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1-3

 109:名無しの引きこもり

 ……なんて言えばええんや? 急に言われても思いつかんのやが


 110:名無しの転生者

 は?


 111:名無しの転生者

 えぇ……


 112:名無しの転生者

 そんくらい自分で考えろや


◇113:名無しの引きこもり

 つっても考えるのめんどいし、お前らに任せるわ。

 とりま何て言い訳するか安価で>>120


 114:名無しの転生者

 適当やなぁ……


 115:名無しの転生者

 人任せにすなーっ!


 116:名無しの転生者

 アドリブで言えアドリブで


 117:名無しの転生者

 答えは沈黙


 118:名無しの転生者

 正直に引きこもりたいから学校行かないって言う


 119:名無しの転生者

 また校長に忘却魔法連打


 120:名無しの転生者

 こういうのって普通はお金がないとか、家族の世話とかそんな感じの理由じゃないの?

 俺も前世はそれで学校辞めたし


 121:名無しの転生者

 校長のハゲを晒す


 122:名無しの転生者

 はい


 123:名無しの転生者

 普通だな!


 124:名無しの転生者

 前後のレスひっでーな


 125:名無しの転生者

 >>120

 かわいそう、元気出して


◇126:名無しの引きこもり

 >>120

 ええやん、マッマと二人暮らしだからそれ理由にするわ


 127:名無しの転生者

 ありがちな理由だな


 128:名無しの転生者

 母親としては引きこもりを引き取ってもらったほうが良いのでは?


    ◆


 レオナルドは、エインが何かを言い出すのを黙って待っていた。居間には沈黙が落ち、二人の間に、逃げ場のない視線が静かに交差する。


 やがて、エインが観念したかのように口を開いた。


「……俺には、母さんがいる。だから校長、魔法学校には行かないよ。仕事もあるし、母さんを守らなきゃいけない」


 レオナルドはすぐには応じなかった。エインの顔を見つめたまま、やがて頷く。


「……そうか」


 それ以上は踏み込まず、視線を外す。居間を一度だけ見回し、再びエインに向き直った。


「だがな、エイン君」


 口調は穏やかなままだった。


「君の魔法は、かなり練られておる。独学にしては、だ」


 言葉を選ぶように、続ける。


「それほどの才能を……こんな村で、こんなところで終わらせてしまえば、いずれは腐らせてしまう。──それは、あまりに惜しい」


「……こんなところ?」


 エインの声が、低く落ちた。


「今、何て言った」


 一歩、前に出る。


「この村が……母さんがいる場所が、〝こんなところ〟かよ」


 語気が、強まる。


「才能が腐るとか、惜しいとか、それはそっちの都合だろ! 俺にとっては、ここが全部なんだよ!」


 言葉を重ねるうちに、声が荒れていく。椅子が軋む音がした。エインは完全に立ち上がっている。


 レオナルドは、ほんの一瞬だけ言葉を失った。すぐに両手を上げ、首を振る。


「すまん。言葉が過ぎた」


 穏やかだが、はっきりと告げる。


「君や、この村を貶めるつもりはなかったのじゃ」


 だが、その弁明が終わる前に──


「……エイン、そんなふうに思っていたのね」


 背後から、静かな声が落ちてくる。二人が振り返ると、居間の戸口に立っていたのは、エインの母

──アリアだった。


「──あ、母さん……!」


 エインの表情から、先ほどまでの険しさが抜け落ちる。代わりに浮かんだのは、戸惑いと焦りだった。


 アリアは一歩、部屋に入る。その足取りはゆっくりで、どこか慎重だった。


「私のことなんか、気にしないで。魔法学校に行ってらっしゃい」


「何言ってんだよ、母さん!」


 思わず声が荒くなる。だが、アリアは視線を逸らさなかった。


「……知ってたのよ」


 アリアは静かに言った。


「あなたが毎晩、遅くまで起きていること。魔法の練習をしていたんでしょう? 音で分かるもの」


 エインは言葉を失う。


「本当は……勉強したかったんでしょう」


 言い切る前に、ほんの一瞬だけ言葉が揺れる。


「でも……私がいるせいで行けないんだって、あなたがそう思ってたなら、それは違うわ」


 声は穏やかだったが、そこには抑えきれない不安が滲んでいた。


「あなたに置いていかれるのは……正直、怖い」


 アリアは弱く微笑んだ。


「でもね、それ以上に……あなたが、ここで立ち止まるほうが、ずっと怖いの」


 言葉の終わりとともに、涙が一粒、頬を伝った。エインは、わずかに息を詰めた。


「違う! 俺は、そんなつもりじゃ……」

 エインの声が裏返る。動揺が隠しきれず、どこか余裕を失っているようにも聞こえた。


「母さんが気にすることはないよ! だから……そんな顔するなってば!」


 アリアは驚いたように目を見開き、それから、ゆっくりと微笑んだ。涙を拭いながら、息子を見る。


「なら、お願い。学校に行って」


 彼女の声は優しく、そして確固たる意志に満ちていた。


「エインには、エインのしたいことをしてほしいの。それが、私の幸せだから」


 レオナルドは、何も言わなかった。ただ、その場に立ち、親子のやり取りを静かに見守っている。


 やがて、エインが口を開いた。


「……クソ」


 視線を逸らしたまま、ぶっきらぼうに続けた。


「分かったよ。行くよ。行けばいいんだろ」


 声が、少しだけ低くなる。


「だから……母さんも、泣くなよ」


 握りしめた拳が、固く結ばれている。アリアは小さく頷き、何も言わずに微笑んだ。


 こうしてエインは、自らに課していた枷を外した。誰かに命じられたわけでも、押し出されたわけでもない。それでも彼は、自分の足で、歩き出すことを選んだ。


 130:名無しの転生者

 詰んだ


 131:名無しの転生者

 お


 132:名無しの転生者

 戻ってきたか


 133:名無しの転生者

 詰んでて草


 134:名無しの転生者

 何があった?


