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おつかいは大変すぎた

 雪が凍りついて歩きにくい道に注意しながら、ユイは途方に暮れながら荷物を運んでいた。

 

 温かいけれど、つぎはぎが目立つ粗末な綿入れは隙間風が冷たい。

 一番あったかい綿入れなんだけどな。今日は風が強いから。

 

 奉公先は優しくはないけれど、あたたかい寝床もあったし、三度の食事にも困らない。それは本当に幸せなことなのだと、周囲の大人たちには言われて育ってきた。

 それを疑ったりはしなかった。けれど、雪道のおつかいを頼まれたときは困った。

 

 馬小屋のおじさんが、こんな小さい子には無理じゃないかと侍女頭に言ってたけど、忙しくて手が足りないからと言い返していた。

 

 できないとは言えなかった。一本道だから大丈夫だと侍女頭は言っていた。

 侍女頭が大丈夫と言うのだから、きっと大丈夫だ!と思っていた。


 一度行ったことがある場所で、その時は夏だったが一本道だったのだ。けれど、冬の道の景色はまるで違っていた。こんなに遠かったかな、記憶を探っても夏のまぶしい日差ししか思い出せない。


「うわっ」


 つるりと滑りそうになりバランスをとる。ユイは荷物を持ち直して、手をさすった。


 ここはどの辺なんだろう。どこで道を間違えたんだろう。

 周りを見回してきょろきょろしながら、果てまで白い雪道に、真剣にお使い先の村がないかと歩く。


 白い息が視界に入った。自分の息だ。気温が下がってきたみたいだ。

 さきほど舞っていた雪が、黒い髪についていた。肩まで伸びた髪を払って雪を落とす。この国では珍しい黒い瞳だと言われるが、自分では見えないから分からない。そのせいで意地悪を言われても困るだけだ。


「あっ」

 足が滑ったと思ったら尻餅をついていた。その拍子に抱えていた荷物が飛んで、雪の小山になっている道の向こうに消えていった。痛さよりもそちらに心がいき、すぐに起き上がって走っていく。


 おつかいの荷物がどこかに行っちゃったよ!

 道の向こうは下へ傾斜になっていて、荷物は谷の底に落ちたらしい。跡形もない。


 どうしよう、どうしよう。


 探しても見つからない。けれど、ユイはめげないのだ。荷物はなくなってしまった。そのまま侍女頭に伝えるしかない。怒られるだろうけれど、仕方ない。

 

 すぐにそう考えると、帰り道を取ることにした。

 どっちから来たっけ? 足跡があればと探してみたけど、凍っているので足跡がない。荷物を持っていた手が冷たくて何度も両手を合わせるが、ちっとも温まらない。

 とにかく歩かなきゃ。

 ユイはただ歩き続けた。

 

 徐々に空が暗くなっていく。ふと気づくと「道」がないのに気付いた。元の道を歩いていたつもりだけれど、違っていた。回れ右をして再び歩き出す。

 泣くのをこらえて、それでも一生懸命に歩く。

 雪道は足元で氷がはじける音がする。その音に混じって木から雪が落ちる音が轟く。

 

 夕暮れから夜にかけての日の光のなくなるスピードは速い。すぐに暗さがやってくる。

 ユイは走り出した。もしかしたら森に棲んでいる生き物が、ユイを食べに来るかもしれない。

 

 森ばかりで何も分からない。走る力もなくなり、うろうろと歩く。

 その時、鋭い金属音が森に響き渡った。えっと思った瞬間に足を取られて転んだ。ひゅっと息をのむ。

 するどい痛みが足首に走った。

 動物を取る罠だ。

「い、痛い」

 やみくもに罠を外そうとするが、金属のそれはまったく動かない。幸い刃と刃の間に足が挟まり、大怪我はしてないが、刃の触れている箇所から血がにじみ出てくる。


 ユイは心底不安になった。

 荷物はなくしてしまうし、帰る道も行く道もわからない。頼れる人は誰もいないし、きわめつけが罠にかかった。


 さらに夜が押し寄せてきている。

 感覚を失いつつある足先や手が寒さを強調している。まだ厳しい寒さの季節だ。

 涙が滲み出てきた。泣いても仕方ないし、誰も助けに来てくれないことはよく分かっている。がんばりたくても、できない。

 ユイには親がいない。ユイは生またときから一人だった。屋敷に捨て子として置かれていたらしい。


雪の話と、魔導師の話を改稿しました。タイトルも変更。

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