大晦日が終わらない
あけまして・・この続き何だっけ?
2025年を越す前に倒れるかもしれない。
そう思ったのは、十二月三十一日の二十三時四十分。
終電を逃し、会社の仮眠室で横になったまま、俺は天井を見ていた。
年末進行。人手不足。終わらない修正。
「年明けたら少し楽になる」
その言葉を信じて走り切った一年だった。
気づくと、テレビの音が聞こえた。
『まもなく、年越しです!』
目を開けると、自宅の居間だった。
炬燵、年越しそば、紅白。
時計は二十三時五十八分。
――ああ、夢か。
そう思った瞬間、視界が暗転した。
次に目を開けたときも、同じだった。
同じ炬燵、同じそば、同じ司会者。
時計は、やはり二十三時五十八分。
三度目で、異変に気づいた。
時計が、進まない。
二十三時五十八分のまま、秒針だけが空回りしている。
テレビでは「今年も残りわずかです!」と叫んでいるのに、年は越えない。
寝ても、目を覚ましても、大晦日。
何度目かのループで、俺は思い出した。
――これ、知っている。
昔、誰かに聞いた。
年を越せなくなった人間の話。
断ち切るには、**言葉**が必要だったはずだ。
呪文。
年の境を越えるための、たった一言。
でも、思い出せない。
「……あけまして……?」
そこまで言うと、喉が詰まる。
言ってはいけない気がした。
テレビの中の司会者が、こちらを見て笑った。
『まだですよ』
年越しそばは冷め、食べても減らない。
除夜の鐘は百八つ目まで行かない。
会社からの通知だけが、スマホに増え続ける。
〈至急対応願います〉
〈年明け前で構いません〉
――年明けは、来ないのに。
何度目かの大晦日で、俺は理解した。
呪文を忘れたんじゃない。
**言わなくなった**のだ。
誰にも。
自分にも。
時計は今日も、二十三時五十八分。
今年も、終わらない。
ご覧いただきありがとうございますm(_ _)m
また次のホラーでお会いしましょう。




