歩みを進めるのに障害はなかった。しばらく進むと遠くで見るとおぼろげだった城は、だんだんその威厳を露わにして男を見下ろしている

。男は城門へと辿りつくと門に手をかざし、呟いた。



「開くがいい。」



門は男の声に従い軋む音とともにゆっくりと開いてゆく。男は一歩城へと足を踏みいれた。

門が開く音に気が付いた騎士団たちが一斉に門に集結した。



「何者だ!」


一人の騎士が問いかけた。しかし反応がない。


「捕えろ!」


あまりにまがまがしいオーラに騎士たちの心に男をこれ以上先には進ませてはならないという、生物が生き残るために必要な本能が働く。


「我らに盾を我が敵に矛を。」


一人の騎士が唱えた。すると騎士たちの手に盾が現れ、同時に剣が次々と出現し、男のほうへその刃を向け高速で飛んで行く。

この王国の騎士団は、ほかの国の騎士とは違い魔術が使えるのだ。


「愚者へ罰を。」

フードの男が唱えた。すると剣は突然消えてしまった。


「馬鹿な!!我らの魔術を打ち消すとは・・・隊列を組め。」

団長と思われる騎士が命じる。


「我が手にかの者を打ち砕く力を。」

騎士達がそう唱えると弓矢が現れた。


「こもれ・・・、魔を滅る異界の炎」

さらに詠唱すると矢の切っ先に青い炎がともる。


「退魔の炎ですか。」

フードの男が静かに言った。


「しかしそれを私に向けたところで効果は得られない。」

フードの男は、不敵な笑みを浮かべた。


「構うな放て!」

団長が怒鳴った。


「我矢を嫌う。」

 フードの男がつぶやく。

 

「無駄だ。退魔の炎を纏った矢を止めるすべはない。」


「それは私が魔ならのお話では?」

 フードの男の盾に到達した無数の矢は炎と共に跡形もなく消えてしまった。


「ばかな!魔族しか魔術は使えないはず。」

 騎士団たちは、無意識に一歩後ずさりする。

 

「聖なる剣よ。我に約束された勝利をもたらせ。」

 するとフードの男の手に白銀の剣が現れた。

 そしてその剣を一振りした。

 

「構えろ。くるぞ!」

 団長は団員たちに促した。

 フードの男の剣からは何も発せられない。

 

「こけおどしか。反撃す・・・、ぐは!?」

 騎士団たちの体が、幾度も切り付けられたかのように切り裂かれた。そして床にその身を落とす。

 

「しかしこの程度だとは。よくもこのような場所に・・・。」

 フードの男は屍を踏み越え奥へと歩みを進めた。その後も幾度となく騎士が男の前に立ち塞がったが、その度に打ち砕かれた。そして、辿りつく・・・。

 

「固有結界ですか・・・。」

 男は玉座の前に立ち見上げた。そこには扉があったが、特に異常は見られない。

 

「汝・・・、我が道を塞ぎし者よ。」

 男が唱えると扉が青色に光だした。そして術式らしきものが浮かび出す。

 

「ずいぶんと複雑な結界・・・、ここで使うのは惜しいですが時間がない。」

 男は小指にはめたルビーの指輪を取り外し、扉へ向ける。

 

「ブレイカー、破壊せよ。」

 すると結界がガラスの割れる音と同じ感じの音で砕けた。

 

「参るとしましょう。」

 

 男は玉座の扉を開いた。扉が開くと同時に一人の親衛騎士が男へと切りかかる。しかし、男が右手にもつ剣を一振りすると騎士は壁へと叩きつけられた。

 

もう一人の騎士が、後に続いて切りかかるが、刃は男に届かず心の蔵を貫かれた。


「これで詰めです。」

 フードをかぶった男が、銀色に輝く剣を騎士の体から引き抜きながら言った。騎士は、無残にも床へ崩れ落ちた。

 

「お逃げください陛下!ここで私が時間を稼ぎます。」

 先ほど壁に叩きつけられた親衛騎士がどなるように言った。額からは血が絶えず滴り落ちている。

 

「馬鹿を言うな。その手負いの体ではいくらおぬしとて・・・。わが王国の騎士団が手も足もでぬ程の強者だ。」


 国王は低い特徴のある声で、下を向き言った。しかしその顔には、恐れはなかった。


 「何をごちゃごちゃと言っているのです。あなた方の命は最早私の手の中。そこの騎士如きが抗ってどうなるものではありません。さあ渡しなさい。北の王ベルセルク、あなた

が鍵になっているのは分かっているのです。」

 フードの男が手を国王に差しのべながら言った。

 

