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1-2

◇60:名無しの引きこもり

 ついに恐れていた人物が来てしまった……


 61:名無しの転生者

 誰よ?


 62:名無しの転生者

 そらあいつしかおらんやろ


 63:名無しの転生者

 衛兵かな


 64:名無しの転生者

 「警察の者ですが、イッチさんはご在宅ですか?」


 65:名無しの転生者

 早くこいつを逮捕しろ!


◇66:名無しの引きこもり

 >>63

 んなわけあるかい! 手紙にあった偉い人や。

 ヒゲモジャのじいさんで、魔法学校の校長もやってるらしい。


 67:名無しの転生者

 まんまダ○ブルドアやな


◇68:名無しの引きこもり

 >>67

 いやハゲてるから違う。

 ヅラはしてるから見た目はそれっぽいけどな


 69:名無しの転生者

 草


 70:名無しの転生者

 また髪の話してる……


 71:名無しの転生者

 ヅラなのなんで分かったん? やっぱずれてたんか?


◇72:名無しの引きこもり

 >>71

 魔法で調べた


 73:名無しの転生者

 ファッ!?


 74:名無しの転生者

 そんな魔法あんの!?


 75:名無しの転生者

 同じくヅラのワイ、恐怖する


◇76:名無しの引きこもり

 >>74

 暇すぎてワイが開発したオリジナルの魔法や。

 探知魔法に【音響探査】(ソナー)ってのがあるんやけどそれをヅラ発見用に最適化した。

 名付けて【隠形看破】(ピカー)や!

 怪しいおっさんが居たらとりあえず使ってる。村長もヅラだった。


 77:名無しの転生者

 ネーミング妙に上手くて草


 78:名無しの転生者

 ハゲにどんな恨みがあるんや……


 79:名無しの転生者

 使い道がなさすぎる


 80:名無しの転生者

 ハゲ特効の魔法とかどんな需要があるんだよ


◇81:名無しの引きこもり

 >>80

 原理的にはカツラ以外も探せるぞ、村長の裏金の隠し場所も把握しとる。


 82:名無しの転生者

 お前のところの村長ろくでもないな


◇83:名無しの引きこもり

 あ、やべっ、スレに夢中で校長の話聞いてなかったわ。

 しかも出会い頭に【隠形看破】使ったのもバレたみたいで警戒されてる。


 84:名無しの転生者

 ちゃんと聞いとけよ


 85:名無しの転生者

 そらハゲてるのバレたら警戒するやろなぁ


 86:名無しの転生者

 こういうときこそ忘却魔法使えや。会話をロードしろ。


◇87:名無しの引きこもり

 >>86

 確かに! 早速やるわ!


 88:名無しの転生者

 うーんこの


 89:名無しの転生者

 倫理観のかけらもない


◇90:名無しの引きこもり

 あ


 91:名無しの転生者

 何?


 92:名無しの転生者

 なんかあった?


◇93:名無しの引きこもり

 失敗した。なんでか知らんけど、魔法が効いてない。よく見たら変な指輪つけてるしそのせいかも。


 94:名無しの転生者

 やばいじゃん


 95:名無しの転生者

 対策されててウケる


◇96:名無しの引きこもり

 しかも忘却魔法かけ直そうとしたら先に【精神防壁】(マインドガード)の魔法使われた。反応早すぎてビビる。何回やっても通らんし、普通に校長強い。


 97:名無しの転生者

 だめみたいですね……


 98:名無しの転生者

 もう無理だろ、学校じゃなくて牢屋行きやん


◇99:名無しの引きこもり

 あれ、意外と校長怒ってない。なんか事情があるんやろ? みたいな感じで察してくれてる。


 100:名無しの転生者

 お


 101:名無しの転生者

 ワンチャン出てきたな


 102:名無しの転生者

 事情(引きこもりたいだけ)


 103:名無しの転生者

 なんかそれっぽい理由言えば納得するんちゃう?


◇104:名無しの引きこもり

 せやな、とりあえず説得してみるわ


    ◆


 レオナルドは魔法庁で職員に【想起】(リメンバー)の魔法を使用し、職員が過去に【忘却】(オブリビオン)の魔法を受けていたことを突き止めた。精神魔法の使用は被使用者の同意がなければ犯罪に当たる。しかし、今回の対象者に興味を抱いたレオナルドは、憤慨する職員たちを説得し、自ら再検査に向かうことにした。


 ──数日後。


 レオナルドは王国の端に位置する、辺境の村に訪れていた。雲一つない穏やかな空の下、村の通りには洗濯物が風にはためいていた。彼は、目的の家の前に立ち、質素な木の戸をノックする。


