7-1 地の色は赤色
【悲報】小市民ワイ、第一王子に決闘を申し込まれる
◇1:名無しの引きこもり
ちょっと聞いてくれ
2:名無しの転生者
でたわね
3:名無しの転生者
またまたテンプレキタ───(゜∀゜)───!!!!
4:名無しの転生者
決闘とは懐かしいなぁ、俺も学生の頃は貴族相手によくやってたよ。
5:名無しの転生者
剣闘士のワイは毎日やってるで。次の試合に勝ったら奴隷から解放されるんだ!
6:名無しの転生者
それで、イッチは何で決闘するハメに?
◇7:名無しの引きこもり
ワイ甘党なんやけど、学校内で貴族がお茶会開いとるって聞いてな。菓子も豪華って聞いたからハシゴしてたんや。
8:名無しの転生者
お茶会をハシゴ!?
9:名無しの転生者
面の皮が厚すぎる
10:名無しの転生者
ハロウィンちゃうねんぞ
◇11:名無しの引きこもり
ほんで最後に第四王女のお茶会で菓子食って帰ろうとしたら、第一王子にばったり会ってもうてな
12:名無しの転生者
王女!?
13:名無しの転生者
ついにヒロイン登場か!?
14:名無しの転生者
何があったら王女とお茶会することになるんだよ
15:名無しの転生者
イッチみたいな危険人物を通すとか護衛ザルすぎひん?
16:名無しの転生者
で、見た目は? やっぱ美人だった?
◇17:名無しの引きこもり
あー、うん。普通に美人やったな。なんかこう、絵画とかにいそうな感じの。
18:名無しの転生者
で、その王女どうだった? 好みだった?
◇19:名無しの引きこもり
>>18
手作りの焼き菓子がな、めちゃくちゃうまかった。ガッツリ好み。あと紅茶の温度も完璧やったし、砂糖の量もちょうどよかった。プロの味や。あと椅子のクッション性が絶妙やった。なんか全部が"わかってる"感あったわ。
20:名無しの転生者
そっちはきいてねーよ!!
21:名無しの転生者
てか王子とはどうなったん? その場で鉢合わせたんやろ
◇22:名無しの引きこもり
>>21
それがさぁ、王女に親切で「王族辞めたほうがいいよ」とか、「王族の誇りとか、第一王子のいうこととかくだらない」とか言っただけなのに、横から第一王子が急にキレだして、いきなり決闘申し込まれたんや。最近のキレる若者って怖いわね~。
23:名無しの転生者
どんな親切だよ
24:名無しの転生者
そら決闘申し込まれて当然だよ
25:名無しの転生者
それで、いつから決闘は始まるんだ? 早くイッチがボコボコにされるところを見せてくれ!
◇26:名無しの引きこもり
>>25
夜七時に訓練場来いって言われたけど、もう過ぎてるな。今はハンバーグ食ってる。
27:名無しの転生者
は?
28:名無しの転生者
え?
29:名無しの転生者
決闘すっぽかしてんじゃねーよ!
30:名無しの転生者
王子よりハンバーグ取るなwww
◇31:名無しの引きこもり
すっぽかすも何も了承してねーよ、俺が断る前に王子どっか行っちゃったし。
32:名無しの転生者
王子もせっかちやな
33:名無しの転生者
ほなら王子探して断りに行けばよかったやんけ、七時に訓練場行けば会えるんやから
◇34:名無しの引きこもり
やだよめんどくさい。それに夜七時は寮の食堂で夕食が出る時間やぞ、食堂のおばちゃんが作るハンバーグをワイは楽しみにしてたんや。
35:名無しの転生者
かわいい
36:名無しの転生者
ハンバーグ出るならしゃあないな
37:名無しの転生者
ハンバーグに負ける王子……
38:名無しの転生者
ハンバーグ美味しいからね、しょうがないね
◇39:名無しの引きこもり
おばちゃんの料理はほんま最高やで。でもなぜか知らんけど今日に限って食堂に誰も来ないんやがなんでや? 寮の奴らもいないしみんなどこ行ったんや? あいつらハンバーグ嫌いなんか?
40:名無しの転生者
決闘騒ぎ、夜七時、訓練場……あっ
41:名無しの転生者
どこ行ったんやろなぁ……
42:名無しの転生者
ハンバーグ出るのにもったいない
◇43:名無しの引きこもり
>>42
ほんまやで。ハンバーグ食べてるのワイしかおらんからおかわりし放題やけど、おばちゃんが皆自分の料理嫌いになったと思って泣いてる。おばちゃん泣かせるなんて寮の奴ら許せへんわ! あいつら戻ってきたら全員シバいたる!
44:名無しの転生者
おばちゃんカワイソス
45:名無しの転生者
泣かせたのはお前なんだよなぁ……
◆
訓練場の前は、ぽつぽつと人が集まりはじめていた。周囲のざわめきに混じって、「第一王子」「決闘」「あの平民」という単語が繰り返される。
その中で、セレナはただ一人、黙って空を見上げていた。風が肌を撫でるように流れ、空は少しずつ茜色から藍へと変わっていく。
目を閉じると、ついさっきの出来事がそのまま浮かんできた。
──ベイル兄様が、決闘を宣言して去ったあの瞬間。
彼の背が消えると、場に残されたのは妙な沈黙だった。気まずさとも違う、言葉にならない空気。静まり返った中、セレナはまだ立ち尽くしていたエインの方を見つめた。
「……ごめんなさい。私のせいで、巻き込んでしまって」
エインは、何か考えるふうでもなく、あっさりと答えた。
「いや、別に。事情はまだよくわかんないけど、俺がちょっと失言しただけでしょ? あんたが謝ることじゃないって」
「でも、決闘なんて……」
セレナの声は震えていた。決闘、それは言葉遊びでは済まない。王族にとっては、形式でもあり誇りでもある。
だがエインは、どこか呑気な顔で首を傾げた。
「そんな大げさなもんかね。それに、関係ない人が気にするようなことでもないし」
「……関係ない人、ですか」
セレナは小さく目を伏せた。言われてみればその通りだ。自分など、名ばかりの王族でしかないのだから。けれど、どうしてだろう。その〝関係ない〟という言葉が、逆に胸に残った。
(……あの人なりの、気遣いだったんだと思う)
遠回しな拒絶のようでいて、直接的な拒絶はしない。線を引くのではなく、巻き込まないように一歩下がるような──そんな、妙に優しい距離の取り方だった。心のどこかが、静かに揺れた。
どんなつもりで決闘に来るのかは、わからない。けれどあの時、あれほど淡々としていた彼が、何も考えていないはずがない。あの目は、ふざけた調子の裏で、なにかを隠していたように見えた。その理由が、自分のためであったかどうかは分からない。でも、ほんの少しだけ、そうであってほしいと願ってしまう。
「……やっぱり、気にしてたんだと思います。あの人なりに」
セレナは静かに歩き出した。決闘の行方を見届けるために。たとえ何も起きなくても、構わない。彼がどうするのか、それだけは──どうしても、見届けたかった。




