1-1 終わりの始まり
【悲報】ワイの引きこもり生活、ついに終わる
◇1:名無しの引きこもり
このままでは魔法学校にぶち込まれてしまう!
助けてくれ!
2:名無しの転生者
急にどうした?
3:名無しの転生者
状況わからんけど学校には行ったほうがいいと思うよ
4:名無しの転生者
転生までしておいて穀潰しのニートはいかんでしょ
◇5:名無しの引きこもり
違う! 俺はニートではない! 引きこもりだ!
6:名無しの転生者
同じでは?
7:名無しの転生者
そもそも何でぶち込まれるの? 義務教育かなにか?
◇8:名無しの引きこもり
>>7
ある意味では義務やな
ワイの住んでる国では、魔法適性のある子供はみんな魔法学校行かなあかんねん
それでこないだも、ワイの村に検査員が来とった
9:名無しの転生者
あー、それで検査にバッチリ引っかかったと
◇10:名無しの引きこもり
>>9
いや、検査はまだ受けてないな
11:名無しの転生者
どういうこと?
12:名無しの転生者
居留守でも使ったのか?
◇13:名無しの引きこもり
検査する人は毎年村に来てたんやけど、学校は嫌やから、毎回検査を〝なかったこと〟にしてたんや
14:名無しの転生者
なかったこと……???
15:名無しの転生者
概念系のチートでも持ってんのか?
◇16:名無しの引きこもり
ワイのチートは魔法系なんや。
それで検査員に忘却魔法をかけて、ワイの検査だけ忘れさせとった。
毎年その繰り返しやから、もう年中行事みたいなもんやな。
17:名無しの転生者
えぇ……
18:名無しの転生者
毎年記憶消される検査員カワイソス
19:名無しの転生者
ふーん、体術チートもらったワイなら手刀で同じことできるけどね
20:名無しの転生者
>>19
んなことで張り合うなw
21:名無しの転生者
検査受けてないなら、なんでイッチはぶち込まれそうになってるんや?
◇22:名無しの引きこもり
>>21
なんかバレたっぽい。
こないだ魔法庁ってところから手紙がきて、『先日、検査員が精神魔法による攻撃を受け、あなたに対する魔法適性検査を実施できなかった事実が確認されました。つきましては、魔法庁上級役員が直接検査を行いますので、該当日は自宅にて待機してください』……って書いてあった。
23:名無しの転生者
終わりやね
24:名無しの転生者
検査員に魔法かけたの完全にバレてて草
25:名無しの転生者
絶対激おこやん……
26:名無しの転生者
そもそも勝手に人の記憶消してええんか?ワイの転生先ではガッツリ犯罪やけど
◇27:名無しの引きこもり
>>26
知らん
28:名無しの転生者
えぇ……
29:名無しの転生者
無責任すぎる
30:名無しの転生者
魔法学校以前に牢獄にぶち込まれそう
31:名無しの転生者
ほんでイッチどうすんの?自首するの?
◇32:名無しの引きこもり
>>31
それがわからんからこのスレ立てたんだよ
今日その偉いやつが再検査しに来るからどうすればいいか教えてクレメンス
33:名無しの転生者
どうするって、素直に検査受けて学校行けばええやん
34:名無しの転生者
往生際が悪いぞ
◇35:名無しの引きこもり
>>33
いやや! なんで学校とかいう窮屈な場所に行かなあかんねん!
ワイは自由な引きこもり生活を満喫するんや!
36:名無しの転生者
うーんこのニート思考
37:名無しの転生者
学校行かないんだったらせめて仕事しろよニート
◇38:名無しの引きこもり
ニートちゃう言うてるやろ! ちゃんと仕事だってしとるわ!
39:名無しの転生者
引きこもりがどうやって仕事すんねん
◇40:名無しの引きこもり
>>39
ワイには魔法チートがあるんや!
魔法で野菜作ったり、お金造幣したり、村の節税したり、色々やってるわ!
