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2-2

◇95:名無しの元引きこもり

 アカンやらかした


 96:名無しの転生者

 お


 97:名無しの転生者

 おかえり


 98:名無しの転生者

 だいたい予想つくけど説明して


◇99:名無しの元引きこもり

 試験官達に忘却魔法使ったら、試験中の記憶全部消えちゃった。

 ワイの順番最後だったから、全員試験やり直しや。


 100:名無しの転生者

 草


 101:名無しの転生者

 ファーwww


 102:名無しの転生者

 クソ迷惑で草


 103:名無しの転生者

 新入生ガチギレ不可避


◇104:名無しの元引きこもり

 >>103

 試験中だから流石にキレてないけど、みんなワイのこと睨んできてすげぇ怖い。


 105:名無しの転生者

 そらそうよ


 106:名無しの転生者

 お前のやることのほうが怖いわ


 107:名無しの転生者

 試験やり直しって魔力消費とか大丈夫なん?やっぱ後日にやるんか?


◇108:名無しの元引きこもり

 >>107

 スケジュールカツカツだから今日中にやるって。

 今は全員に魔力回復薬配って回復した順に再試験してる。


 109:名無しの転生者

 他の新入生かわいそう


 110:名無しの転生者

 先生方も大変そうやな……


 111:名無しの転生者

 忘却魔法って解除とか復元とかできないん?


◇112:名無しの元引きこもり

 >>111

 普通の【忘却】は記憶を()()()()()()()()だけ。

 でもワイの【記憶消去】は、記憶そのものを()()()()()魔法。

 つまり復元は不可能。前に使った時は戻されたから、そのへんもちゃんと対策しといたんや。


 113:名無しの転生者

 はえーすっごい


 114:名無しの転生者

 すごいけどそのせいで最悪な事態になってるやんけ


 115:名無しの転生者

 そういや校長にリベンジ言うてたけど、レジストはされなかった?


◇116:名無しの元引きこもり

 >>115

 精神防御の魔法使われたけど、それもちゃんと対策して通した。


 117:名無しの転生者

 やるやんけ


 118:名無しの転生者

 どうやったん?


◇119:名無しの元引きこもり

 【記憶消去】は精神じゃなくて、脳の記憶中枢を直接いじるタイプや。イメージとしては電撃で海馬を焼く感じやな。魔法分類は精神系ちゃうから、精神防御はすり抜けられる。


 120:名無しの転生者

 なるほどなぁ


 121:名無しの転生者

 よう考えついたな


◇122:名無しの元引きこもり

 校長にも解説したら感心しとったわ。ほかの試験官の先生はガチギレしとったけど。


 123:名無しの転生者

 そらキレるやろ


 124:名無しの転生者

 むしろ怒らない校長が優しすぎる


◇125:名無しの元引きこもり

 校長先生意外とええ先生やで。他の先生がワイを訴えようとしたのをかばってくれたし。


 126:名無しの転生者

 草


 127:名無しの転生者

 マジで牢獄入れられそうになってたんか


 128:名無しの転生者

 校長先生そいつ衛兵に突き出した方がいいですよ


 129:名無しの転生者

 ほんでイッチの再試験はどうなったの


◇130:名無しの元引きこもり

 >>129

 もうそろそろでワイの番やな。また使う魔法安価で決めるけど校長に念押されたから精神系以外の魔法で頼むわ>>135


 131:名無しの転生者

 適当やなぁ……


 132:名無しの転生者

 お金複製の実演


 133:名無しの転生者

 他の受験者の魔力吸い取って試験妨害


 134:名無しの転生者

 会場の全員に【記憶消去】して全てを無かったことにする


 135:名無しの転生者

 【隠形看破】で試験場のハゲ全員看破してヅラ剥ぎ取り


 136:名無しの転生者

 イッチの だいばくはつ!


 137:名無しの転生者

 風魔法で女の子達の服をボロボロにする


 138:名無しの転生者

 水魔法で女の子達をヌルヌルにする


 139:名無しの転生者

 はい


 140:名無しの転生者

 決まったな


 141:名無しの転生者

 >>137

 >>138

 仲いいなお前ら


 142:名無しの転生者

 ヅラ剥ぎ取りってどうやんの?

 風魔法とかでふっとばすんか?


◇143:名無しの元引きこもり

 >>142

 打ち消し魔法ならいけるはず。

 ワイんとこの国だとヅラって魔道具製で、内側はツルツルだけどヅラに仕込まれた魔法回路のお陰で外れんようになってるんだって。

 でも逆に言えば装着者との魔力パスを打ち消して一時的に切断すればずり落ちるはずや。

 ほな行ってくるで!


