第2話:凍結魔法で心を開く
授業開始のベルが鳴った。司は手を軽く挙げ、生徒の心理を観察する。
心を閉ざした女子生徒の視線を捕らえ、目に見えない「凍結魔法」をそっと注ぐ。少しずつ、表情が柔らかくなる。
「……なるほど。魔法は物理的でなくても、心に働きかけるだけで十分効果がある」
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授業のテーマは「命の大切さ」。異世界での戦場経験を交えつつ、命を守る勇気や思いやりを説く。生徒たちは初めて真剣に耳を傾け、少しずつノートにペンを走らせる。
スマホを弄る生徒もいたが、司は軽く心理的圧で集中を促す。魔法で強制するわけではない。異世界で学んだ「生徒に主体性を持たせつつ導く方法」だ。
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授業後、廊下を歩く司の耳に、生徒たちのささやきが聞こえる。
「司先生、ちょっと変わってるけど面白いな」
「なんか、説得力ある気がする」
微かな笑みが司の口元に浮かんだ。初日としては上々の反応だ。
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放課後、校長室で二人だけの会話。
「初日はどうでしたか?」
「生徒たちはまだ氷の壁の中ですが、一部は溶け始めました」
「現代社会でどれほど通用するか、楽しみにしています」
桜の花びらが窓の外で舞う。司は異世界残滓がまだ自分を追っていることを心の片隅で感じつつも、この世界で生徒たちの心を守る決意を固める。
「……なるほど、この世界でも、私の役目は変わらないようだな」




