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4・魔獣の襲撃を撃退!

 あの後ケンタは散々に絞られたらしい。僕らの中で最年長なのだから仕方がない。


 それから三日ほどはアマノオハバリに乗ることを許されなかったが、鋼の騎士は自ら選んだ者しか操れないというのは演劇でも定番で、搭乗者登録された事を思えば、それは事実だった。

 村でも僕らを遠ざけている間にあれこれ試したらしいけれどハッチは開かず、しっかりケンタに言い含める事で僕らが動かす事を許してもらった。


「俺達が全員成人するまで村から出るなってさ。冒険はしばらくお預けだとよ」


 ケンタがそう不貞腐れていたが、仕方がないと思う。

 ケンタが14、トモヤが13、僕とユウキなんてまだ12だもんな。 僕とユウキが成人するのはまだ三年先になる。それまでは村の見回りくらいしかやる事が無いという訳だが、普通に考えて当然かもしれない。

 奪われる事は無いとは言え、子供ばかりで外を旅するなんて危険過ぎる。


 久々に乗り込んだアマノオハバリは魔力を消費していたらしく、そこそこ持っていかれた。


「なんか変な気分だな。これ」


 ケンタのそんな呟きを聞きながら周囲を見回す。

 はじめは驚いたが、ヘッドギアの画面は騎体各所に設置されたカメラによって合成され、360度の視界が得られ、まるでそこに僕らだけが浮かんでいるかのようだった。

 

「そう言えばさ、あの遺跡って何か見つかったのかな?」


 トモヤがハンガーの探索が行われた話を聞いたらしく、僕らに聞いてくる。


「ライトやコンロがあったらしいぜ。多分コイツに関わるモノがたくさんあるんだろうけど、村の生活にゃ関係ないしな」


 と、ケンタが言ってくる。


「川岸の遺跡と違ってコレがあったから下手に触れないって言ってたよ」


 と、ユウキが付け加える。


 確かにそうだ。アマノオハバリに必要な部品や武器があった場合、下手に持ち出して困るのは村だったりする。

 僕らはアマノオハバリがまだ試験中で外装武器の類いがハンガーにないと知っているが、村の人たちはその事を知らないもんな。もちろん、どれが必要で、どれなら持ち出して良いかなんて、僕らにもよくわからない。