「はーい」


 ゆっくりと木の戸が開き、中から女性が顔を覗かせる。対象者の母親であるアリアだろう。資料に記された年齢よりもずっと若く見える。


「ワシは魔法庁の者じゃが……先日、こちらに手紙が届いておるはずじゃ。再検査の件でな」


「ああ……はい、はい。聞いてます。息子に用ですか? 今、呼びますね」


 アリアは柔らかな笑みを浮かべ、奥へ向かって声をかけた。


「エイン、魔法庁の方がお見えよ」


 その瞬間、家の奥、居間の陰から黒髪の少年がじっとこちらを見ているのに、レオナルドは気づいた。

 視線が交わった刹那、レオナルドは微かな魔力の震えを感じ取る。


「!」


 思わず身構えるが、耐精神魔法用の指輪は反応を示さない。少なくとも精神系の魔法ではないようだ。


「ふむ……」


 レオナルドは警戒を緩めず、少年の様子を観察し続けた。


 アリアに案内され、校長は居間の椅子に腰を下ろした。古びた木製の家具が整然と並び、慎ましやかな生活ぶりが窺える。対象者であるエインは、居間の隅に座り込んでいる。彼は手元をじっと見つめており、視線が落ち着きなく彷徨っている。


「エイン君、どうかしたかね?」


 校長が問いかけても、少年は反応が鈍い。まるでどこか別の世界に意識を飛ばしているようだった。

 仕方なく、校長は用意してきた建前を話し始めた。職員が魔法攻撃を受けたため検査ができなかったこと、その謝罪、そして再検査の必要性について。


「……それで、検査の結果が良ければ君に魔法学校に──」


 言葉が終わる前にエインは唐突に叫んだ。


「……【忘却】!」


 青白い光が室内に走る。校長の身につけていた指輪が反応する。


(──まずい!)


 ……魔法庁支給の耐精神魔法用指輪。並の強度の精神魔法なら自動防御が作動する。だが今回、発動こそしたものの──


 ピシッ……と小さな音を立てて、表面にヒビが走った。


(たった一発で指輪が……! このままではいかん!)


「【精神防壁】!」


 魔力の膜が空間に展開される。透明な障壁がレオナルドの周囲を包み込み、空気が静かに震える。


「まだだ!【忘却】!」


 数瞬遅れてふたたび青白い光がほとばしる。第二波の呪文は真正面からぶつかってくる。だが──先の障壁がその衝撃を受け止め、鈍い音を立てて揺れる。すぐさまレオナルドは魔力を流し、亀裂の走った部分を補修した。


「執念深いのう……だが、それでは二度目じゃぞ?」


 そう呟いた瞬間──


「【忘却】……!」


 三度目の詠唱が響く。しかし今回は、どこか感触が違った。魔力の軌道が、先ほどまでとは異なる〝角度〟で飛来してくる。


「ほう……? んんッ!?」


 次の瞬間、障壁にぶつかるはずの魔力が、まるで風に流されるように滑り、障壁の外縁を撫でるように逸れていった。


(なにっ……!?)


 魔法はわずかに弧を描き、レオナルドの左肩へと鋭く食い込もうとする。咄嗟に体を捻った彼は、右腕を素早く振りかぶり──


「【精神防壁】!」


 魔力の膜が空間を這い、既存の障壁が再展開される。まるで盾を構え直すかのように。光と光が空中で衝突し、鋭い反響音とともに周囲の空気が撓んだ。


(詠唱の速さではなく、精度と軌道……)


 レオナルドは一歩引き、息を整えながら目を細めた。


「ただ速いだけではない……考えておるな。完全に、〝障壁の構造〟を読んでいた……」


 彼の表情に、ただの驚きではない、ある種の感動が浮かんでいた。その後も一進一退の攻防の末、ようやく最後の波が引いた。どうやら諦めたようだ。校長は肩で息をする。


「ふぅ……やはり只者ではないのう」


 レオナルドはゆっくりと息を整え、静かに語りかけた。


「エイン君、君にも事情があるのじゃろう?」


 エインは未だにこちらをじっと見つめている。害意は感じない。むしろ、その目は何かを恐れているように見えた。


「まずは話を聞かせてくれんか。君の力を無駄にするのは、あまりに惜しいからのう。……それに、誰にも話せぬ事情があるのなら、ワシが聞こう」


 エインはしばらく視線を泳がせていたが、やがて小さく息をついて動きを止めた。


    ◆


 109:名無しの引きこもり

 ……なんて言えばええんや? 急に言われても思いつかんのやが


 110:名無しの転生者

 は?

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