41:名無しの転生者
えらい
42:名無しの転生者
えら……ん?
43:名無しの転生者
なんか不穏なワードがあるんだけど
44:名無しの転生者
野菜作るのは良いとして後ろ2つは何?
45:名無しの転生者
造幣って何? イッチは造幣局に勤めてるんか?
46:名無しの転生者
節税って何? イッチは税理士だったの?
47:名無しの転生者
それって合法なやつ?
◇48:名無しの引きこもり
>>45
違う、家にある硬貨参考にして同じやつ生成してる
>>46
違う、村長に頼まれて検査官みたいに徴税官の記憶を改ざんしてるだけ
>>47
知らん
49:名無しの転生者
えぇ……
50:名無しの転生者
流石に知らないは無理がある
51:名無しの転生者
知らなくてもやったらあかんってわかるやろ
52:名無しの転生者
村ぐるみで脱税してるのやばすぎる
53:名無しの転生者
やっぱり魔法学校じゃなくて牢獄にぶち込まれるだろこいつ
◇54:名無しの引きこもり
あ、誰か来た
◆
レオナルド・グリムフォード。魔法学校の校長にして、魔法庁上級職員。その名を知らぬ者は、王都にはいない。彼は魔法学校の入学予定者リストを受け取るため、魔法庁の庁舎を訪れていた。
深紅の外套をまとった老紳士が回廊を歩くだけで、空気が張りつめる。庁内の職員たちはその姿に気づくと、即座に背筋を伸ばし、緊張した面持ちで挨拶を交わした。
「レオナルド様、本日はお越しいただきありがとうございます」
応対に出た職員は一礼してから、続けて書類を差し出す。その所作は丁寧だが、どこかぎこちなさが滲んでいた。
「こちらが、今年度入学者の一覧となります。本来であれば、こちらからお届けすべきものでしたが……」
「いやいや、ついでの用事じゃよ。長官に少し話したいことがあっての」
レオナルドは穏やかな微笑を浮かべ、ゆったりとした動作で書類を受け取り、その場で目を通し始めた。
「ふむ……なかなか面白そうな面子が揃っておるの。それに、今年で三学年すべてに王族たちが顔を揃えることになるか」
「ええ。派閥争いが過熱するのではと、我々も少々懸念しております」
そのときだった。庁内の奥から、怒号が響いた。
「何をやっているんだ!」
一瞬で空気が凍りつく。周囲の職員が一斉に動きを止める中、レオナルドはわずかに眉を寄せた。廊下の向こうから、続く叱責の声が聞こえてくる。
「今年こそ検査を忘れるなと、あれほど念を押したはずだ! なぜ検査結果がない!?」
「い、いえ……確かに対象者の家は訪問しました。しかし……」
「しかしもなにもない! もう間に合わんのだぞ!」
叱られている職員の声には、戸惑いと、どこか釈然としない曖昧さが滲んでいた。レオナルドの眉間に、さらに皺が刻まれる。
(何か……妙じゃのう)
騒ぎを横目に、彼は足を止め、職員たちの様子をじっと観察した。その視線が留まった先、目の奥に、針先ほどの魔力の揺らぎ。凡庸な者には気づけぬほどの痕跡だが、数多の魔法を見てきた老練の魔導師にとっては、看過できぬ異物だった。
(……魔力の痕跡、か。しかも、見慣れぬ性質じゃ)
見逃すには、あまりにも不自然。しかもそれは、単なる残滓ではない。意図がある。まるで──見られること自体を避けようとしているかのような。
(面白い。これは……追わずにはいられん)
老獪な探究者としての火が、静かに胸の内で灯る。レオナルドは音もなく歩み寄り、騒ぎの中心にいた職員たちの前に立った。その眼差しには柔らかな笑みを浮かべつつも、隠しきれぬ鋭さが宿っている。
「……お主らが話しておる、その対象者。名を教えてくれんか。──ワシの手で、確かめねばならんようじゃ」