 144:名無しの転生者

 行ってら


 145:名無しの転生者

 報告待っとるぞ


 146:名無しの転生者

 異世界のヅラってすごいんやな


 147:名無しの転生者

 今更だけど試験で無差別ハゲ晒しの魔法使うってまともじゃないやろ……


 148:名無しの転生者

 最初からまともじゃないぞ


    ◆


 なんとか自分の再試験を終えた僕は、他のみんなが終わるのを静かに見守っていた。


「では次、エイン!」


 少し緊張した声色で、試験官がエイン君を呼ぶ。


「はい!」


 さっきまでの焦りが嘘のように、エイン君は元気よく返事をして試験官のもとへ向かうと、僕たち新入生の方を振り返って、にっこりと笑った。


「みんな、さっきはごめん! これから面白いものを見せるから許してくれな!」


「試験と関係ないことは話さないように! 使う魔法を宣言して魔法を行使しなさい!」


 さらに緊張した声で、試験官が指示を出す。


「はい! 打ち消し魔法を使います!」


 その一言で、会場に動揺が走った。


「打ち消し魔法だと!?」


「難易度が高すぎて使える者がほとんどいない魔法じゃないのか?」


「何を打ち消すつもりだ……?」


「皆さん静かに! エイン君、早く魔法を使いなさい!」


 きょろきょろと訓練場を見渡すエイン君は、笑顔で手をひょいと上げる。


「えーっと……対象が必要ですよね!」


 一瞬、場の空気が凍る。


「対象……?」


 試験官たちの眉がぴくりと動いた。エイン君は得意げに指を伸ばした。


「校長先生! そこの試験官! あと、あの偉そうな人! お願いします!」


 一同、視線を向ける。校長は困惑を浮かべつつも一歩前へ。名前を呼ばれた試験官──たしかハーゲン教授は渋々とした足取りで出てくる。問題は『偉そうな人』だった。王国魔法師団と思しき男は怒りを浮かべて動かなかったが、隣の団長らしき人物に目配せされ、しぶしぶ前へ出てきた。


「お三方、どうぞこちらへ!」


 エイン君はにこやかに三人を中央に並ばせた。


「あの、エイン君……なぜ私たちなんじゃ?」


 校長の問いに、彼は肩をすくめてニコニコと答える。


「そんなの、皆さんが一番よくご存知じゃないですか?」


 校長の顔がぴくりと強張る。その視線が無意識に頭の上を泳ぐ。団長がそれを見て、じっと彼を見つめた。


「さぁ、いよいよ打ち消し魔法を披露します! 皆さん、注目してください!」


「待て、エイン君! それは──!」


 校長の制止は届かない。


【魔路切断】(パスサンダー)!」


「いかん!【固着】(フィックス)……!」


 静寂のあと──ズルッ。


 地面に滑り落ちるものがあった。カツラだ。校長の頭部は無事だったが、ハーゲン教授と魔法師団の男のカツラが、無残にも地面に転がった。二人が隠していた秘密は、文字通り明るみに出た。


 誰もが息を呑む。訓練場が、一瞬で凍りつく。校長は魔法の余韻が残る空気の中、動かず、静かに目を閉じていた。ハーゲン教授は硬直したまま、自身の頭上に手を伸ばしかけて、止まる。魔法師団の男は視線を泳がせながら、まるで何事もなかったように振る舞おうと、無言で一歩下がった。


 そして未だ静まり返る試験会場。だがその沈黙を破ったのは、エイン君のやけに素直な、感心したような声だった。


「……おお、校長、さすがですね」


 その一言で、張り詰めていた空気がほどける。


 ハーゲン教授と魔法師団の男は、我に返ったように動いた。

 床に転がったカツラを素早く拾い上げ、手慣れたような動きで頭に被りなおす。何も起きていない。そう言い張るように、二人は真顔を作った。


 だが──


「あっ、そのカツラ、魔術回路が焼き付いてるので、五分くらいまたないとくっつかないですよ」


 ズルッ。試験場の光源が二つ増えた。


 駄目だ、もう耐えきれない。


 僕の隣で、誰かが「ぷっ」と吹き出した。それを皮切りに、こらえきれない笑いが次々と連鎖していく。訓練場はもう、まともな空気ではなかった。みんな肩を震わせ、腹を抱え、涙を流している。僕も限界だった。目を逸らそうとしても、どうしてもあの二つの滑らかな頭頂部から目が離せない。


 その中で、エイン君はいつの間にか僕の隣に戻ってきて、すっと腰を下ろした。


「……くそっ、思ったより手強いな。次はもっと上手くやるからな、校長……」


 ──え、次?


 僕は思わず彼の顔を見た。悔しさに少しだけ得意気な笑みを混ぜたその表情に、僕の笑いも徐々に引いていった。


(……もしかして、本気でやってるのか)


 そんな考えがよぎったとき、訓練場の中央で誰かが静かに手を上げた。


「──試験はまだ続く。持ち場に戻れ」


 低く落ち着いた声。それだけで、さっきまでの喧騒が嘘みたいに引いていく。気づけばみんな、椅子に戻り始めていた。僕も慌てて背筋を正し、息を整えた。


 笑いの余韻はまだ残っていたけど──試験は、まだまだ続くらしい。

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