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4-2


  82:名無しの転生者

 今更だけど授業って座学だけじゃなくて実技もあるやろ。そっちはどうなん?


 ◇83:名無しの引きこもり

 >>82

 実技のほうがよっぽどキツイんよ……


  84:名無しの転生者

 なんでなん? 実技って一番楽しいとこちゃうんか?


  85:名無しの転生者

 正々堂々と魔法ぶっ放せるんやろ? 逆にご褒美やん


  86:名無しの転生者

 俺もこないだ軍事訓練でICBMぶっ放したけどめっちゃ楽しかったわ


 ◇87:名無しの引きこもり

 >>85

 何の魔法撃ってると思う? ただの初級攻撃魔法や


  88:名無しの転生者

 地味すぎて草


  89:名無しの転生者

 まぁ最初はそんなもんやろ、頑張って耐えろや


  90:名無しの転生者

 俺だってICBM撃つ前は竹槍握ってたんだぞ


 ◇91:名無しの引きこもり

 >>90

 いや基礎練とか言われて毎日何十発も撃たされるんやで? ワイの魔力量でできる

 わけ無いやろ


  92:名無しの転生者

 そういやこいつの魔力量クソ少ないんだったな


  93:名無しの転生者

 それでどうしてんの? ノルマ無理やん


 ◇94:名無しの引きこもり

 そらもう毎日、魔力回復薬をガブ飲みよ


  95:名無しの転生者

 あのクソマズいやつか。


  96:名無しの転生者

 入学式みたいに吐いたりしないのか?


 ◇97:名無しの引きこもり

 >>96

 それはもう大丈夫。今日は食材持ち込んで飲んでるからな。ソーダ水とはちみつ混

 ぜると普通にうまいんだよ。次はミントも入れてみようかな。


  98:名無しの転生者

 結構楽しんでるやんけ


  99:名無しの転生者

 そのうちポーションシチューとか作りそうだな


 ◇100:名無しの引きこもり

 あっ、やばい


 101:名無しの転生者

 なんや急に


 102:名無しの転生者

 どうした


【悲報】魔法学校の授業、地獄


 ◇103:名無しの引きこもり

 今も居残りしてたんやけど、魔力回復薬なくなった。魔力切れで体が動かん……


 104:名無しの転生者

 雑魚すぎて草


 105:名無しの転生者

 毎回居残りしてんのに備えてないのアホやん


 ◇106:名無しの引きこもり

 おかしいな……前回と同じ量の回復薬を持ち込んだのに……


 107:名無しの転生者

 同じ量……あっ(察し)


 108:名無しの転生者

 もしかしてソーダ水込みで同じ量持ち込んだ?


 ◇109:名無しの引きこもり

 あっ、そういうことか! ソーダ水で割った分回復量減ってたんや! やってもうた!


 110:名無しの転生者

 アホすぎて草


 111:名無しの転生者

 こんなんが首席でいいのか本当に


 112:名無しの転生者

 てか、居残り中なら教師おるやろ、助けてもらえや


 ◇113:名無しの引きこもり

 >>112

 いや、教師はおらん。居残りの時間になると、さっさと帰りやがる。


 114:名無しの転生者

 えぇ……


 115:名無しの転生者

 教育者としてそれはいかんでしょ


 ◇116:名無しの引きこもり

 絶対私恨でやってるであいつ。一度や二度ヅラ引っ剥がしたくらいで嫌がらせするなんて狭量

 すぎやろ。


 117:名無しの転生者

 回数増えてるやんけ!


 118:名無しの転生者

 つーか居残り誰も見てないんやろ? そんならイッチも帰れよ


 ◇119:名無しの引きこもり

 >>118

 なんか負けたみたいだからヤダ


 120:名無しの転生者

 どこで張り合ってんねんw


 121:名無しの転生者

 まぁ気持ちはわかる


 122:名無しの転生者

 でも意地張った結果が今動けん状態やん


 ◇123:名無しの引きこもり

 >>122

 ぶっちゃけ今ちょっと後悔してきてるわ


 124:名無しの転生者

 飯とか風呂とかどうすんのその状態で


 ◇125:名無しの引きこもり

 >>124

 うわ、飯のこと完全に忘れてた! もう夕食の時間なのに全然動けん! 今日のカ

 レー楽しみにしてたのにー!!

 誰か助けて!!


 126:名無しの転生者

 寝かせると美味しくなるっていうし明日食べようや


 ◇127:名無しの引きこもり

 >>126

 今まさにワイが地面で寝かされてるんやが……



 初等実技の授業が行われる訓練場は、石造りの円形広場だった。高い壁に囲まれ、開けた空の下に広々とした空間が確保されている。空は曇り気味で、肌寒くも暑くもない。火の魔法を撃つには、やけに都合のいい気温だった。