「なぜこの国に侵入することが出来たのか?それに我が騎士団が意図もたやすく敗れるとはな・・・。」


 国王は周りの無残な騎士たちの姿を見て、何かを考え込むかのように顔をしかめた。


「やつにあれを渡せば、与えられた責務を果たせなくなります!どうかここは私を信じ、この場からお逃げ下さい。」

 騎士の鎧の奥の目に迷いはなかった。とても綺麗な瞳だ。

 

「それは出来ぬ。そもそも逃げ道がこの国にはないのだ。そのように作られている。」

 ベルセルクは、迫りくる男を見ながら言った。この国は男が狙う国王の持つ鍵を守護するためだけに作られている。ゆえに侵入も脱出も不可能。城下町の民家もそのほとんどが

、騎士の住まいである。

 

「よいのだ・・・、マリアス。その傷で戦うなど犬死に。それに、責務なら果たす。 」



 ベルセルクはむくっと立ち上がった。そして、一歩フードの男のもとへ歩み寄り、騎士に振り向き言った。


「ソナタは生き延びよ。生き延びねばならぬ。」

 

「何を!騎士が主である王より、尊いはずがありません!あなたにはそれを守る責務がある!なにより、死んでいった仲間たちに会わせる顔がない! 」

 国王の手をとり、強く握りしめ左右に首を振った。

 

「これは王である私の命令である。騎士如きが覆せるものではない。」

 王が反論するマリアスに向かっていった。

 しかしマリアスは国王の命令を無視し、先ほど倒れた兵士の剣を取り前へ出た。

 

「できません!」

 マリアスの鎧兜から垣間見える瞳はより一層光を増した。

 

「そのような命令は聞けない。私が時間を・・・、時間を稼ぐ。その間に陛下は、お逃げください。」

 マリアスは国王に促した。

 

「威勢の良い方ですね。まっ、しかしいずれにせよどちらも生かしはしませんが。」


 フードの男が凍えそうな冷たい声で言った。そして、自らの剣を二人へ向けた。

 

「よいか、もう一度命ずる。そこをどきなさい。」

 ベルセルクは、今度は低い太い声で言い直した。

 

「できない!」

 マリアスの体からかすかに紫色のオーラが湧き出した。魔力である。

 

「何の真似だ。下がれと命じたのだ!我が命に背くつもりか!?」

 「それは騎士である私に対する侮辱です。王を差し置いて背中を見せ、逃げるなどと二度と口にしないでいただきたい!」

 マリアスは、滴る血を吹き払い言った。

 

「ふん。騎士の鏡・・・、とでも申しておきましょう。あなたのその穢れなき眼に免じて、私の全戦力でお相手しよう。手を抜いては、私の騎士道に反する。」

 フードの男の剣がより一層輝きをました。

 

「いざ!!」

 マリアスは剣を強く握り、覚悟を決めて走りだした。


「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

同時に男が剣を一振りし、その瞬間あたり一面純白の白に染め上げられ、その中で最も輝く男の剣の先から斬撃が放たれた。

 (これほどとは・・・)マリアスが心の中でつぶやいた。その時マリアスの体に変化が起きた。紫だったオーラが、純白に変色したのだ。しかし、自身はその変化に気づいては

いない。

 マリアスが斬撃から目をそむけた次の瞬間、何者かの手によって、後方へと強くひかれバランスを崩し、その場に倒れた。目を再び開くと紫色に輝く光の壁が、斬撃を弾いている

 

「これは・・・?陛下お下がりください! 」


 するとそこには国王ベルセルクが、手をかざし防御壁でマリアスの盾となっていた。


マリアスは理解できなかった。一国の王がその盾となるべき衛兵の私の盾となっていることが・・・。ベルセルクの着ている黄金の鎧にヒビが入る。

 

「よいかマリアス。ソナタは、みなの分まで生き延びよ。もちろん私の分も・・・。私が生き延びるよりもマリアス・・・、お前が生きる事に意味がある。」

ベルセルクの言葉はとても深く心へと語りかけてくる。そしてこう続けた。

 

「すまない。マリアス、守りきれなかったようだ。許しておくれ・・・。」

 ベルセルクは、まるで実の父親ようなとても暖かい表情でマリアスに言った。

 

「待ってください。何の事です!?陛下をお守りするのは我が使命でございます。」

 マリアスは立ち上がり、再び剣を取った。しかし王の前へ出ようとした次の瞬間である。


「我が永遠なる時の鼓動よ。この者を我の示す地へと送り届よ。命じるは時の王。」

 国王がそう言うと地面に術式が現れた。部屋全体を覆うほどの大きさである。

 

