創作詩15: 子供の手
本投稿では、創作詩 ”子供の手” を発表します。
今回は息子の手にまつわる思い出を詩に紡ぎました。息子の「大きな手」を見ると家族団欒の楽しかった思い出もたくさん蘇ってきますが、ときどき切なく虚しく悲しくなることがあります。私がどうかしているのかもしれません。
わが子の手は大きく、指が長い、身長の割に驚くほど!
・生まれたときからそうだった。
・看護師達は異口同音にそう言った。
・あらためて子の手を観ると私もそう思った。
・子を自宅に持ち帰ると猫は子の指先からクンクンした。
・子は白魚のような美しい手の持ち主として地上に現れたのだ。
・保育園での子の力は尋常ではなかった。
・子は鉄棒やジャングルジムが異様に得意だった。
・子は納得するまで遊具から手を離そうとしなかった。
・先生から「この子の握力はお猿さん並み!」と言われた。
・天狗になった子はよじ登った高木から落ちて救急車で運ばれた。
・小学生になると子はピアノを習い始めた。
・先生からも「指がとても長いね」と言われた。
・子の指はしなやかにして瞬く間にメキメキ上達した。
・子はどういうわけか音を耳コピすることができなかった。
・子は楽譜を見ないと指で鍵盤を操作することができなかった。
・7歳の子の手は器用であった。
・初めての習字作品がいきなり入選した。
・子の文字は印刷のごとく正確なゴジック体だった。
・子は5センチ四方の方眼紙に細密画を描くことができた。
・子の才能は7歳をピークに雪崩のごとく急速に衰えていった。
・ジェイコブズが書いた、猿の手1
・ジャコメッティが鋳造した、銅の手2
・スーチンが描いた、イディオットの手3
・ディランが歌う、銃と剣を持った幼子の手4
・ゴルトベルク変奏曲を奏でる、グールドの手5
わが子の手に偉人たちと同じ悲しみを覚えるのはなぜだろうか?
終わり
脚注1: 作家のW ・W・ジェイコブズ(William Wymark Jacobs)の小説「猿の手」に登場する手
脚注2: 彫刻家のアルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)が作成したブロンズ像の「手」で表現された細長い指
脚注3: 画家のシャイム・スーティン(Chaïm Soutine)の油絵 ”イディオット” に描かれた少年の大きな手
脚注4: 歌手のボブ・ディラン(Bob Dylan)が作詞作曲した「はげしい雨が降る」の一節。2016年のノーベル文学賞の授賞式で、欠席したディランに代わりパティ・スミスがこの作品を熱唱した。
脚注5: ピアニストのグレン・グールド(Glenn Herbert Gould)の大きな手
【編集後記】
●うちわに書いた落書き
息子はお絵かき帳、ザラ半紙、方眼紙、チラシの裏、うちわ、ティッシュの箱、本、壁、柱など、ここかしこといろいろな落書きをしました。
●5×3センチ四方ほどの方眼紙の切れ端に描いた怪獣
彼は方眼紙を5x3cmのサイズに切り取って、怪獣のイラストをよく描いていました。消しゴムを使うことはなく、鉛筆の一発描きです。