 ハーゲン教授が姿を現した瞬間、場の空気がすっと引き締まる。ざわついていた訓練場が、嘘のように静まり返った。よく通る、硬質な声が訓練場に響き渡る。


「本日の課題は、【火球】の基礎制御だ。標準三連射を十セット、合計三十発。制限時間内に終えられなかった者は──居残り」


 一部の生徒が小さく息を呑むのが分かった。その沈黙を縫うように、隣からぼそりと声が漏れる。


「……またかよ」


 エイン君だ。聞こえるか聞こえないか、ぎりぎりの音量。それでも、教授の耳には十分だったらし

い。


「エイン」


 名を呼ぶだけで、声の調子が変わる。


「貴様ほどの者が、これしきで不満とはな。首席とは名ばかりか? 本当に魔法師になる気があるの

か」


 露骨な挑発。周囲の視線が、一斉にエイン君へ集まった。当の本人は肩をすくめ、気のない返事を

返す。


「なりたくて首席になったわけじゃないんスけど……。まあ、とにかく三十発やりゃいいんでしょ」


 やる気があるのかないのか分からない態度のまま、彼は訓練の開始位置へ歩いていく。このやりとりも、もはや見慣れた光景だった。僕は一歩だけ距離を取り、成り行きを見守ることにした。


 実技が始まると、エイン君は黙々と火球を放ち始めた。最初の数発は安定していたが、回数を重ねるにつれて明らかに動きが鈍くなる。魔力の消耗が早いのだろう。額には汗が浮かび、息も段々と荒れていった。それでも、決められた数をこなそうとする姿勢だけは崩さない。


 そんな中、ふと違和感を覚える瞬間があった。隣の生徒が詠唱を始めた、そのタイミングにぴたりと合わせて、エイン君が魔力を流し込んだのだ。次の瞬間、放たれた火球は──明らかに、隣の生徒が意図したものではなかった。


「はい、これで七発目!」


 得意げな声が上がる。あまりに当然の顔をしているものだから、一瞬、何が起きたのか分からなかった。だが、周囲が事態を理解するのに、そう時間はかからない。


「……え? 今の、他人の魔法じゃなかったか?」

「制御、奪った……?」


 ざわめきが波のように広がる。高度すぎる行為に、驚きと興奮が入り混じった空気が訓練場を満たした。──その空気を、叩き潰すように。


「そういう手を使うな、エイン」


 ハーゲン教授の声が落ちた。感情を抑えた低い声音。それだけで、場の熱が一気に冷める。


「授業の目的を履き違えるな。他人の魔法を横取りする訓練ではない」


 エイン君は、不満げに口を尖らせる。


「だって、こっちのほうが魔力使わないし……」


 小さく呟くと、何事もなかったかのように自分の詠唱へ戻っていった。


 その後、彼はいつものように魔力回復薬を口にする……かと思いきや、途中で手を止め、別の瓶を取り出した。中身を手早く混ぜ始めるその様子に、周囲がざわつく。訓練中に何をしているのかと当然のように咎められ、ハーゲン教授と短いやり取りになるが、結局は黙認された。彼は平然と、どこか満足そうに魔力回復カクテルを飲み干し、再び火球を撃ち続ける。


 だが結果は無情で、授業終了の鐘が鳴っても、彼のカウントは足りなかった。


「居残り確定だな」


 ハーゲン教授の声とともに、生徒たちは次々と訓練場を後にしていく。僕もその流れに乗って立ち去ろうとしたが、ふと足を止めて振り返った。そこには、エイン君と教授の二人だけが残っている。


(……まあ、彼ならなんとかするだろ)


 そう自分に言い聞かせるようにして、僕は寮へ戻った。彼もそのうち帰ってくる……はずだった。


 夕食の時間になっても、エイン君は戻ってこなかった。


(あれ?)


 なんとなく胸騒ぎがして、僕は再び訓練場へ足を運んだ。途中、職員室の前を通り、窓越しにハーゲン教授の姿が見えた。机に向かい、書類仕事をしているようだった。


(もう、職員室にもどってる……? じゃあエイン君は……)


 訓練場に足を踏み入れた瞬間、掠れた声が聞こえた。


「たすけて……魔力、ない……」


 視線を巡らせると、エイン君が地面に倒れ込んでいる。


「エイン君、大丈夫!?」


 駆け寄ると、彼はうっすら目を開け、僕を見た。


「……フレッド……幻覚か……? もしかして……薬キメすぎたか?」


「バカ言ってないで、立てる?」


「……無理。魔力ゼロ。マジで無理……」


 仕方なく、僕は彼の腕を肩に引っかけ、ほとんど引きずるような形で寮へ向かった。


「ちょっと……寄りかかりすぎ……! 少しは自分で歩いてよ……」


「疲れてるから……ヤダ……」


「そこは歩けないから、じゃないのね……」


 ふらつきながらもどうにか寮に辿り着き、ベッドに彼を寝かせる。


「フレッド……マジで感謝してる……困ったことがあったら言ってくれ。絶対助けるから……」


 困ったことの九割は君が原因なんだけどな……。


「まぁ……期待しないで待ってるよ……」


 そう言って、僕は小さく息をつき、思わず口元を緩めた。……ところがその夜。


「フレッド、さっきのお礼に俺のお気に入りの魔法、教えてやる……」


 部屋の扉を開けると、エイン君が立っていた。まだ魔力切れの影響が残っているのか、足取りはど

こかおぼつかない。


「い、今から!?」


「【隠形看破】って魔法だ。ちょっと難しいけど、お前ならできるはず……」


「僕、もうそろそろ寝たいんだけど……」


「マジでおすすめだから……! 俺なんか毎日使ってるし……!」


 結局、そのまま夜が明けるまで付き合わされ、魔法を習得する羽目になった。


 翌朝、僕たちは仲良く寝坊。教室に駆け込んだ僕たちを待っていたのは、地獄のようなハーゲン教授の叱責だった。

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