「馬鹿な!させません!」

 フードの男は、剣からの斬撃が途切れないよう体制を保ちながら、片方の手で地面に触れた。

 

「させん!!」

 ベルセルクは、胸から宝石のようなものを取りだし、地面へと叩きつけた。宝石は粉々に砕け散り、魔術式と同化した。

 

「陛下何を!?私は・・・・」

 次の瞬間マリアスは何かを言おうとしたが言い終わる前にその場から消えた。

 

 男は斬撃を止めた。

 しばらくの間場に沈黙が流れた。そして、男が切り出す。

 

「ふ、はは・・ははは。予想外・・・。」

 男は不気味な笑いをして、のちに真剣な口調になった。

 

「お前などに好きにはさせん。」

 ベルセルクは、睨みつけた。

 

「我が目的をあらかじめ知っていたというのか・・・。」

男は自らの顔を隠していたフードを取った。

髪は銀白髪でさらさらと肩までのび、目は澄んだブルーの瞳、そして何より右に出る者はいないというほどの美男子であった。

 

「我が素顔を見るに及んだこと、素直にほめておきましょう。」

 男は剣を消した。

 

「何のつもりだ?」

 ベルセルクは、戦闘態勢を解いた男に疑問の念を込めて言った。

 

「いえ、あなたと少し話をしたくなったのです。賢き王よ。」

 

「話すことなどあるまい。あったとしても私にはない。」


 ベルセルクは返答した。

 

「だが・・・、」

 ベルセルクの脳裏にマリアスのことが思い浮かんだ。例えいまこの場からマリアスを逃がす事が出来た今でも、本当の意味での打開策にはなっていないことにベルセルクは不安

を隠せない。

 

「我が、このうちに秘めたる秘法・・・。呪いとでも言おうか。{時の帝王}を手にして何をするつもりか?」

 ベルセルクは、男がここへ来た理由・・・、表向きの目的について質問した。

 

「つまらない質問ですね。それはあくまで我が主の目的にすぎません。」

 男は少し顔をしかめた。

 

「私にとってあなたの存在などさして重要ではないのです。」


「ならばなぜお前は今こうして私と会話などしているのだ。会話をすることに何の意味がある。」

 ベルセルクは疑念の念を込めて言った。

 

「あなたに少し・・・・・・、興味を持ちました。それでは答えになりませんか?」

 男は答えた。


「興味・・・だと?」

 「あなたが自らを犠牲にしてかばったあの騎士。あなたは知っていたということになる。彼女の真の姿を。」

 男は鋭い口調で言った。そして続けた。

 

「そうでなければ優先すべき保護対象は、揺るがない。あなたの生きる目的、いやそれ以上でしょう。{タイムブレイカー}これを守ることこそがあなたの使命なのですから。

 ベルセルクは男の言うことに眉一つ動かさない。

 

「にも関わらず、あなたは騎士を逃がした。なぜでしょう?」

 男は質問で言葉を終えた。

 

「その答えは、簡単なことだ。私はお前には敗れぬということだ。」

 

「私にはあなたを破るほどの力は持ち合わせていないと?」

 

「その通り。いくらお前が強者であっても、我が{時の帝王}の前では、意味をなさない。この戦いに巻き込み、犬死させるのは本意ではないのでな。」

 

「なるほど、その秘法を用いてすら巻き込むと。ならばなぜ未だにその力を使っていないのです?」

 男は言った。ベルセルクは、上げ足を取られたような表情になった。

 

「彼女を逃がすまでもないでしょう、あなたにはそれがあるのだから。心の何処かである疑念が芽生えた。私には敵わないかもしれないと・・・。」

 男は少し笑みを浮かべつつ言った。

 

「話は終わりだ。私がここでお前を打ち砕けばよいだけのこと。」

 ベルセルクは、戦闘態勢に入った。

  

「いでよ。我が古より伝わりし秘剣、虚無の雷剣。」

 ベルセルクの両手に黒炎を纏った双剣が現れた。

 