 何で領主や王様が遺跡を欲しがらないのかは謎だが、生活用品程度には興味がないだけかもしれない。


 そんな話をしながら地形把握のために村の周りを歩かせ、時折トレーニングモードを起動して射撃や指揮の訓練をしたりしている。単に歩かせるより楽しいしね。


『警告、電波を受信しました』


 急にそんな音声が流れ、僕らは周囲を見回す。


 辺りを見回しても特に何も見えなかったが、


「いた!」


 トモヤが叫び、画面にマーカーが点滅しだした。


「よく見つけたな」


 ケンタが驚きながらマーカーを拡大している。


『目標はモスロバ製偵察飛行騎「クーシ」です』


 と、アマノオハバリが教えてくれたソレを見上げると、どう見ても飛行機だった。

 細長い直線翼を持つスタイルは偵察機そのもの。きっと遠くから飛んで来たのだろう。


「モスロバって、何だ?」


 そんなケンタの問への返答は、チャン・ハンの隣にあった国との事で、この地とチャン・ハンの間にあり、真っ先にチャン・ハンの影響を受けたらしい。


 パッとサブウィンドウに当時の世界地図を映し、だいたいの位置を見る。

 両国はこの国にとっては海の対岸。ただし、ここは大陸から突き出た半島だから、陸伝いにやって来る事は可能だと思う。


『当該騎より再度の通信。誰何を受けています』


 そう言われても言葉が分からない。


「何て言ってるんだ?」


『所属の照会です。自動返信がないため敵性と判断されました。破壊を奨励します』


 ケンタが悠長に尋ねた側からこれである。


「射撃態勢に入る。装填よろしく」


 僕はケンタの言葉を待たずに射撃態勢に入り、砲を目標へ指向した。


「やべぇな、落とせよ、タツキ」


 ケンタの声を聞いて照準し、引き金を引く。三発発射し、目標が緩慢に回避行動を取る間に右翼をもぎ取り、機首も破壊する事が出来た。


「よし!」


 ホッと一息ついているとさらに警告を受ける。


『目標が座標送信を行いました。後続の襲撃を警戒してください』


 それからずっと空を見上げ続けたが、日が沈んでも何も現れる事はなく僕らは村へと戻ることにした。 


「来なかったね、追加の魔獣」


「実は滅んでるのかな?」


「届いてないんじゃね?」


 結局、二日待っても現れなかったので弛緩気味である。かくいう僕だってせっかく対空射撃が出来ると意気揚々としていたのでガッカリしている。


 その夜更けの事だった。いきなり頭の中に大音響が鳴り響いて叩き起こされた。アマノオハバリから念波が来たらしい。

 念波は細かな事は送れないらしく、こうした音が聴こえるだけだが、これは警報音。


「おい、タツキ!起きてるか?」


 家が近いケンタがすぐにやって来て、ふたりで「何が起きたんだろう」と言ってると、鐘が打ち鳴らされる。


「魔獣だ!間違いない。行くぞ」


 そんなケンタに促されるように駆け出し、アマノオハバリにたどり着くとすでにユウキがやってきており、ほどなくトモヤも現れた。


「村のすぐそこに居るって!」


 先に乗り込んだユウキが僕らを急かす。


 乗り込んだ僕らにもアマノオハバリから情報が渡される。


「六体とか多くない?マジあの鳥が呼んだのか!」


 トモヤが叫ぶ。


「行くぞ。考えるのは後だ」


 そんなケンタの声で僕らはアマノオハバリを村の外へと向かわせる。


『パッシブセンサーで発見した目標を表示します』


 という声と共に投影された敵は一塊だった。


「今のうちに倒せ!」


 というケンタの声を待つことなくトモヤが装填をはじめており、20発の弾がラックに生成されている。


「射撃を始める」


 僕もケンタの一声と共に狙いを定めていた魔獣の一団へと射撃を開始し、的確に一体づつ倒す。


「前方に新たな敵!え?鋼の騎士?!」


 敵を見つけたケンタが驚いた声をあげる。マーキングされた地点へ振り向けば、確かに騎士。人型ロボット(パワードスーツ)が見えた。


「なんか撃ったぞ。左へ回避だ」


 ケンタの声にユウキが応えるが間に合わず、一瞬目の前がホワイトアウトした。


『装甲が損傷しました。自己再生を開始します』


 そんな声のあと、すぐに回復した映像にはやはり人型ロボ。


 僕は一瞬躊躇った。生死はわからないが中に人が居るって話だったから。


「早く撃て!」


 そんなケンタの声で迷いを振り切り引き金を引く。

 避けた様に見えたが、弾のほうが一瞬速く騎士の胴体を抉り、動きを停めた。


 騎士の状態を確認する暇なくさらに4足型魔獣が三体現れ、それらを撃破した頃には辺りは明るくなって来た。


『敵性反応の消失を確認しました』


 というアマノオハバリの声で体から力が抜けた。


 撃破した鋼の騎士の中には、幸いな事に人間ではなく猿の死体が入っていたが、半分吹き飛んだ胴体を見るのは気分の良い物ではない。


 この騒動の活躍で、僕らはものすごく褒められたのだけど、


「冒険譚ってさ、僕らみたいに『鋼の騎士』を見つけて魔獣に目を付けられた話だったりしないかな?」


 そんなユウキの疑問を否定出来ない僕らは、村のみんなに秘密を抱える事になった。


 村を出て冒険するどころか、村が魔獣につけ狙われている。そんな話を誰に出来るのだろうか? 


 

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