 135:名無しの転生者

 逮捕されちゃった?


 136:名無しの転生者

 どんな話をしたんだよ


◇137:名無しの元引きこもり

 >>120の通りに話したら最初はいい感じやったのに、途中でマッマが参戦してきた。

 そしたらなぜか感動路線に突入して、「本当は学校行きたかったんやろ?」みたいな空気になった。

 マッマも泣き出すし、もう無理。詰んだ。>>120のせいやぞ、ふざけんな。


 138:名無しの転生者

 草


 139:名無しの転生者

 とばっちりで草


 140:名無しの転生者

 一番まともな案だったのにかわいそう


 141:名無しの転生者

 まぁ親に泣かれたら流石に無理やろな


 142:名無しの転生者

 もう正直に引きこもりたいから学校行きたくないって言っちゃえば?


 143:名無しの転生者

 >>142

 余計に親を泣かせるのやめろ


 144:名無しの転生者

 ほんで結局この後どうするの?


◇145:名無しの元引きこもり

 >>144

 マッマをこれ以上悲しませたくないから渋々了承したわ。

 今日のうちに荷物まとめて、明日には王都の魔法学校に向けて出発。

 入学式は一週間後らしい。

 ワイの自由が……さよならワイの楽園……。


 146:名無しの転生者

 ようやく覚悟決めたか


 147:名無しの転生者

 引きこもり卒業おめでとう


◇148:名無しの元引きこもり

 めでたくないわ! まぁけど決まったもんはしゃあないけどな。

 学校生活とかクソ面倒そうやし、またなんかあったらお前ら頼むわ。


 149:名無しの転生者

 ええで


 150:名無しの転生者

 面白そうやしええよ


 151:名無しの転生者

 ワイらはいつでもここにおるで!


 152:名無しの転生者

 掲示板に常駐してる奴に、まともな学校生活のアドバイスができると思うなよ。


 153:名無しの転生者

 >>152

 やめろ


 154:名無しの転生者

 >>152

 まぁそれはそう


    ◆


「じゃあ母さん、行ってくるよ」


「行ってらっしゃい」


 朝もやが漂う中、エインは旅立ちの準備を終え、家の前に立っていた。家の戸口に佇む母親アリアは、いつもより少し寂しげな微笑みを浮かべている。荷物を背負ったエインの姿は、どこか頼りないが、それでもアリアの目には頼もしく映っているようだった。


「エイン君のことはワシにお任せください」


 校長のレオナルドは、しっかりとした足取りでエインの隣に立ち、アリアに軽く頭を下げる。深く刻まれた皺と穏やかな眼差しが、安心感を与えていた。


 エインは母親に別れを告げると、ため息を一つついて歩き出した。


「馬車は手配しておるぞ。入学まであまり猶予もない、急がねばな」


「……あぁ」


 レオナルドの声には急かす調子があったが、エインの足取りは明らかに重い。家の方を何度も振り返りながら、名残惜しそうに歩いていく。村の小道を歩く二人の姿を、朝日が柔らかく照らしていた。鶏の鳴き声や農夫たちの作業音があたりに響き、村はゆっくりと目覚めていく。レオナルドは特に何も言わず、エインに歩幅を合わせて歩く。その横顔には、どこか温かみがあった。


「おや、これはレオナルド殿ではありませんか。どうしてこの村に?」


 村の出入り口に差し掛かったところで、数人の男たちが声をかけてきた。役人然とした服装に、真剣な表情。手には分厚い帳簿のようなものを抱えている。


「おぉ、たしかにワシはレオナルドだが……お主らは誰じゃ?」


 レオナルドは足を止め、男たちを見やる。


「私たちは王都直轄の税務調査官です。この村の納税記録に不自然な点がありまして、その調査に参りました」


 調査官の一人が帳簿を掲げ、淡々と説明を続ける。その言葉に、エインの肩が一瞬だけ跳ねた。そして次の瞬間、やや不自然な笑みを浮かべて、唐突にレオナルドに話しかけた。


「……校長、あの、馬車もう準備できてますよね? 急ぎましょうか、すぐに!」


 急かすように言葉を畳みかけながら、エインはレオナルドの袖を軽く引っ張る。


 レオナルドは、エインの急な変化に一瞬だけ言葉を失ったが、すぐに苦笑まじりに頷いた。


「うむ、では行こうかの」


 後ろを振り返ることなく、二人は馬車の方へと向かっていく。調査官たちはその様子を一瞬不思議そうに見ていたが、すぐに帳簿を手に村の方へと足を向けた。


 こうしてエインは、魔法学校へと旅立つことになった。


 そのすぐ後、村ではちょっとした騒動が起きることになるのだが……それは彼とは関係のないお話──。

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