「良いでしょう。相手にとって不足はない。あなたを踏み越え、この手の中にあなたの中に眠る{タイムブレイカー}を手にし、そして・・・」


突然の突風が男の言葉を遮った。


「させると思うか?」

ベルセルクの体の周りを螺旋状に青色のオーラが噴出している。風はどんどん増して行く。


「魔術でも魔法でもない。まさに神業ですね・・・その力は。」

男は突風を片手で遮りながら言った。少し押されぎみだ。


「我が真の名は、時の守護者・カルディナ お前が敵に回したのは、まさに神に近き者だ。故に敵わない!」

ベルセルクは、力強く言い放った。


「それはどうでしょう?」

男は言った。そして、念じる。


「現れろ。ルーンソード!」

すると先ほどの剣とは違う形の剣が現れた。剣は錆びつき、わずかに残った錆のない部分が鈍く光っている。


「時の守護者カルディナ お前はその身を以て神が打ち砕かれるその瞬間を、その時を刻むのだ。」

男の眼つきが猫の目の鋭い目つきのように変わった。


「お前はここでこの場所で倒す。」

ベルセルクは男の殺気に嫌悪した。そして虚無の雷剣を構え間合いを取った。


 「 行くぞ!」

 ベルセルクは石畳の地面を力いっぱい蹴り、男に勢い良く切りかかった。


 「*************」

 男は解読不能の言葉を唱えた。すると先ほどまでの突風がかき消されると共にベルセルクは衝撃波を受け弾き飛ばされた。


「ぐは!」

ベルセルクは壁に叩きつけられ背中を強打した。


「何を迷っているのです。カルディナ・・・。その程度の剣では私は貫くことは出来ませんよ。使うのですよ、神よりもたらされた秘宝中の秘宝、タイムブレイカーを・・・。」

男は壁にもたれたベルセルクに向かっていった。

ベルセルクはふらふらと立ち上がった。


「な、何者だ・・・。その眼・・・その髪の色。」

ベルセルクは額から滴る血で片目をつむりながら、か細い声で言った。


「私のことなどどうでもいい。あっけないにも程がある。貴方も王なら全力で戦いなさい。」

見下した口調で男は言った。


「言ってくれるな。ほぼ全力を出したつもりが・・・、だがこの城も最早此処まで・・・。」

ベルセルクは片方の剣を杖としながら、何とか立っている。


「お前と此処で共に逝こうか。我が命を懸けて!」

ベルセルクは、剣を捨てた。


「やっとやる気になりましたね。」

男は剣を再び構える。


ベルセルクは、天を見上げた。すると紫のオーラが今までにない輝きを見せながらベルセルを包む。そして・・・・


「贄は我が魂、代償は我が命、神より許されし理を超えたひとたびの力を!」

ベルセルクがそう唱えると紫のオーラが黄金に変わり、部屋一体を包みこんだ。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

数秒の沈黙が訪れ・・・・


「タイムブレイカー。時の破壊者」


ベルセルクの眼が鮮血染め上げられている。


そして、その言葉を口にした瞬間時が停止した。


がれきが衝撃で崩れている最中の光景もピタッとその時の流れを止めている。部屋の光を照らすろうそくの炎の揺らめき、壁の隙間から流れ込んでいた風までもがその時間の流れを止めた。



「行くぞ!貴様もろとも地獄へ導いてくれる!」

ベルセルクは、時が止まっている男へと双剣の片割れを握りしめ切りかかった。

そして・・・、男の体に刃が届くまであと数センチいや数ミリと言うところで・・・




「届かぬと言ったでしょう・・・。貴方には私は倒せない。」

聞こえるはずのない声が聞こえた。


「馬鹿な!!!」



ベルセルクは何が起こったのか理解できなかった。完全に時を止めたのだ。このタイムブレイカーの中で動ける生命体、あるいは物だったとしてもそれはあり得ないのだ。

しかし、現に自らの剣を握りしめた腕を見て、今までにない恐怖を感じた。


「そんなバカな!なぜ動いている。」

みると男の両腕のみが活動している。斬撃を止めていたのは男の手であった。そして、じわじわと活動の範囲を広げ最後に全身が動けるようになっていた。

ベルセルクは振り払おうとしたが、びくともしない。まるでコンクリートで固められているかのようだ。


「それでは、良い眠りを 時の王 カルディナ様。」


「ま、待て!!」


ベルセルクの声むなしく錆びた剣は、ベルセルクの胸を貫いた。


「マ、マリアス・・・、すまない・・」

ベルセルクは、男の顔に手を当て霞む視界の中にマリアスを見た。あろうことか男がマリアスに見えたのだ。そして、北の王は力尽き崩れ落ちた。



ベルセルクが力尽きると同時に再び時間が動き始め、壁は崩れ、炎は揺らめき、風が吹き始めた。


「あと少し・・・・、あと少しだ。」

男は意味ありげな言葉をつぶやきどこか遠くを見つめた。




この時この場所で・・・・・、物語が始まる。


時は壊れ、大地は躍動し、陰と陽は複雑に交わる。


世界は大きな変革を迎えようとしていた。


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