雨
しばらく雨が止んだり降ったりする日が続いていた。
ユイは、何をするか毎日考えてすごしていた。できれば掃除をしたかったので、掃除をメイドと競争してやってみたり、でこぼこしている本棚の本を動かして、きれいに並べようとしたり。けれど、メイドは本当に仕事が早くて、本はとても重いものがあったりして、途中でやめてしまった。
雨が降っているから、庭に行くこともできない。
静かに机に向かっている魔導師は、いつものように本を読んでいる。
ユイはソファでちいさくつぶやいた。
「魔導師様、ご本、まだ読むの?」
魔導師は顔を上げてユイに目を向けてくれた。ユイの声が聞こえたのか、席を立って、一冊の本を探し出すとユイの隣に座った。
魔導師がそばに来てくれて、それだけでユイはうれしくなったが、見せるようにしているものを見て首を傾げた。
「ご本?」
字の大きな本だった。きれいな絵も描かれている。こんな本もあったんだ。ユイが表紙を覗き込んでいると、魔導師は本のページを開いて、文字を追って読み始めた。
音読だ。
ユイはびっくりして聞いていたが、そのうち本の内容が面白くて聞き入り始めた。
小一時間ほど経って魔導師は本を読むのをやめた。立ち上がって書棚を探すようにしたが、見つからないようだ。
「ご本、面白いね」
ユイは嬉しくて自然と笑顔になっていた。
魔導師が、テーブルで何か即席で書くと、別の紙束と一緒にユイの手に渡してくれた。
「文字だ。練習すると本が読める」
文字が書かれている紙だ。
「これを練習するの?」
「そうだ。今から音を教えるから、よく覚えて書けるようにしなさい」
魔導師がゆっくりと母音を口にする。文字を指す。
ユイは同じように音を出して、文字を指さした。一通り終わると、魔導師は仕事は終えたとでも言うように、自分の机に戻って行った。
ユイはノートに文字を写し始めた。一生懸命書いて、時が経つのを忘れた。
それからユイは本を少しずつ読めるようになってきた。分からない言葉があると、何度か書いて意味を調べて読む。
魔導師様は、ユイが本を読むようになってちょっと嬉しそうだ。




